僕と幼馴染のままならない関係


 母さんがバッサリと言い、女性は悔し気に黙り込んでしまう。

 結人の様子をまたチラリと窺うと、なぜだかプルプルと震えていた……もしかして泣いてる?

 僕たちが言い過ぎたかもとドキドキしていると、突然結人が吹き出した。


 「ぶはっ!はははっ!おばさん、最高――」

 「もう!笑いごとではないのよ~~」

 「いや、もう、本当に最高すぎて……ははっ。……亮もありがとな」


 そう言って僕の頭を撫でる結人の顔は、思いの外スッキリしていて、僕はほんの少し安心する。

 でも絶対に悔しいに決まってるのに――――なんだか僕の方が泣きたくなってくる。


 「兄ちゃんも亮クンに触りすぎ!」

 「俺はいいんだよ」

 「ふふふっ」


 さっきまで怒りが渦巻いていたけれど、二人のやり取りに笑ってしまった。
 
 奏斗くんはいつも通りだな。裏も表もない。

 そこへ父さんが改めておじさんに声をかけ、挨拶をしたのだった。


 「では久楽さん、息子がまた結人くんと同じ高校なので、お世話になります。今日はその挨拶もさせていただきたくて来ただけですので」

 「え、ええ。こちらこそよろしくお願いします」
 

 ひとしきり用を済ませた僕たちは、そのまま久楽家をあとにする事にした。

 あんな家に結人を残していくのも嫌だったけれど……なんだかあの女性の存在が頭にこびり付いて離れない。

 人前で自分の事を堂々と貶してくる人と同じ屋根の下に暮らしてきた幼馴染の心を思うと、中学時代に一緒にいてあげられなかった事が本当に悔やまれる。


 「あんな女性と再婚していたなんて、知らなかったわ。今の状況を知ったら加奈がどんなに悲しむか……もっと気にかけてあげれば良かった……」

 「……結人くんの様子を見て、何かあるかなと思っていたけどね」

 「え、そうなの?」


 僕は両親が話しているのを聞き、驚きの声を上げてしまう。

 父さんも気付いていたんだ……。


 「もっと純粋な子だったろ。髪も金髪で家に帰りたくなさそうだったし」

 「あの女……これ以上あの子を傷つけるような事を言ったら許さないから…………」

 「母さん、落ち着いてっ」


 僕は怒りが静まらない母さんを宥めるように声をかけた。

 今まで以上に結人のそばにいたい。

 一番一緒にいるべき時にそばにいてあげられなかったのかも……そう思うと胸が苦しくて自分の選択を後悔しそうになる。

 結人が怒って当然だ。

 僕は何も分かっていなかったんだから――――

 そばにいられなかった中学時代……過去は変えられないけれど、これからはもう絶対に離れない。

 そう心に誓ったのだった。