僕のわがままな一年。

僕が即座に断りを入れると、律くんは残念そうに唇を尖らせる。
けれどすぐにふっと顔をほころばせ「冗談だよ」と言って、キッチンに戻っていった。
律くんが鍋の最後の仕上げをしている中、勧められるがまま二人掛けソファの端に座っていた僕だったけど、結局落ち着かなくて彼のもとに歩いて行った。
律くんは沢山の調味料に囲まれて、手際よく準備をしている。
姿を見ていると結構自炊をしているのではないかなと思った。
全然知らなかった、律くんの一面。その見た目で、性格で、さらに自炊までしてるなんて。正直、ずるいと思った。

「陽翔、座って待っててよ」

「うん……でも。律くんにだけさせちゃってるの、なんだか落ち着かない。食器とか持って行ってもいいかな?」

僕がぼそぼそと質問すると、菜箸を持った律くんが振り返って顔をほころばせた。

「ほんと、昔から働き者だよな」

「そ、そんなことない。ただ落ち着かないだけ」

一度でも、自分が働き者だなんて思ったことがない。
でも律くんがそう言うってことは、昔、僕が何かしているところを見ていたんだろう。

「……わかった。食器棚から適当に皿持って行ってくれるか」

律くんに言われた通り、皿を食器棚から出してテーブルに持っていく。あと、コップや箸なんかの在処も教えてもらえたので、すぐにテーブルをセッティングした。
その五分後くらいに、律くんが鍋を丸ごと持ってきてくれて、テーブルの上にドンッ!と置いた。
彼はてっきりビールを開けるのかと思ったが、僕と同じでコップに麦茶を注ぎ入れた。

「「いただきます」」

律くんとコップを重ねて乾杯すると、鍋をもくもくと食べ始めた。
たいした会話もせず隣り合わせで食事しているのが不思議でしょうがない。
でもふいに香ってくる律くんの香水と、僕とはまるで違う白くて綺麗な腕が視界に入るたび、とんでもなく贅沢な時間を過ごしているのだと痛感する。
こんなに現実感のない時間は、大昔、両親がサプライズでテーマパークに連れて行ってくれた夜以来かもしれない。

「そういえばここ、意外と音響くよな。……夜とか、うるさくなってないか?」