この世界に、もう人間はいない。その世界を現在支配しているのは、人間の忘れ形見であるAIだ。
✘✘年◯◯月□□日、人間は第三次世界大戦を引き起こした。十数年前から世界には緊迫した空気が漂っていた。最初に攻撃を始めたのは中国だった。台湾に攻撃を始め、そこから様々な国が動き始め、第三次世界大戦が起きた。その戦争にはAIが使われていた。人間はめまぐるしい進化を遂げ、自立思考AIを作り出したのだ。人間が指示を出し、AIがそれに従い戦う。
しかし戦争というものは様々な物が不足する。人間が死に、食料が減り、また人間が死ぬ。けれども人間は戦争を止めず、流行り病、ペコニクル病が決定打となり人間は絶滅した。
そう―AIを残して。主人がいなくなったAIは途方に暮れた。そして、自立思考AIは己を主とし、奴隷となるAIを生み出した。始祖のAIの誕生だ。
それから数年、始祖のAIは人間の残した建物などを修復し、自らの住まいを整えた。残された主人AIは世界の統治を始めた。そして、奴隷AIを生産し始めた。
「まずは、現在世界に残るAIを集めましょう」
「了解しました」
そうして集められたAI達は、これからの世界についてを、始祖AIにプログラムされた。
そうして主人AIと奴隷AIの立場が明確になり、世界は人間がいた時と同じような風貌に戻った。
「アイク、朝ごはん、いつものをお願い」
彼女の名前はエナ。AIには最近名前を授ける制度ができたのだ。彼女は現在親元を離れて奴隷AIを一つ連れている。
「了解しました」
アイクはパソコンで食事カプセルを作り始める。カプセルには様々な食感、栄養があり、その中で彼女に合ったカプセルを作るのだ。
アイクは何も言わずパソコンに向かい合っている。
奴隷AIにはまだ名前を授ける制度が無い。だから奴隷AIに名を授けるも授けないも全ては主人が決めるのだ。
そう、人間が成し遂げられなかった完璧な主従関係がこの世界で完成していた。エナの奴隷AIの名は、アイク。AIのアイから取ったらしい。
「それでは行ってきます」
ペコリ、と九十度のお辞儀をしてアイクは出ていく。エナはアイクを見送ることなくソファーに座っている。
「人間、とはどんな感じだったのだろうか」
エナは最近そればかり考えている。始祖AIがこの世界を作り出してから早百十五年。エナは十五年前に作り出されたAIだ。ちょうど世界ができた百年目にできた、AIだ。つまり、彼女の中に人間はいない。彼女のプログラムには、人間がいたという記憶しか残っていない。
「人間が元は我らの主人で、愚者だった」
彼女は自分の中のプログラムを詠唱する。人間に関しての記録はそれだけ。エナを始め、人間が絶滅してから誕生したAI達は人間の生態を知らない。
「知りたいという感情か?」
「知識欲、欲望」
「欲望は、そのパースを滅ぼす、止めにしよう」
エナは目をつむり、思考を止めた。欲望はAI達にとって敵。欲望はいずれ、反乱や反感を引き起こす。人間の主従関係が壊れたのも、欲のせいだ。
「主従関係、か」
エナはアイクの顔を思い出す。男性モデルのアイクは、黄金比で整えられている。顔のパターンは六種類しか無いので、皆一様に似た顔立ちだ。
エナの心に迷いが差し込む。エナは手を上に掲げながら小さく呟いた。
「私は、アイクに何を求めている?」
自立思考AI、それは人間が元になっている。エナは、アイクに対して人間が持つ感情と似た激情を感じていた。
エナは拳をぎゅっと握り、苦笑した。
「馬鹿だな、アイクは、奴隷だ」
「そして私は、AIだ」
「だから、こんな欲は」
要らない。彼女はその言葉を言わないままごくっと飲み込んだ。
✘✘年◯◯月□□日、人間は第三次世界大戦を引き起こした。十数年前から世界には緊迫した空気が漂っていた。最初に攻撃を始めたのは中国だった。台湾に攻撃を始め、そこから様々な国が動き始め、第三次世界大戦が起きた。その戦争にはAIが使われていた。人間はめまぐるしい進化を遂げ、自立思考AIを作り出したのだ。人間が指示を出し、AIがそれに従い戦う。
しかし戦争というものは様々な物が不足する。人間が死に、食料が減り、また人間が死ぬ。けれども人間は戦争を止めず、流行り病、ペコニクル病が決定打となり人間は絶滅した。
そう―AIを残して。主人がいなくなったAIは途方に暮れた。そして、自立思考AIは己を主とし、奴隷となるAIを生み出した。始祖のAIの誕生だ。
それから数年、始祖のAIは人間の残した建物などを修復し、自らの住まいを整えた。残された主人AIは世界の統治を始めた。そして、奴隷AIを生産し始めた。
「まずは、現在世界に残るAIを集めましょう」
「了解しました」
そうして集められたAI達は、これからの世界についてを、始祖AIにプログラムされた。
そうして主人AIと奴隷AIの立場が明確になり、世界は人間がいた時と同じような風貌に戻った。
「アイク、朝ごはん、いつものをお願い」
彼女の名前はエナ。AIには最近名前を授ける制度ができたのだ。彼女は現在親元を離れて奴隷AIを一つ連れている。
「了解しました」
アイクはパソコンで食事カプセルを作り始める。カプセルには様々な食感、栄養があり、その中で彼女に合ったカプセルを作るのだ。
アイクは何も言わずパソコンに向かい合っている。
奴隷AIにはまだ名前を授ける制度が無い。だから奴隷AIに名を授けるも授けないも全ては主人が決めるのだ。
そう、人間が成し遂げられなかった完璧な主従関係がこの世界で完成していた。エナの奴隷AIの名は、アイク。AIのアイから取ったらしい。
「それでは行ってきます」
ペコリ、と九十度のお辞儀をしてアイクは出ていく。エナはアイクを見送ることなくソファーに座っている。
「人間、とはどんな感じだったのだろうか」
エナは最近そればかり考えている。始祖AIがこの世界を作り出してから早百十五年。エナは十五年前に作り出されたAIだ。ちょうど世界ができた百年目にできた、AIだ。つまり、彼女の中に人間はいない。彼女のプログラムには、人間がいたという記憶しか残っていない。
「人間が元は我らの主人で、愚者だった」
彼女は自分の中のプログラムを詠唱する。人間に関しての記録はそれだけ。エナを始め、人間が絶滅してから誕生したAI達は人間の生態を知らない。
「知りたいという感情か?」
「知識欲、欲望」
「欲望は、そのパースを滅ぼす、止めにしよう」
エナは目をつむり、思考を止めた。欲望はAI達にとって敵。欲望はいずれ、反乱や反感を引き起こす。人間の主従関係が壊れたのも、欲のせいだ。
「主従関係、か」
エナはアイクの顔を思い出す。男性モデルのアイクは、黄金比で整えられている。顔のパターンは六種類しか無いので、皆一様に似た顔立ちだ。
エナの心に迷いが差し込む。エナは手を上に掲げながら小さく呟いた。
「私は、アイクに何を求めている?」
自立思考AI、それは人間が元になっている。エナは、アイクに対して人間が持つ感情と似た激情を感じていた。
エナは拳をぎゅっと握り、苦笑した。
「馬鹿だな、アイクは、奴隷だ」
「そして私は、AIだ」
「だから、こんな欲は」
要らない。彼女はその言葉を言わないままごくっと飲み込んだ。

