蒼は顔もかっこいいし、背も高いし、頭もいいし、お金も持っている。さらに可愛い女の子と結婚まで。
両親から僕と蒼を比べるような発言を一度だってされたことはないが、誰がどう見ても蒼の方が秀でている。
言葉には出したことがないが、僕はかなりブラザーコンプレックスを抱えているような気がする。
「はぁ……結婚式のお祝儀たっか……」
ネットで調べたら大学生でも兄弟のお祝儀となると三万円を包むのが常識なのだと知り、胸がぎゅっと締め付けられた。
大学に入学して一か月が経とうとしているが、両親の仕送りで生きながらえている身。
恥ずかしいが、それに加え家賃も光熱費もすべて出してもらっている状態。高校生の時半年間だけラーメン屋でバイトをしたときに貯めた二十万円があったが、友人との付き合いや必要な書籍の購入で着々と減っていっている。お祝儀の三万の出費は、今の僕にとって大きな痛手だった。
「働かなくちゃな……」
今じゃアプリで簡単に派遣バイトができる世の中だ。本気で思えば、今日にでも働きに出られる。
今まで授業に追いつくので精いっぱいだと言い訳をしていたが、いつまでも親に甘えていいわけない。
これからの生活もだし、実兄のお祝儀は自分で絶対に払いたい。
空いた時間はバイト探しに当てようと思いながら身支度を整える。
一気には難しい。少しずつ、自立していこう。ちゃんと大学に通いながら、自分で働いてお金を得る。
そしていつかは、律くんとか蒼の隣にいても恥ずかしくないような男になりたい。
――僕、いつもこんな風に思っているな。
身支度を済ませ、いつものスクールバックをしょい、ふっと表情を緩めた。
人気者の蒼の隣には、いつも律くんがいた。だから律くんも、僕と正反対の、なんでも手に入れている人だ。
でも彼は取り柄のない僕にも優しい。だから、余計に遠い。
玄関の取っ手を下げると、ガチャッと音を立てて扉が開く。
夏の気配を感じる陽光が僕を照らし、思わず目を細めた。少しずつ視界が鮮明になって、見えたのは背の高い、細身の綺麗なお姉さん。
「おーい、律。鍵どこにあるのよ」

