僕のわがままな一年。


〝律〟という言葉に、ドキッと大きく心臓が跳ねて、動きを止めてしまった。
頭を抱え、首を垂れている律くんの肩を、その綺麗なお姉さんは抱えていた。
律くんはぱっと見ただけで分かるほど調子が悪そうで、一瞬で酒に酔っているのだと気づく。
その場で硬直している僕に、そのお姉さんは気づいたようで顔を上げた。
大きな猫みたいな目に、小さな口が印象的な高身長のお姉さん。髪の毛の色は黒髪のボブだ。

「あ、おはようございます……」

先に声を発したのは、お姉さんの方だ。疲れた表情をしている。
なんとなくだが、律くんをここまで連れてきたのが大変だったんじゃないかと察する。
僕は我に返って急いで律くんたちに近寄った。

「あの、律くん大丈夫ですか……?」
「いやー、あんまり大丈夫じゃなさそうかも。結構飲まされちゃってさぁ」

お姉さんの言う通り、律くんは酒臭くて言葉を発することができないほど潰れているようすだった。
だが、力を振り絞ってスラックスのお尻にあるポケットを指さす。

「はる、と。ここ、に鍵入ってる……から……」

「え? い、今出すね」

突然名前を呼ばれて、さらに鼓動が速くなってしまうが、気にしないようにして彼に言われた通り鍵を出した。
そのまま玄関のカギを開けて、扉を開く。

「ど、どうぞ」

「はぁ……お兄さん助かりました。後は私がやっておくので、気にしないでください。ご迷惑をおかけしました」

律くんの肩を抱く綺麗なお姉さんは、律儀に僕に会釈して彼の部屋に入っていく。
僕もふたりが部屋の中に向かっているのを見届けて、静かに扉を閉めた。

(これで、よかったのかな)