僕のわがままな一年。


その数日後、僕はいつものように講堂のテーブルの前に座っていた。
手にはスマホ。画面に映っているのは求人アプリだ。

(うう、全部しっくりこない。ここなんて、陽キャばっかりでなんか浮いちゃいそうだし)

求人情報の説明欄に【和気あいあいの職場】【みんな仲良し!】などと文言が並んでいる。
だが残念ながら僕にとっては逆効果。あまり安心感を抱けない。
まず、大人数で和気あいあいするのが苦手だし、狭く深くの交友関係が心地いいタイプなので、体力とは別に気疲れしてしまいそうだ。
律くんに働く宣言をしたくせに、怖気づいてバイト面接さえしていないのが本当に情けない話なのだが。
けれど、簡単な話でもない気がしている。
適当に面接に行って仮に合格してしまったら、合わない職場で働かなくてはいけないのは、ちょっとリスクが高すぎる。

「おーい、さっきから顰めッ面してるわけ?」

隣に座っていた遠山が、いつものように快活な笑顔でこちらを覗き込んでくる。

「うーん、バイトがまだ見つからなくて……」

「そうなん? あぁでも求人が多すぎて結構選ぶのむずいよな。俺もそろそろ始めたいと思ってんだけど、迷う」

「だよね」

こんな明るい遠山が、バイト選びに苦戦しているとは意外だった。ぱっぱっと感覚で選んで、即働きだしそうなのに。
話を聞いていると、上京して初めてのバイトとあって、エリアや雰囲気など考えてしまい、慎重になっているらしい。

「まぁとりあえず、今日は銭湯でも行かねぇ?」

講堂を一緒に出たところで、誘われる。
ひゅんっと冷たい風が頬を切った。もう春真っただ中で、夏に向かっているはずなのに、今日は夜にかけて冷えるらしい。

「そうだね。寒いし温まりたい気分」