第14話 替え芯で丸くなる角
(牡牛座君♂x牡牛座ちゃん♀)
土曜の昼下がり、学校の廊下で、雨粒の名残がアスファルトに光っていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
『恋人』という言葉がまだむずがゆい頃、一真は同じ場所を丁寧に拭き直す。結菜はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日は掃除当番。手元には替え芯があり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
作業の途中、一真のスマホが鳴った。画面の通知を見た結菜は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
一真は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこで替え芯を持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
結菜は深呼吸して、同じ場所を丁寧に拭き直す。二人で手を動かし、替え芯が役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に一真が「送れてなかった」と画面を見せると、結菜は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
片づけの最中、替え芯が机から転がりそうになり、一真が反射で押さえた。その手の速さに結菜が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。一真は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道の途中、一真は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。結菜は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。一真は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
帰り道、一真は「次は結菜のやりたいことを先に聞く」と言った。結菜は少し考えてから、替え芯を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の胸の奥が、ふっと軽くなった。
【終】
(牡牛座君♂x牡牛座ちゃん♀)
土曜の昼下がり、学校の廊下で、雨粒の名残がアスファルトに光っていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
『恋人』という言葉がまだむずがゆい頃、一真は同じ場所を丁寧に拭き直す。結菜はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日は掃除当番。手元には替え芯があり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
作業の途中、一真のスマホが鳴った。画面の通知を見た結菜は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
一真は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこで替え芯を持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
結菜は深呼吸して、同じ場所を丁寧に拭き直す。二人で手を動かし、替え芯が役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に一真が「送れてなかった」と画面を見せると、結菜は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
片づけの最中、替え芯が机から転がりそうになり、一真が反射で押さえた。その手の速さに結菜が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。一真は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道の途中、一真は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。結菜は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。一真は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
帰り道、一真は「次は結菜のやりたいことを先に聞く」と言った。結菜は少し考えてから、替え芯を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の胸の奥が、ふっと軽くなった。
【終】


