さすがにグーズが付いてくると言うことでスライムバスは使えないと思い、貴族街を歩いていた。
石畳が敷かれ、大きな建物が立ち並んでいる。
所々警備をしていたのであろう兵が魔石化している。
「これも俺が騙されたせいか……」
グーズも色々と思うことがあるようで深刻そうな声を出していた。
「そうだね……」
下手に否定してもグーズの心には届かないであろう、とルルはむしろ同意する。
「でも、ここまでのことをする人ならあなたがダメだったとしても別の方法を考えたんじゃないかな?」
「で、でも……」
「とにかく今は被害が出る前にみんなを治すよ!」
「そうだな」
しかし、すぐに向かおうとすると致命的な問題があった。
グーズはやや小太り気味の体型でお世辞にも運動は得意とは言えなかった。
そして、ルルの方もまたまた病弱でまともに運動したことがない。
そんな二人が必死に走ったところでそれほどの速度は出ず、息もすぐに上がってしまう。
「はぁ……、はぁ……」
「はぁ……、はぁ……」
――なんだか貴族街、大きくない?
「えっと、まだかかりそう?」
「あと少しだな」
「貴族街、大きくないかな?」
「基本は馬車移動するからな。こうして走ることが稀だ」
「そ、そうなんだ……」
もしかするとマリウスもこのことを知っていて、ルルが疲れると思って最後にしたのだろうか?
そんなことを考えているうちについに貴族街の中心部へとたどり着く。
「それじゃあ、早速治癒魔法を放つからね」
「わかった。俺は周囲を警戒してるからな」
「大丈夫だよ。こんな状態で襲ってくる人なんていないよ」
「念のためだ。あいつが襲ってくるかも知れないだろ?」
「あいつ……」
――それって魔石病を広めようとしてる人のことだよね?
でもルル自身はその人に会ったことがないためにどのくらい危険なのかわからなかった。
――あっ、そうだ。今回もマリウスさんも治療しておこう。
クリフォードと戦ってくれているマリウス。
一応ポーションを渡していたが、それでも心配であった。
大体の位置さえわかれば治癒魔法は使えるために結界で魔法を使うついでにもう一度マリウスに使うことにした。
「あれっ?」
なぜかマリウスの側に強い瘴気を感じる。
「まぁ、いいか。こっちにも治癒魔法を使っておこう」
ルルは同時に三カ所に治癒魔法を使うのだった。
◇◆◇
「はぁ……はぁ……」
マリウスは膝をついて息を荒げていた。
対するクリフォードは未だに息は乱れた様子はなく、腕を組み立ち尽くしていた。
「もう諦めろ。お前の力じゃ俺には勝てない」
「ど、どうかな? 君の方もずいぶんと力を使っているじゃないか」
「ふん、こんなものかすり傷だ」
よく見るとクリフォードにも細かい傷がいくつも付いている。
それがかすり傷というのもよくわかる。
「本当にかすり傷なのかい?」
「くっ、やはり食えないやつだな」
クリフォードの傷はすべて体を麻痺させる毒によって付けられたもので、一つ一つは弱い毒だったとしても、その数が増えると動きが鈍くなる。
「しかし、この程度で俺が止められると思うのか?」
「思わないよ。最初から言ってるでしょ。今の僕じゃ君には勝てないって。でも精一杯の時間稼ぎはさせて貰うよ」
再び立ち上がるとマリウスは再び白の魔法を放つ。
「ちっ」
炎の魔法を放ち、それを打ち消す。
「ぐっ……」
討ち漏らした白の魔法がクリフォードをかする。
そこでようやくクリフォードが膝をついていた。
「おやおや、『白』を潰すだけのつもりでしたけどいつの間にか『赤』も弱ってるじゃないですか。これは私にも運が向いてきましたかね」
突然二人を割り込む声。
マリウスとクリフォードは同時にその声の主の方を見る。
フードを被った謎の男。
しかし、そのおかしな気配に二人はすぐに気づく。
「魔族か」
「ゼロスくんだね。禁術にでも手を染めたのかい?」
「知り合いか?」
「昔、『白』を競い合ったんだよ」
「なるほどな」
「あのときお前に負けたせいで俺は……。しかし、この力を得た今、お前に負ける道理はない」
