星座が示す、144通りの恋

第12話 スマホで近づく距離
(牡羊座君♂x魚座ちゃん♀)

 新学期の一週間目、通学路の角で、空気が少しひんやりしていた。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
 告白の返事を伝えた次の週、夢乃は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。颯真は立ち止まり、鞄の中を探る。
 助けになるのがスマホ。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
 家電の使い方を覚えるを始める前に、夢乃が立ち止まった。「ねえ、約束して」。颯真が見返すと、夢乃はスマホを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
 「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、夢乃は目をそらす。颯真は一度だけ深くうなずき、「先に動いたほうが早い」と言ってスマホを受け取った。
 そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。夢乃は目を細め、「夢みたい」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
 最後の確認をしていると、夢乃が「ありがとう」とはっきり言った。颯真は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で夢乃の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
 夢乃が靴ひもを結び直している間、颯真は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、夢乃は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
 帰り道、颯真は「次は夢乃のやりたいことを先に聞く」と言った。夢乃は少し考えてから、スマホを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の言いかけた言葉が、ちゃんと形になった。 夢乃は笑ってうなずき、颯真の袖を軽く引いた。
【終】