僕と幼馴染のままならない関係


 それは見た目が変わったのもあるんだろうけど、どう違うかは上手く言葉に出来ない。
 
 落ち着け……落ち着け…………あんなの、小学生の時は当たり前にやっていただろ?


 『亮~~顔の周り汚ねー!取ってやるよ』

 『結人だって!ほら!』


 お互いの顔についたクリームを手で取ってあげて、ペロペロ舐めていた時もあったし、僕が持ってる食べ物を結人がパクッと食べる事だって何度もあったはずだ。

 幼馴染と昔みたいにそうやって笑い合いたいと思っていたのは自分なのだから。

 昔を思い出し、少し冷静になってきた僕は、そろそろトイレから出ようとすると、駆流クンが入ってくる。


 「亮クン、いた~~なかなか戻らないから大丈夫かと思って」

 「心配かけてごめんね。ちょっと時間かかっちゃって」


 良かった、落ち着いてきたところで。

 さっきまでの様子を見られたら不審に思われていたかもしれない……でもなんだか駆流クンがジッとこちらを見つめてくるので何となく気まずい。


 「皆のところに戻るね」


 とにかくこの場をやり過ごさなきゃ、そう思って駆流クンの横を通り過ぎ、ドアに手をかけた瞬間。

 彼に腕を引かれてトイレの個室に連れて行かれてしまい、鍵をかけられてしまう。

 ドアの前に駆流クンが立つので、僕は戻ろうにも身動きが取れない。


 「駆流クン……?」

 「亮クンは、結人の事、どう思ってる?」


 質問の意図は分からなかったけれど、いつものような軽い雰囲気が鳴りを潜めた駆流クンに、緊張感が走る。

 そして俯く僕の顔を覗き込んできたので、まつ毛が長い綺麗な目と眼鏡越しに視線が合う。

 息がかかりそうな距離に顔がある。

 そして彼の目がとても真剣で目が離せなくて――――


 「……大切な幼馴染だよ」

 「本当?」

 「うん」


 自分でも結人の事はずっと”大切な幼馴染”だと、そう思ってきた……でもなぜか違和感が拭えず、そんな自分の気持ちを飲み込む。


 「……じゃあさ、今度亮クンの家で勉強教えてほしいな~~今日は人数多くてあまり頭に入ってこないんだ」

 「え……っと……」

 「中間考査近くてピンチなんだ。僕を助けると思ってっ」


 ようやく駆流クンが普段の雰囲気に戻った事にホッとする。

 僕もそれほど勉強ができているわけじゃなかったけれど、駆流クンには教えられるかもと思い、了承する事にした。


 「うん、分かったよ。一緒に勉強しよう」

 「やった~~じゃあRINE交換しよ!」


 RINEを交換した駆流クンはとても嬉しそうだ。
 
 結局ムクドの帰り道で、結人に駆流クンと勉強会の話をしたところ、「その勉強会、俺も行く」と言ってくれたので駆流クンと二人きりではなくなったのだった。

 その夜、帰宅後にさっそく駆流クンからRINEがきて、勉強会をする日は日曜日にしようという話になる。

 高校に入ってから目まぐるしく友達が増えていく事を嬉しく思いながら、勉強会がとても楽しみになっていった。