僕と幼馴染のままならない関係


 「あなた結人くん?!」

 「……っす。お久しぶりです」

 「久しぶりじゃない~~ここで話すのもなんだし、入って入って!」


 変わらない声、変わらない態度、亮の家の匂い、全てが昔に戻ったかのように錯覚してしまう。

 幸せだったあの頃と同じように俺を受け入れ、家にはおじさんもいて、二人とも俺との再会をとても喜んでくれた。

 亮を部屋のベッドに寝かせたあと、今日のことを2人に説明しなくてはならない。
 

 「ちょっと路上でトラブルに巻き込まれてしまって……眼鏡が壊れてしまいました」

 「まぁ……でも二人とも無事で良かったわ」

 「亮をここまで送ってくれてありがとう」

 「いえ、俺は何も……」


 実際に俺が守ったわけじゃないからそう言ったのに、2人は感謝の気持ちを隠さない。

 居心地の悪い実家とは大違いだ。

 懐かしくて話が弾み、夕飯を一緒にと言われたので亮を呼びに行くと、疲れたのか寝息を立てて眠ってしまっていた。


 「寝たのか……頑張ったもんな」


 ベッドサイドに座り、心地よい眠りに落ちている幼馴染の顔を眺める。

 肌も綺麗だな……頬がもちもちしている。

 甘い吐息と吸い込まれそうなピンクの唇。

 このままキスしてぇ……!

 無防備すぎるだろ。

 彼の右頬を撫でると、駆流がそこにキスをした事を思い出す。

 ほとんど無意識に動いていたと思う。

 ゆっくりと顔を近付け、アイツがキスをした部分に上書きをするようにキスをした。

 柔らか……ずっとこのままでいたい。

 でもこの白い肌に痕がつくのは許せないから、名残り惜しみながら唇を離した。


 「好きだ」


 深い眠りの中にいる幼馴染の耳元で、囁くように伝える。

 ずっと、ずっと、自分の心の中にいるのは亮だけだった。

 中学時代はあまりに現実が苦しくて、求めても報われる事のない気持ちから目を逸らしたけど、もう逸らすことは出来ない。

 今日の亮を見て、心臓が止まるかと思った。

 あんな思いをするなら、自分が傷ついた方がいい。

 それほど大切で、どんなことからも守ってやりたいと思うのは、亮だけ――――


 「おやすみ、亮」


 眠る幼馴染にそっと挨拶し、部屋を後にした。

 おじさん、おばさんには亮が眠っている事を伝え、夕飯は丁寧に断り高嶺家を出る。

 夜空を見上げると大きな満月が光り輝き、自分の道筋を照らしているような気がした。

 俺も避けてばかりいられないな……亮のことや自分の家の問題、それらとこれから向き合う覚悟を決め、自宅へと戻っていった。