後ろを振り返ると、少しだけ開いた扉の隙間から律くんの顔が見えた。
僕が扉の前に置いたコンビニ袋のせいで、しっかりと開けられないらしい。
一気に心臓が早鐘を打つ。まさに喜怒哀楽のジェットコースターに乗っている気分だ。
僕はとっさに彼に向って手を挙げた。
「り、律くん! 今インターホン押したの、僕です。体調は大丈夫ですか?」
「え、あぁ……陽翔だったの。ごめん、ちょっと火使ってて反応遅れちゃった」
僕はすぐさま彼の扉の前に走っていき、邪魔になっていたコンビニ袋を再び持った。
というか、リボン結びにしたせいでめちゃくちゃ持ちにくい……。
そんなことはさておき、あれ、なんて律くんに言うんだっけ。全っ然思い出せない……!
少し長めの前髪から、寝ぼけ眼が覗く。少しだけいつもより色白く見えるが、相変わらず綺麗な顔だ。
それに不思議そうにぽっかり空いている唇から赤い舌が見えて、なんだか色っぽい。だからこそ、苦しくなるほどに緊張する。
「あの、今朝すごく体調が悪そうに見えたから、心配してて。ご飯とか食べられているのかなーって。だから、体によさそうなもの買ってきたんだけど」
全然イメトレしていた言葉と違う内容が、口から次から次へと出てくるので、もう台本は白紙状態。計画もすべて水の泡。
焦りまくっている僕は、律くんをまともに見られない。
(とにかく、これを渡さなければ……!)
「あの、といわけで律くんこれ! よかったら食べてください……っ!」
無理やり押し付けるようにして、コンビニ袋を渡す。一瞬呆気にとられた表情をしていた律くんだったが、すぐに手を伸ばしてそれを受け取ってくれた。
「うわ、まじか。心配させちゃってごめんな。すげー嬉しいよ、陽翔」
「……っ!」
ほっと安心して顔を上げると、少し元気がない笑みを律くんはこちらに向けてくれていた。
そしてすぐにスーパーの袋を開けて、中を確認する。
「うわぁ、水とかみそ汁とかマジで助かる。さっきまでトイレにこもりっぱなしで、胃の中からっぽだからさ」
「そ、そっか。やっぱり二日酔いだったんだ……一応調べて買ってきた。喜んでくれて嬉しいです」
僕が照れながらも伝えると、律くんは突然がばりと顔を上げる。びっくりした僕は、少しだけ後ろに跳ね上がった。
「今ちょうど鍋を作ってたところ。よかったら、陽翔も一緒に晩飯食っていかないか?」

