僕の声に恋した君に─ can you hear me?─

校庭に並んだバスの前に立つ灯夜を見つけた。
「美男美女だな」
1番聞きたくなかった言葉が無遠慮に通り過ぎていく。
光が羨ましがってたクラス1の美女と灯夜は並んでいるだけで絵になる。

絵になんかしたくないけど。

「水野くんの私服オシャレだね!これどこで買ったの?」とグループの子が話しかけてくる。
「俺が選んだの」と代わりに返事してくれた恭助は「センスある!」と褒められていた。
そうだ、恭助が選んでくれたんだから大丈夫。多分褒めてくれるはず。と自分に言い聞かせて灯夜に近づいた。

俺に気付いてない灯夜に「おはよ」っと声をかける。
「あー、おは…え?は?」
目をまんまるにして頭の先からつま先まで何度も見てくるから、そわそわしてくる。
「え…変かな」
呟いた声は
「なんで…?え?」
そう呟いて、俺の肩に手をかけて…クルッと身体を回されて横、後ろ姿、また前と全身をチェックされた。
ゆっくり歩いてきた恭助が
「どう?俺のスタイリング」
とカッコつける。 

「そういうこと?」
と、へにゃへにゃとしゃがみ込んだ灯夜が俺のカーディガンの裾をつまんでくる。
「お揃いじゃん」
と赤くなって呟く。
え?と恭助の顔を見てたら
「屋上で、遠足何着ていくか聞いた」
と笑って去って行ってしまった。
ほんとだ…、俺もびっくり。

「知らなかったの?」
と聞かれてコクンと頷いた。
立ち上がった灯夜と、お互いのカーディガンをまじまじと見ながら笑い合った。
「めっちゃ似合う」
「恭助に灯夜に釣り合う服選んでもらった」
「どんな服でもいいけどね、でもほんと似合ってる」

「かっこいい?」
「かっこいいというよりは……可愛いかな」

小声でそんな会話をしていたら集合の号令がかかる。
「またね」
と手を振って自分のグループの輪の中に戻った。

私服の灯夜はより目立つのか、女子がザワザワしている気がする。

優越感とモヤモヤの混ざった不思議な感覚。

「あいつだけモテるのムカつくよなー」
そう茶化してくれる光に
「光ってどうしてこんなに優しいのに彼女できないんだろうな」と言って「何だとこの野郎」とヘッドロックをされる。

「…お前ら見てたら誰でもいいから付き合うとかバカらしくなってきたんだよなー」

「へへへ、羨ましいだろー」
光の真似をして、温かく茶化してみた。


各グループでルートが全く違ったせいで午前は灯夜と光に全く会えないまま集合場所に到着した。


「……。灯夜、あの美女と仲良くなってない?」
後から到着してきた灯夜の隣にはピタッと美女がくっついていて、眉間に皺が寄る。
恭助が目を細めながら
「弦音も嫉妬とかするんだな」と呟く。
「べつに…友だちにはしないけど…アレはちょっと…やだ」
「灯夜が聞いたら喜びそうだけど…確かにアレは…何してるんだろ」
そんな話をしていると、灯夜のグループの子と先生が走って駆け寄ってきて、灯夜にもたれかかっていた美女は先生に引き渡されて行った。
多分俺らに気付いていたんだろう、灯夜は小走りで駆け寄ってきて、美女が階段から落ちたこと。背の高い美女は自分しか支えられなかったことを焦りながら言い訳みたいに捲し立てる。
ひと通り聞いてから

「怪我人を放っておくようなやつ…俺は好きにならないよ」

とサラッと伝えたら急に勢いを失って
「え?今なんて??」
と目を白黒させている。
「やきもち妬いてたけどなー」
揶揄うように言い残して恭助は居なくなったから

「俺の方が、可愛いでしょ?」

とこっそり耳元で囁いたら、固まってる灯夜を残して昼ごはんを食べる場所まで走って逃げた。