帰り道が途中まで一緒だとわかってなんとなく一緒に帰ることが増えた。
いつものように自転車を押す藤井の隣をゆっくり歩いていたら、白い軽トラが目の前に停まった。
2人で顔を見合わせて身構えると
「いと坊!久しぶりだなー。元気だったか?」
声をかけて来たのは、祖父の弓道場に通うシゲルさん。
いい人ではあるんだけど…これから続くであろう会話が想像できて身体がこわばる。
「…ご、ご無沙汰しております」
「弓道辞めたらしいじゃないか!お祖父様も嘆いていたよ」
苦笑いしかできずに誤魔化す。
「実家まで出ることないだろう、この親不孝者」
冗談のつもりだろう言葉が胃に突き刺さってキリキリ痛む。でも、ここで言い返してしまえば、祖父の耳に入ってまた母が責められるだけだろう。我慢してこの時間が過ぎるのを待つしかない。
突然、隣で「は?」と眉間に皺を寄せ、ジャリッと音を立てて藤井の左足が半歩前に出た。藤井の制服の裾を引っ張り「大丈夫だから」と小声で嗜める。
「こちらの学校で学びたいことがありまして」
背筋を正して、まっすぐ前を見据えて[師範のお孫さん]として、正しく振る舞う。
「そうかそうか。たまには道場にも顔を出せよ。」
そう、手を振って去っていく軽トラに深々とお辞儀をしてこの空間から早く去ってくれと願う。
「いったぞ…なんなんだ、あいつ」
少し怒気の残った声に目の奥が熱くなる。
頭を上げたら、見せたくない顔になっていそうで顔が上げられない。
「ありがと」
自分の声が弱々しくて嫌になる。
「水野はかっこいいな」
思ってもいない言葉に思わず顔を上げてしまった。
「え?どこが?」
ほら、多分今だって情け無い顔をしているはず。
「俺ならあんな大人な対応出来ない…えらいよ」
と柔らかく笑って、本当に自然に俺の頭を撫でてくれてた。
その手が大きくて、とても温かくて、我慢していたものが溢れ出るようにぽろぽろと涙がこぼれていく。
「ごめ…あれ?俺おかしいな、こんな事…よくある事なのに」
そう言って目をゴシゴシ擦って無理やり涙を止め、笑った。
笑顔を向けて大丈夫だと伝えなきゃ――そう思って藤井の目を見上げたのに、頭に置かれた手に力が入って、気が付いたら藤井の肩に顔が埋まるように抱き寄せられていた。
「な、何?ど、どうしたの?もう泣いてないから大丈夫だよ?」
と慌てて離れようとしたらもう一度力が込められて離れられない。
「こんな事、よくあってたまるかよ。」
そう呟く藤井の熱い息がつむじに当たる。
身動きが取れないほど力で、胸の奥まで温かさがじんわり広がって、自然に息が整っていくのを感じた。
「藤井って…大きいんだな」
人に抱きしめられる事がこんなに安心する事だとは知らなかった。藤井が普段並んで歩いている時よりも大きく感じて、そんな言葉が漏れてしまった。
「急にどうした?」
俺にしか聞こえない声で囁くいる藤井が耳元くすくす笑っていてくすぐったい。首をすくめるとポンポンっと俺の後頭部を撫でてきた。
もっとずっとこうしていたいかも──
なんて思ってしまった自分が怖くて、藤井の制服に顔をグリグリと押し付けて「鼻水ついた」と笑って、誤魔化すことにした。
「おい、こら!やめろよ」と脇腹をくすぐってくる藤井と2人でケラケラ笑って戯れていたら、通りすがりの車にクラクションを鳴らされて
「「ごめんなさーい」」と謝って笑い合いながら、その場から走って逃げ出した。
こんなに軽やかに体が跳ねるのは、いつぶりかな?藤井といるからかな。
いつものように自転車を押す藤井の隣をゆっくり歩いていたら、白い軽トラが目の前に停まった。
2人で顔を見合わせて身構えると
「いと坊!久しぶりだなー。元気だったか?」
声をかけて来たのは、祖父の弓道場に通うシゲルさん。
いい人ではあるんだけど…これから続くであろう会話が想像できて身体がこわばる。
「…ご、ご無沙汰しております」
「弓道辞めたらしいじゃないか!お祖父様も嘆いていたよ」
苦笑いしかできずに誤魔化す。
「実家まで出ることないだろう、この親不孝者」
冗談のつもりだろう言葉が胃に突き刺さってキリキリ痛む。でも、ここで言い返してしまえば、祖父の耳に入ってまた母が責められるだけだろう。我慢してこの時間が過ぎるのを待つしかない。
突然、隣で「は?」と眉間に皺を寄せ、ジャリッと音を立てて藤井の左足が半歩前に出た。藤井の制服の裾を引っ張り「大丈夫だから」と小声で嗜める。
「こちらの学校で学びたいことがありまして」
背筋を正して、まっすぐ前を見据えて[師範のお孫さん]として、正しく振る舞う。
「そうかそうか。たまには道場にも顔を出せよ。」
そう、手を振って去っていく軽トラに深々とお辞儀をしてこの空間から早く去ってくれと願う。
「いったぞ…なんなんだ、あいつ」
少し怒気の残った声に目の奥が熱くなる。
頭を上げたら、見せたくない顔になっていそうで顔が上げられない。
「ありがと」
自分の声が弱々しくて嫌になる。
「水野はかっこいいな」
思ってもいない言葉に思わず顔を上げてしまった。
「え?どこが?」
ほら、多分今だって情け無い顔をしているはず。
「俺ならあんな大人な対応出来ない…えらいよ」
と柔らかく笑って、本当に自然に俺の頭を撫でてくれてた。
その手が大きくて、とても温かくて、我慢していたものが溢れ出るようにぽろぽろと涙がこぼれていく。
「ごめ…あれ?俺おかしいな、こんな事…よくある事なのに」
そう言って目をゴシゴシ擦って無理やり涙を止め、笑った。
笑顔を向けて大丈夫だと伝えなきゃ――そう思って藤井の目を見上げたのに、頭に置かれた手に力が入って、気が付いたら藤井の肩に顔が埋まるように抱き寄せられていた。
「な、何?ど、どうしたの?もう泣いてないから大丈夫だよ?」
と慌てて離れようとしたらもう一度力が込められて離れられない。
「こんな事、よくあってたまるかよ。」
そう呟く藤井の熱い息がつむじに当たる。
身動きが取れないほど力で、胸の奥まで温かさがじんわり広がって、自然に息が整っていくのを感じた。
「藤井って…大きいんだな」
人に抱きしめられる事がこんなに安心する事だとは知らなかった。藤井が普段並んで歩いている時よりも大きく感じて、そんな言葉が漏れてしまった。
「急にどうした?」
俺にしか聞こえない声で囁くいる藤井が耳元くすくす笑っていてくすぐったい。首をすくめるとポンポンっと俺の後頭部を撫でてきた。
もっとずっとこうしていたいかも──
なんて思ってしまった自分が怖くて、藤井の制服に顔をグリグリと押し付けて「鼻水ついた」と笑って、誤魔化すことにした。
「おい、こら!やめろよ」と脇腹をくすぐってくる藤井と2人でケラケラ笑って戯れていたら、通りすがりの車にクラクションを鳴らされて
「「ごめんなさーい」」と謝って笑い合いながら、その場から走って逃げ出した。
こんなに軽やかに体が跳ねるのは、いつぶりかな?藤井といるからかな。
