僕の声に恋した君に─ can you hear me?─

火曜の昼の校内放送から教室に戻ると、昨日騒いでいた女子達が駆け寄ってきた。
「ねぇ、水野くん…続きどうなるの」
「明日のお楽しみ、てことで」
「すごい面白いんだけど、ヒロインの子の声も可愛いね」

勘弁してほしい。
想像以上の反響に、居心地が悪すぎる。

光と恭助を見つけて助けを求めるように駆け寄る。

「よっ、人気者」
「お疲れ様」
からかってくる光と穏やかに労ってくれる恭助に、へにゃっと力が抜けて
「俺もう無理ー。」
と光の背中に寄りかかるように身体を預ける。
ガラッと扉が開いて入ってきた灯夜がそれを見て
「何?ファンサ中?」
と、感情の読めない声で呟いて輪の中に入ってくる。
前髪の奥から覗く瞳が氷のように見えてゾクっとしてしまう。
「ちが…」
反論の隙もなく自分の席に戻ってしまう背中を見送るしかできなくて
よくわからない不安を紛らわすように光の脇腹をくすぐって
「そう、ファンサ!どうだ、嬉しいかっ」と戯れ合う。
「やめろー、過剰サービス禁止っ」
騒ぐ光とくすくす笑う恭助。
視界の端に、ひどく不機嫌そうに外を眺める灯夜が見えた。

授業の後、いつものように一緒に帰ろうと思って身支度をして灯夜の席へ急ぐ。
「かえろっ」
なんで目を合わせてくれないの?
「あー、先帰って。」
と顎先で教室の扉をさす仕草をするから、そちらに目線を送れば、とても可愛らしい女子が俯き加減でこちらを伺っている。


「また?…モテモテだね。待ってるよ」
「いい、先帰って」
…なんで。

いつもなら、ちょっと待ってて、と済ませるのに。
あの子がいいの?

そう思ったら身体が勝手に動いて、灯夜の腕を掴んで
「…やだ」
と止めていた。

行かないで、なんて言えないから…じっと目を見て引き止める。

「…ほんと、ずるい」

ため息のように言いながら俺の手を腕から退ける。
歩き出す前にリュックを俺の渡す。
待っていていいと言うことだろうか。
気怠そうに女の子のところに言って、2、3会話をしてすぐに戻ってきた。

「かえろ」
「いいの?」
「…引き留めたくせに」 

ぶっきらぼうに俺が抱きしめていたリュックを奪うとスタスタと歩き出すから早歩きで追いかけた。