商店街の裏にある雑木林から、蝉の絶叫に似た鳴き声が聞こえてきた。
あの日から、はや数か月。気づいたら八月に差し掛かっていて、大学の夏休みが始まっていた。
僕はあの日から律くんと予定を合わせて、度々食卓を囲んでいる。
いや、度々なんてもんじゃない。しょっちゅうだ。
夏休みなのだから、その頻度はさらに高くなって、律くんがバイトが休みの月水金と、僕の昆虫サークルの大事な会合がない日。
そして最近始めた〝バイト〟がない日を狙って必ずと言っていいほど、彼の家に訪れた。
「陽翔―、ネギ取って。あとついでに、大葉も」
「はい、律くんっ……」
いつものように彼と一緒に商店街のスーパーに訪れる。
もう役割分担はできていて、料理ができる律くんが指揮を執り、僕が食材を籠に入れる係だ。
そんな光景ももうお馴染みになりつつあり、スーパーで働くおばちゃんたちは温かい目で僕たちを見守ってくれている。
すべての商品を籠に入れ、レジに持っていくと、さっそくレジ打ちのおばちゃんに声をかけられた。
「今日はふたりで仲良く何を作るのかしら?」
「豚しゃぶサラダ、ネギと大葉をたっぷり混ぜようかなって。あと陽翔の大好物だから」
「あらあら、本当に律くんは弟想いなのねぇ」
おばちゃんのその一声で、僕は思わずずっこけそうになった。
何回も顔を合わせているが、このレジのおばちゃんは僕たちを兄弟だと思っているらしい。
血が繋がってなくても、実際に兄弟くらいの年齢差はあるし、身長差だってだいぶある。
それに、垢ぬけていない僕が律くんの隣を歩いていたら、そう思うのも致し方ない気もする。
そのままスルーしようと思っていたけれど、律くんは違った。彼はおばちゃんに笑顔を向けながら、僕の肩を引き寄せてきた。
「ううん。俺たち、兄弟じゃなくてめちゃくちゃ仲のいい友達。ちゃんと覚えておいてね」
「あらあら、ごめんなさいね」
律くんに抱き寄せられて、彼の広い胸に顔が近づいた。汗がにじんだTしゃつは少ししっとりしている。けれどいい匂いが強くかおってきて、カッと頬が熱くなった。そう――春から始まった僕の〝キュンしちゃう病〟は未だに健在。もちろん、律くん限定で。
「あぁ、あっづい……陽翔、アイス食わねぇ?」

