僕と幼馴染のままならない関係


 ふと後ろから肩を軽く叩かれ、振り返ったところに結人が立っていた。

 そして眼鏡を手渡してくれて、頭を撫でてくれる。


 「頑張ったな、1位おめでとう」

 「へへ……ありがとう」

 「でも眼鏡はしておいた方がいいぞ。何も見えないだろうから」

 「うん、そうなんだ。全然見えなくて……拾ってくれてありがとう」


 渡された眼鏡は壊れていなかったのでホッと胸をなでおろし、さっそくかけ直した。


 「やっぱり視界がいいな~~眼鏡最高!」
 

 コケて素顔も見られて、膝は痛いし最悪の状態のはずなのに、気持ちはとても晴れ渡っていた。
 
 そして最後の競技である全学年種目のクラス対抗リレーが行われ、一年生は6組が1位を取り、ゴール付近でクラスメイトと喜ぶ幼馴染を遠目から見守る。

 結人と真司のアンカー勝負、凄かったな……これで今年の体育祭も終わりか――――

 空を見上げてちょっぴり感慨にふけっているところに、


 「亮!!」


 笑顔でこちらに手を振る結人。

 彼の周りだけ時間が止まっているんじゃないかな。

 引き寄せられるように近付いていく。

 結人は突然僕の担任に「実行委員の仕事あるんで」とだけ告げて僕の腕を引きながら、校舎へと向かっていったのだった。

 
 「結人……結人……どこに行くの?」


 無言で校舎内を進む幼馴染に、恐る恐る声をかけてみたけど反応がない。

 これから閉会式なのに……でもそんな事よりも大好きな人と手を繋いでいて……心臓が口から飛び出してきそう。

 校舎内には誰もいないので静寂に包まれた中、ようやく結人が口を開いた。


 「お前、膝怪我してるだろ」

 「うん」

 「ったく。保健室行くぞ」

 「ありがとう」


 そういや計算競争リレーの時、膝を怪我していたんだった。

 リレーの応援で頭がいっぱいで、すっかり忘れてた……気付いて気にかけてくれてたのかな。

 嬉しい……保健室に着くと、中には養護教諭の先生がデスクに向かって座っている。


 「っす。失礼しゃす」

 「失礼します」

 「あら、もしかして怪我?」


 まだ20代で若い養護教諭の先生は、椅子をクルリと回転させ、こちらに向き直った。

 ひとまず丸椅子に座るように促されたので座り、先生が慣れた手つきで手当してくれる。


 「今日はお湯に浸からない方がいいわね。それほど深くないから瘡蓋が出来ればすぐに良くなっていくわよ」

 「ありがとうございます!」

 「私はそろそろ閉会式に行かないとだから。高嶺君は休んでていいわよ、担任にも伝えておく」

 「すみません。ありがとうございます」
 
 「俺、コイツに付き添います」

 「分かったわ」


 養護教諭の先生は頷き、颯爽と出て行ってしまった。


 「……戻らなくて大丈夫?」

 「なんも問題ねーよ。お前の方が大事だし」


 僕だって君が大事で大好きで……どうやったらこの気持ちが伝わるだろうか。

 色々考えたけれど、1つしか思い浮かばなかった。

 分厚い眼鏡を外し、椅子から立ち上がって彼の顔がぼやけない距離まで近づく。


 「亮?」

 「…………」