僕の声に恋した君に─ can you hear me?─

「来週の遠足、楽しみだなー」
4人でしおりを覗き込みながら昼ごはんを食べる。
「班は誰と一緒?」
くじ引きでランダムに分けられた行動班。たまたま恭助と俺が一緒だけど、あとはバラバラ。

「マジでずるい」何度も言いながら不貞腐れているのは光。 
「しつこい」と嗜める灯夜の班にクラスで1番の美女がいるのが原因。そんな漫才みたいなやりとりにゲラゲラ笑う。

「そんなこと言ったら、俺が1番ずるいもんな」
と揶揄いの声色で、恭助が灯夜の肩を叩く。
「だよなー、俺らのグループは他の女子も男子も比較的仲の良い奴らばっかだし」
と加勢したら、ぷっと吹き出した恭助が「どんまいっ」と言って灯夜の肩をぽんぽんっと2回さっきより力強く叩いていた。
灯夜のグループは、なんか、まとまりなさそうだもんな、可哀想に。


…恭助と同じグループは本当にラッキーだけど、灯夜だったらもっとよかったなんて言えないもんな。



話半分に3人の会話を聞きながら、しおりをぱらっとめくれば「服装は私服で」と書いてあり遊園地の灯夜のモデルみたいな姿を思い出してキュッと喉が詰まる。

何着て行こう…秋服なんてよくわかんないけど灯夜にかっこいいって思ってもらいたいな。
「ねぇ灯夜、何色が好き?」
「何?急に。赤かな」
「何?」「なんでもない」 
赤い服なんて…もってないもんな。
どーしよう。そんこと考えていたら昼休みが終わってしまった。

授業中、恭助にチャットを送る。
「俺、赤い服似合うかな?」
「なんの話?」
「今日夜電話していい?」
「いいよ」

会話が終わったと思ってスマホをポケットにしまおうとしたらもう一度ぶるっと鳴って画面を見れば灯夜から

「何、スマホ見てニヤついてるの?誰?」

と来ていた。パッと灯夜の席を見たら目を逸らされた。
「なんでもない、漫画読んでた」
と変な動物が踊っているスタンプをつけて返信したら、小さく吹き出したのが見えて満足してスマホをポケットにしまい込んだ。

その日の夜恭助に電話して二、三雑談をした後、本題にはいる。
「ねぇ恭助。遠足に何着て行こうか悩んでるんだけど」
「普通で良いんじゃない?」
その普通がわからないから聞いているんだけどな。
「…かっこいいって思われたいじゃん」
「あー。そう言うこと?それで赤い服云々言ってたの?」
「好きな色っていうから」
「好きな色と服は別じゃない?」
真剣な俺とは反対のくすくす笑う声がなんだか悔しい。
「笑わないでよ、ほんとにわかんないんだもん」
「それで俺に相談?本人と買い物でも行けば良いじゃん」
「やだ。驚かせたいじゃん」
「…まぁ良いけど。明日の学校帰りに隣駅のモールに行く?」

恭助の提案で明日ショッピングに行くことになった。友だちと買い物なんて初めてでウキウキしながらも、どんな服が好きかな?と灯夜のことばかり考えてしまい、誰もいない部屋で枕に顔を埋めるしかできなかった。


次の日の昼休み「今日は恭助と出掛けるから一緒に帰らない」と灯夜に報告したら
「は?」
と機嫌悪そうに返された。

「なんで?どこに?何しに?」

と俺を詰めながら、恭助を睨む灯夜にオドオドするしかできない。
「まぁまぁ、用事があるんだよな?」
と間に入ろうとする光の笑顔を押し除けたのは、

まさかの恭助。

「隣駅のモールに買い物に行ってくる」
淡々と伝えてはいるがとても強いオーラが出ている。

「は?なんで?弦音は俺の、なのに。」

そう応戦する灯夜の目は笑っていない。

「…お前の、じゃねーだろ。」

咳払いをしてからもう一度
「俺も弦音も、お互いを友だちだと思ってるよ。ついでに言えばお前のことも友だちだと思ってるけど、信用してもらえないなら、もうお前とは友だちでいられない。」
じっと灯夜を見据えて話終わると、背中を向けて教室を出て行ってしまった。

追いかけようと立ち上がると、光の手が俺の肩を掴んで「弦音はこっち」と席に戻される。目の前には萎れて机に視線を落とす灯夜がいた。

「ねぇ、灯夜…」
「ごめん。俺の、とか言って」
「…うーん、嬉しかったよ。俺、灯夜のこと…大好きだけど…恭助と光も大好きなの」
「…」
「信用してよ。恋人のことも恋人の親友のことも。…自分の親友でもあるでしょ」
こくりと頷く灯夜は普段の様子からは想像できないくらいか弱くて可愛らしい。
「一緒に謝りに行く?」
「俺1人で行ってくる」
「屋上だって」そう言って光から届いたメッセージを見せる。


ついていけばよかった。
仲直りできただろうか…とそわそわしてたら光から
「なんか青春してる笑」ってメッセージと共に2人が笑い合う写真が送られてきた。

凄く写りの良い灯夜に一瞬見惚れてから
「ありがと」と返そうとしたらまた光から
「なんで服選びは俺とじゃないの?俺、服好きなのに」と怒ったウサギのスタンプと共にメッセージが送られてきた。
「光はオシャレ番長すぎる」
と返して画像フォルダの中の光を久しぶりに見る。
水玉のパンツにちょっと変形したデザインの半袖…絶対俺には似合わないもんな。とくすりと笑ってスマホをしまった。



約束通りショッピングモールで買い物をする。
「変なことに巻き込んでごめん」
と謝ったら
「ぜーんぜん。友だちでしょ?俺も言いすぎたし」
とニコッと笑われた。
「…灯夜はこういうのが好きかも」
とイタズラ顔する恭助を信じて服を買って帰った。どんな顔するかな。
早く、灯夜の反応が見たいな。