最近は、こっそりあの空き教室で1人で昼休みを過ごす事が増えた。
藤井は、俺の放送日しかいないみたい。
ホコリを被った机たちの中でひとつだけ綺麗に拭き取られた席。
─ここで藤井が俺の声を聞きながら眠っている…
無意識に机を指先でそっと撫でてみた。
目を閉じてしまったら、勝手な想像な頭に流れ込んでくる。
藤井の黒い髪が、茶色い机にはらりと落ちて
伏せた背中が穏やかに規則正しく上下する。
伏せた腕の中には、長いまつ毛と、力の抜けた血色の良い唇から漏れる静かな寝息。
想像のそれは、とても眩しい寝顔だったから…
出来心だった。
そっとその机に触れるか触れないかの距離まで机に伏せて行き、
机にそっと唇を落としてみた
ひんやりとした机の温度に
「…何やってんだろ」
こんな姿見られたら引かれてしまう、と自分の唇を指先で撫でる。
独り言は、軽快な後輩の校内放送の声にかき消される。
自分で作った味気ない弁当を箸でつつく。
火の通っていないキャベツの芯を食べる姿をクラスメイトに見られなくてよかったと胸を撫で下ろしながら。
ガラッと無遠慮に空いた扉に心臓が飛び出るかと思った。
「…水野?」
不機嫌そうに扉の前で俺の名前を呟く藤井に咄嗟に謝る。
「今…でる!勝手に使ってごめん。」
食べかけの弁当を急いで片付けようと立ち上がる。
俺の前まで来た藤井が、俺の手首を掴んで片付ける手を止めさせる。
「なんでだよ、別にここに居ればいいだろ」
「…だって。怒ってるじゃん」
「怒る?なんで?」
藤井が、きょとんとした顔をして手首を掴む指の力を抜いたから俺の左手は行き場を失った。
「藤井の居場所なのに…勝手に──」
「入って来て欲しくないやつ、そもそも入れないだろ…やっと見つけたのに」
ほらっ、と柔らかく俺の肩を撫でてから椅子に座らせる。
「水野がいるなら…俺も早くこっちで食えばよかったと思っただけ。」
ボソボソと言ってから俺の向かいに座る。
「飲む?」
と差し出された飲みかけのブラックコーヒーのペットボトル。無糖の字が怨めしい。
「…飲めない」
と呟いたら、藤井は吹き出して
「…子ども舌かよ」
と何故かとても嬉しそうに俺の頭をぐしゃぐしゃにしてくる。
「バカにしただろ」
と、手を払ったら
「うん、ちょっと…うそうそ。」
笑いながら
「ごめん。お詫びにこれやるから」
と渡されたプリンパン。
「いいの?やった!」
と、思わず飛びついたら
「単純。やっぱり…お子ちゃまだな」
さっきより、何故か少し甘く聞こえたのは多分プリンパンが甘いせい。
「あ…藤井の昼ごはんは?」
パンを半分以上食べてしまってから聞くと
「んー、なくていいかも」
となんでもないように答える。
「これ…食べかけでよければ」
さっき、しまった弁当を差し出す。
美味しくなさそうなところから食べたから、柔らかそうなキャベツが残っている。
ご飯の上に野菜炒めを乗っけた男飯。
「…自分で作ってるんだよな?もらっていいの?」
「大丈夫…?」と覗き込む俺に
「うまい!」と満面の笑みを浮かべて次のひとくちのために箸を動かす。
「あっごめん。箸使っちゃった。気にするタイプ?」
と付け足す。
「ううん。全然」
藤井の口に何度も運ばれる自分の箸に心拍数が上がるけど…
「藤井の方が、そういうの気にしそう」
「んー…正直、人によるかも」
これ以上心拍数が上がったら手の中のプリンパンを潰しそう。
聞こえないふりをして口の中の甘ったるさに集中した。
藤井は、俺の放送日しかいないみたい。
ホコリを被った机たちの中でひとつだけ綺麗に拭き取られた席。
─ここで藤井が俺の声を聞きながら眠っている…
無意識に机を指先でそっと撫でてみた。
目を閉じてしまったら、勝手な想像な頭に流れ込んでくる。
藤井の黒い髪が、茶色い机にはらりと落ちて
伏せた背中が穏やかに規則正しく上下する。
伏せた腕の中には、長いまつ毛と、力の抜けた血色の良い唇から漏れる静かな寝息。
想像のそれは、とても眩しい寝顔だったから…
出来心だった。
そっとその机に触れるか触れないかの距離まで机に伏せて行き、
机にそっと唇を落としてみた
ひんやりとした机の温度に
「…何やってんだろ」
こんな姿見られたら引かれてしまう、と自分の唇を指先で撫でる。
独り言は、軽快な後輩の校内放送の声にかき消される。
自分で作った味気ない弁当を箸でつつく。
火の通っていないキャベツの芯を食べる姿をクラスメイトに見られなくてよかったと胸を撫で下ろしながら。
ガラッと無遠慮に空いた扉に心臓が飛び出るかと思った。
「…水野?」
不機嫌そうに扉の前で俺の名前を呟く藤井に咄嗟に謝る。
「今…でる!勝手に使ってごめん。」
食べかけの弁当を急いで片付けようと立ち上がる。
俺の前まで来た藤井が、俺の手首を掴んで片付ける手を止めさせる。
「なんでだよ、別にここに居ればいいだろ」
「…だって。怒ってるじゃん」
「怒る?なんで?」
藤井が、きょとんとした顔をして手首を掴む指の力を抜いたから俺の左手は行き場を失った。
「藤井の居場所なのに…勝手に──」
「入って来て欲しくないやつ、そもそも入れないだろ…やっと見つけたのに」
ほらっ、と柔らかく俺の肩を撫でてから椅子に座らせる。
「水野がいるなら…俺も早くこっちで食えばよかったと思っただけ。」
ボソボソと言ってから俺の向かいに座る。
「飲む?」
と差し出された飲みかけのブラックコーヒーのペットボトル。無糖の字が怨めしい。
「…飲めない」
と呟いたら、藤井は吹き出して
「…子ども舌かよ」
と何故かとても嬉しそうに俺の頭をぐしゃぐしゃにしてくる。
「バカにしただろ」
と、手を払ったら
「うん、ちょっと…うそうそ。」
笑いながら
「ごめん。お詫びにこれやるから」
と渡されたプリンパン。
「いいの?やった!」
と、思わず飛びついたら
「単純。やっぱり…お子ちゃまだな」
さっきより、何故か少し甘く聞こえたのは多分プリンパンが甘いせい。
「あ…藤井の昼ごはんは?」
パンを半分以上食べてしまってから聞くと
「んー、なくていいかも」
となんでもないように答える。
「これ…食べかけでよければ」
さっき、しまった弁当を差し出す。
美味しくなさそうなところから食べたから、柔らかそうなキャベツが残っている。
ご飯の上に野菜炒めを乗っけた男飯。
「…自分で作ってるんだよな?もらっていいの?」
「大丈夫…?」と覗き込む俺に
「うまい!」と満面の笑みを浮かべて次のひとくちのために箸を動かす。
「あっごめん。箸使っちゃった。気にするタイプ?」
と付け足す。
「ううん。全然」
藤井の口に何度も運ばれる自分の箸に心拍数が上がるけど…
「藤井の方が、そういうの気にしそう」
「んー…正直、人によるかも」
これ以上心拍数が上がったら手の中のプリンパンを潰しそう。
聞こえないふりをして口の中の甘ったるさに集中した。
