付き合い始めても、世界が急に変わるわけじゃなかった。朝はいつも通り学校へ行って、授業を受けて。違うのは、廊下ですれ違うとき。
「平川先輩」
「黒瀬くん」
目が合うだけで、胸があたたかくなる。
誰にも言っていない。クラスの人も、先生も知らない。僕と黒瀬くんだけの秘密。
放課後、人気のない階段の踊り場で並んで座る。肩が、自然にくっつく距離。
「無理、してませんか」
黒瀬くんは僕が疲れていると直ぐに気付く。優しい瞳で見つめられるとどうしても素直に甘えたくなってしまう。
「……少しだけ」
「俺の前では無理しないで下さい」
そう言われて、体がそっと包まれる。
それが、恋人になった僕たちの日常だった。
手をつなぐのは、誰もいないところだけ。ハグも、短く。でも、その一瞬が僕の心を強くしてくれる。
ある日、教室でまた軽い冗談を言われた。以前なら、笑って流していたと思う。
「……それ、やめてほしい」
声は震えたけど、言えた。驚いた顔を見て、心臓がうるさく鳴る。放課後、黒瀬くんが静かに言った。
「言えたんですね」
「……うん」
「ちゃんと自分で選べて、偉いですよ」
その言葉が凄く嬉しかった。過去は消えない。でも、それだけが、僕じゃない。
夕暮れの校門前。人影のない場所で、黒瀬くんがそっと僕を抱き寄せた。
「平川先輩」
「なに?」
「俺、先輩が好きです」
「……知ってる」
照れくさくて、そう返すと、小さく笑われた。秘密は、まだ続く。でも、ひとりで抱える秘密じゃない。選べなかった僕が、今は黒瀬くんを選んでいる。それが、何より大切だった。
『黒瀬くんと僕の秘密』End
「平川先輩」
「黒瀬くん」
目が合うだけで、胸があたたかくなる。
誰にも言っていない。クラスの人も、先生も知らない。僕と黒瀬くんだけの秘密。
放課後、人気のない階段の踊り場で並んで座る。肩が、自然にくっつく距離。
「無理、してませんか」
黒瀬くんは僕が疲れていると直ぐに気付く。優しい瞳で見つめられるとどうしても素直に甘えたくなってしまう。
「……少しだけ」
「俺の前では無理しないで下さい」
そう言われて、体がそっと包まれる。
それが、恋人になった僕たちの日常だった。
手をつなぐのは、誰もいないところだけ。ハグも、短く。でも、その一瞬が僕の心を強くしてくれる。
ある日、教室でまた軽い冗談を言われた。以前なら、笑って流していたと思う。
「……それ、やめてほしい」
声は震えたけど、言えた。驚いた顔を見て、心臓がうるさく鳴る。放課後、黒瀬くんが静かに言った。
「言えたんですね」
「……うん」
「ちゃんと自分で選べて、偉いですよ」
その言葉が凄く嬉しかった。過去は消えない。でも、それだけが、僕じゃない。
夕暮れの校門前。人影のない場所で、黒瀬くんがそっと僕を抱き寄せた。
「平川先輩」
「なに?」
「俺、先輩が好きです」
「……知ってる」
照れくさくて、そう返すと、小さく笑われた。秘密は、まだ続く。でも、ひとりで抱える秘密じゃない。選べなかった僕が、今は黒瀬くんを選んでいる。それが、何より大切だった。
『黒瀬くんと僕の秘密』End
