僕の声に恋した君に─ can you hear me?─

翌朝はどんよりとやってくる。
「おはよう…」という言葉を飲み込んで席についた。

自分の席にいるのが嫌で、光の席まで行って何でもない話をして過ごす。いつもよりもわざとらしく明るくなってしまう。

今日は、火曜日。
校内放送の担当の日だ。

藤井は聞いてくれるかな。
それとも、それすら聞きたくないとイヤホンしてすごすのかな。

黒板の文字が、ちっとも頭に入らない。
振り返って、話しかける勇気があればな…。

昼休み、放送室に行く前に空き教室へ向かった。使われていない黒板は、緑が深くて足がすくむ。
真っ白いチョークでごめん、と書いてすぐに消した。
何に対して謝ればいいのかわからなくて胸がキリキリして来る。
「声聞かせてごめんね」
そう書き直して放送室へ向かった。

放送室に着いたら淡々と準備をする。
1人でするこの作業が本当は好きなはずなのに、今日はちっとも楽しくない。

ブースに座りマイクチェック、
「チェック、チェックあーあーあー…」

マイクを通る自分の声と一緒に
「声聞きたくない」
と言った藤井の声が脳内で再生される。

声が震える

喉の奥と鼻の奥が痛くて、これ以上喋ろうとすると多分、もっと震えて歯止めが効かなくなってしまう。

大きくため息をついて

「ごめん、放送変わって」

と後輩にメッセージをして、すぐに放送室から出た。

こんな顔で教室に行きたくない。
だからと言って、藤井と過ごした空き教室にも行けるわけがない。

誰の声も聞こえない場所を探して、屋上へ行く階段に座り込んだ。

微かに聞こえる校内放送の能天気な後輩の声に余計に息苦しさが増す。