僕のわがままな一年。



マンションの敷地内を出てからも、心の中がもやもやとした。
あんな体の細いお姉さんひとりで、泥酔した律くんの介抱をお願いしてしまってよかったのかな。
男の僕が代わってやればよかったのでは?
寄り添うふたりが部屋に消えていく姿を見て、胸が痛んだのはなぜなんだろう。
何年も会っていなかった僕よりも、あのお姉さんの方が断然距離が違いのは明確だ。
ふたりがどんな関係かは全く見当がつかないが、一晩飲み明かす仲。
大学の友達なのか、それともそれ以外で出会った友達か。もしくは、彼女だっていう説もあり得る。

(そりゃそうだ。だって律くんはあんなにかっこいい。彼女がいるに決まっている)

彼女と半同棲しているのだとしたら、家にあまり帰っていないのも辻褄が合う。
そこまで考えて、僕はさっきの判断が正しいと思い直した。
ふたりの世界に、僕がいなくていい気がした。〝ただの隣人〟が図々しく、部屋に上がり込んで、介抱するなんて間違っている。
ふたりが付き合っている仲なのかもしれないのだから。

(お酒、か。どこが美味しいんだろう……)

商店街を歩きながら、ぼんやりと思った。
僕は、酒をほとんど飲んだことがない。(いや、そもそも法律で二十歳以上は飲めないことになっているのだが。汗)。
小さい頃ジュースと間違えてビールを飲んでしまったことが一回。二回目は、蒼が成人式の日に家でチューハイを開けていて、こっそりひとくちもらった。ビールは苦くて全く美味しいと思えなかったし、チューハイに関しては、口当たりはジュースみたいで美味しかったのだが、後から一気に顔が熱くなって、危険だなと思った記憶がある。だから、全体的に酒は怖いというイメージだ。
律くんは二日酔いになるほど、飲んだということ……。やはり僕とは程遠い世界にいる人なんだと、しみじみと思う。

――律くんと話したいけれど、いざ話せる時がきたら、話題なんてあるのかな。
――こんな田舎者で子供な僕と、大人で都会的な彼とはかみ合わない気がする。

そんな風に律くんのことを考えて重たい気持ちになっていた僕だけれど、その後学校で二コマ分の授業を消化したら、不思議といつもの自分に戻れた。

「南ー、この後スタバで課題やって帰らん?」