キャビンに戻れば加瀬とりんりんも起きていた。「先輩たち早起きですね」と言われて、清良に申し訳ない気持ちが増す。
「朝食までちょっと時間があります。縄跳びしませんか~~」
笑顔のりんりんが一人一人に縄跳びを渡してくれる。俺は密かにりんりんを金持ちの子認定しているのだが、その理由はこの縄跳びにもある。渡されたのはよくあるビニールじゃなくて、ワイヤーロープの競技用縄跳びなのだ。ちなみに加瀬と清良は大喜びで、昨日から二重跳び連続記録を更新し続けている。
(何であんなに跳べるんだ。それに、ちょっと運動するだけならビニール縄跳びでよくない?)
俺の疑問は誰にも届かず、縄跳びタイムが続く。
30分経ってちょうど朝食の開始時間になった。食事をとるのは昨日と同じバーべキュー場だ。縄跳びを終了して会場に着くと、昨夜の煙でもうもうとした様子はすっかり消えて、朝の澄んだ空気が清々しい。朝食はどこに座ってもよかったので見晴らしのいいパラソル席を選んだ。
朝食メニューは二種類。鮭と昆布のおにぎりに卵焼きとウインナー、サラダが付いたセットと、ハム・レタス・きゅうりを挟んだクロワッサン二個に、ゆで卵とミニサラダが付いたセットだ。
飲み物はオレンジジュースや牛乳、コーヒーなどが用意され、サーバーやポットから自由に取ることができる。
加瀬はおにぎり、りんりんと清良はクロワッサンのセットを選んだ。俺は迷ってなかなか決められない。普段なら絶対おにぎりだが、クロワッサンサンドも食べてみたい。
「月宮、先に行ってるぞ」
「飲み物取ってきますよ。何がいいですか?」
「牛乳頼む!」
加瀬とりんりんがトレイを手に席に戻り、清良が呆れながら俺の側に立つ。
「まだ悩んでるの? あおちゃん、いつも米派じゃん」
「そう。普段ならクロワッサンなんて食べないんだけど。すっごくうまそうで悩んでる」
「じゃあ、おにぎりにしなよ」
「え?」
「半分交換しよ。そうしたら両方食べられる」
清良はそう言って、テーブルに戻ってしまった。
(……清良。もう怒ってないのかな)
おにぎりセットを選んで戻ると、皆、飲み物を取って待ってくれていた。隣に座った清良がクロワッサンを一個、さっと俺の皿に入れる。
「あ、ありがと! おにぎり、どっちがいい?」
「……どっちでも」
俺は鮭おにぎりを清良の皿に入れた。清良も俺も、一番好きなおにぎりは鮭だ。
「お! 両方食べられていいな。じゃ、食べようぜ!」
せーの! と加瀬から掛け声がかかって、皆で声を合わせた。
「いっただきまーーーす!!!」
早速クロワッサンサンドを食べる。クロワッサンがサクサクパリパリして、噛み締めるとバターの風味がじゅわっと出てくる。具との相性もいい。ハムの旨味にさっぱりしたレタスやきゅうり、これがクロワッサンとよく合う。
夢中で食べていると、清良と目が合った。
「うまい?」
口いっぱいに頬張ったまま大きく頷く。清良の口元がふっと緩んだ。
「あおちゃん、ハムみたい」
「?」
思わず手に残ったクロワッサンの中身を見る。ハムはもう食べてしまった。クロワッサンと清良を交互に見ると、清良は肩を震わせて笑っている。よくわからないけど、もう怒ってはいないようだ。安心した俺は、皿の上の朝食を全て美味しく平らげた。

