すべての授業が終わり、講堂で帰り支度をしていると斜め後ろに座っていた遠山が話しかけてきた。
僕と同じ文学部で新入生歓迎会の食事会で席が隣同士になり、仲良くなったタメだ。
身長は高くなく、八重歯のある童顔で、初対面から親しみやすいタイプだ。
遠山は偶然顔を合わせるとこうして誘ってくれる。課題がはかどっている気はしないが、それでも大学の話とかくだらない雑談はストレス発散になっている。今日ももちろん誘いに乗りたかったが、すぐに今朝の律くんの姿を思い出して口ごもった。
「あー……遠山ごめん、今日は用事があって。また誘ってくれる?」
「あー、おっけおっけ。また誘うから! てか今度一緒に銭湯行かん?」
「せ、銭湯?」
唐突に銭湯に誘われて僕は、思わず声を上げてしまった。
銭湯にあまり馴染みがないし、友人と行く文化もない。僕が本当に困った顔をしていたからか、遠山は〝がはは〟と笑って、安心させるように肩を叩いてきた。
「そーだよ、やっぱ男の友情は裸の付き合いから育まれるってもんでしょー! 最近俺サ活にはまっててさー。超行ってみたい銭湯あるんだよねぇ~」
「へ、へー? そうなんだ。別に全然いいよ、僕お風呂大好きだし。サウナも体験してみたいかも」
「っしゃー、決まり!」