男が手に魔力を込める。
使っている魔法は白の魔法のはずなのだが、瘴気が混ざり合い、その色は灰色に近くなっている。
そして何よりもその強大な魔力。
まともにやり合っては勝ち目がないとわかるほどであった。
「『赤』、力を貸してくれ」
「誰がお前に……。と言いたいところだが今回は仕方ないな」
「よし、ならこれを飲むといいよ」
クリフォードにポーションを投げる。
「これは?」
「『無色』の力だよ」
「くくくっ、なにかはわからんがいいだろう。お前を信じてやる」
クリフォードは迷うこと無くポーションを飲みきると空き瓶を地面に投げ捨てる。
派手に砕け散る薬瓶。
ルルがそれを見てたら「薬瓶、高かったのに」と嘆いていただろう。
ポーションを飲んだクリフォードの体調は一瞬で元に戻っていた。
「なるほど、こういうタイプの力の持ち主か。お前がかばうわけだ」
「やっとわかってくれたかい?」
「どうりで見た目が弱そうなわけだ。でも、祭り上げるだけの力でもあるな」
「理由がわかったならこれ以上狙わないでくれると嬉しいかな?」
「それはまた別だな。これほどの力をもっている奴が他の魔法を使えないはずがない」
「それがね……」
「まさか!?」
「うん、使えないらしいよ」
「本当にわけのわからん奴だな」
「本当にね」
「おいっ、いつまで俺を無視してる!!」
ゼロスと呼ばれた男は強大な灰の魔力を一手に集中して今にも放とうとしていた。
しかし、それをクリフォードが鼻で笑う。
「借り物の力で強がってるだけの小物が俺に勝てるとでも思ってるのか?」
「いやいや、僕もいるからね」
「『白』は寝てて良いぞ。なにせいつにも増して調子が良い」
どうやらクリフォードもどこか体を悪くしていたようだ。
それが治ったクリフォードは今の自分の力を試したくてうずうずしていた。
「くっ、仕方ない。先に『赤』を潰すか」
倒れているマリウスと快調のクリフォード。
どちかを先に倒すべきかは一目瞭然だった。
「行くぞ!」
「よし、こい!」
灰の魔力をクリフォードの方へ押し出そうとする。
すると次の瞬間にゼロスとマリウスを覆うように透明色の魔力が包み込んでおいた。
「ぐおぉぉぉぉぉ。俺の……。俺の力が消えていく……」
「これは……、ルル? そうか、魔族化も病気なのか」
マリウスは思わず笑みをこぼす。
しかし、自身の力を試すことができなかったクリフォードは不服が残っていた。
石畳が敷かれ、大きな建物が立ち並んでいる。
所々警備をしていたのであろう兵が魔石化している。
「これも俺が騙されたせいか……」
グーズも色々と思うことがあるようで深刻そうな声を出していた。
「そうだね……」
下手に否定してもグーズの心には届かないであろう、とルルはむしろ同意する。
「でも、ここまでのことをする人ならあなたがダメだったとしても別の方法を考えたんじゃないかな?」
「で、でも……」
「とにかく今は被害が出る前にみんなを治すよ!」
「そうだな」
しかし、すぐに向かおうとすると致命的な問題があった。
グーズはやや小太り気味の体型でお世辞にも運動は得意とは言えなかった。
そして、ルルの方もまたまた病弱でまともに運動したことがない。
そんな二人が必死に走ったところでそれほどの速度は出ず、息もすぐに上がってしまう。
「はぁ……、はぁ……」
「はぁ……、はぁ……」
――なんだか貴族街、大きくない?
「えっと、まだかかりそう?」
「あと少しだな」
「貴族街、大きくないかな?」
「基本は馬車移動するからな。こうして走ることが稀だ」
「そ、そうなんだ……」
もしかするとマリウスもこのことを知っていて、ルルが疲れると思って最後にしたのだろうか?
そんなことを考えているうちについに貴族街の中心部へとたどり着く。
「それじゃあ、早速治癒魔法を放つからね」
「わかった。俺は周囲を警戒してるからな」
「大丈夫だよ。こんな状態で襲ってくる人なんていないよ」
「念のためだ。あいつが襲ってくるかも知れないだろ?」
「あいつ……」
――それって魔石病を広めようとしてる人のことだよね?
