初恋の果実

大学時代に交際した彼。期間は一年間と短かったけれど、私にとっては人生初の所謂(いわゆる)「ガチ恋」だった。彼が死んでしまった夢を見た夜には声をあげて大泣きしてしまい、驚いた母親が部屋に飛び込んで来た、なんていうこともあった。

自分で言うのも何だけれど、私、比較的整った顔立ちをしているし、そこそこ美人なのではないかと思う。高校の時に女友達から「アイドルというよりセクシー女優って感じ」と言われたのを覚えている。中学や高校でも数人の男子からアプローチを受けていたし、好意を持った相手とデートもした。

二十歳の時、巡り逢った彼は、私にとって「特別」だった。何故だか理由は今も分からない。お気に入りの一枚の絵を見つけてしまった感覚。分析して、さらに文章化できたら人は恋愛などしなくなるのだろう。芸術と一緒だ。

これまでの恋愛モドキでは私が主導権を握ってきたのに、今では自ら望んで彼に手綱を渡している。こんなことは初めてだった。

課題やレポートそっちのけで彼の為にマフラーを編んだ。まさか自分がそんな自爆女子と呼んで馬鹿にしていた人間になってしまうなんて信じられなかった。気が付けば私がプレゼントしたマフラーを巻いている彼の姿をキャンパスに探している。教室の窓ガラスに映ったそんな自分の姿を見つけると、可愛くも思えた。