でもルル自身はその人に会ったことがないためにどのくらい危険なのかわからなかった。
――あっ、そうだ。今回もマリウスさんも治療しておこう。
クリフォードと戦ってくれているマリウス。
一応ポーションを渡していたが、それでも心配であった。
大体の位置さえわかれば治癒魔法は使えるために結界で魔法を使うついでにもう一度マリウスに使うことにした。
「あれっ?」
なぜかマリウスの側に強い瘴気を感じる。
「まぁ、いいか。こっちにも治癒魔法を使っておこう」
ルルは同時に三カ所に治癒魔法を使うのだった。
◇◆◇
「はぁ……はぁ……」
マリウスは膝をついて息を荒げていた。
対するクリフォードは未だに息は乱れた様子はなく、腕を組み立ち尽くしていた。
「もう諦めろ。お前の力じゃ俺には勝てない」
「ど、どうかな? 君の方もずいぶんと力を使っているじゃないか」
「ふん、こんなものかすり傷だ」
よく見るとクリフォードにも細かい傷がいくつも付いている。
それがかすり傷というのもよくわかる。
「本当にかすり傷なのかい?」
「くっ、やはり食えないやつだな」
クリフォードの傷はすべて体を麻痺させる毒によって付けられたもので、一つ一つは弱い毒だったとしても、その数が増えると動きが鈍くなる。
「しかし、この程度で俺が止められると思うのか?」
「思わないよ。最初から言ってるでしょ。今の僕じゃ君には勝てないって。でも精一杯の時間稼ぎはさせて貰うよ」
再び立ち上がるとマリウスは再び白の魔法を放つ。
「ちっ」
炎の魔法を放ち、それを打ち消す。
「ぐっ……」
討ち漏らした白の魔法がクリフォードをかする。
そこでようやくクリフォードが膝をついていた。
「おやおや、『白』を潰すだけのつもりでしたけどいつの間にか『赤』も弱ってるじゃないですか。これは私にも運が向いてきましたかね」
突然二人を割り込む声。
マリウスとクリフォードは同時にその声の主の方を見る。
フードを被った謎の男。
しかし、そのおかしな気配に二人はすぐに気づく。
「魔族か」
「ゼロスくんだね。禁術にでも手を染めたのかい?」
「知り合いか?」
「昔、『白』を競い合ったんだよ」
「なるほどな」
「あのときお前に負けたせいで俺は……。しかし、この力を得た今、お前に負ける道理はない」
男が手に魔力を込める。
使っている魔法は白の魔法のはずなのだが、瘴気が混ざり合い、その色は灰色に近くなっている。
そして何よりもその強大な魔力。
まともにやり合っては勝ち目がないとわかるほどであった。
「『赤』、力を貸してくれ」
「誰がお前に……。と言いたいところだが今回は仕方ないな」
「よし、ならこれを飲むといいよ」
クリフォードにポーションを投げる。
「これは?」
「『無色』の力だよ」
「くくくっ、なにかはわからんがいいだろう。お前を信じてやる」
クリフォードは迷うこと無くポーションを飲みきると空き瓶を地面に投げ捨てる。
派手に砕け散る薬瓶。
ルルがそれを見てたら「薬瓶、高かったのに」と嘆いていただろう。
ポーションを飲んだクリフォードの体調は一瞬で元に戻っていた。
「なるほど、こういうタイプの力の持ち主か。お前がかばうわけだ」
「やっとわかってくれたかい?」
「どうりで見た目が弱そうなわけだ。でも、祭り上げるだけの力でもあるな」
「理由がわかったならこれ以上狙わないでくれると嬉しいかな?」
「それはまた別だな。これほどの力をもっている奴が他の魔法を使えないはずがない」
「それがね……」
「まさか!?」
「うん、使えないらしいよ」
「本当にわけのわからん奴だな」
「本当にね」
「おいっ、いつまで俺を無視してる!!」
ゼロスと呼ばれた男は強大な灰の魔力を一手に集中して今にも放とうとしていた。
しかし、それをクリフォードが鼻で笑う。
「借り物の力で強がってるだけの小物が俺に勝てるとでも思ってるのか?」
「いやいや、僕もいるからね」
「『白』は寝てて良いぞ。なにせいつにも増して調子が良い」
どうやらクリフォードもどこか体を悪くしていたようだ。
それが治ったクリフォードは今の自分の力を試したくてうずうずしていた。
「くっ、仕方ない。先に『赤』を潰すか」
倒れているマリウスと快調のクリフォード。
どちかを先に倒すべきかは一目瞭然だった。
「行くぞ!」
「よし、こい!」
灰の魔力をクリフォードの方へ押し出そうとする。
すると次の瞬間にゼロスとマリウスを覆うように透明色の魔力が包み込んでおいた。
「ぐおぉぉぉぉぉ。俺の……。俺の力が消えていく……」
「これは……、ルル? そうか、魔族化も病気なのか」
マリウスは思わず笑みをこぼす。
しかし、自身の力を試すことができなかったクリフォードは不服が残っていた。
