橘先生の過保護な再履修



俺は危うくイケメン二人に流されて頷くところだった。

そう。
このふたり。どう考えても、顔面偏差値が異様に高い。
テラス席に座った時から、ふたりの顔の派手さに圧倒されていた。
もちろん、周囲の視線も集まり、俺はなかなかに居心地が悪かった。

山田先輩はやや長めの黒髪に白い肌。
細縁の眼鏡の奥には、切れ長で落ち着いた瞳。
少し黒目がちで視線はどこか鋭く、知性的で優しそうに見える。
なのに、どこかヒール感が漂う不思議な魅力を持つ人だ。
――正直、敵に回したくないタイプ……

対して律くんは見た目からもうイケメンオーラが爆発している。
淡い銀色の髪は、光を含むと柔らかく色を変える。
瞳は涼しげで、薄い色味。
真正面から見れば穏やかで人懐こくさえあるのに、
ふとした瞬間にだけ、相手を試すような光を宿す。
耳元には小さなピアス。

それを見た瞬間、胸の奥がきゅっとした。

(真似して開けたいって言ったら、自分の事棚にあげて、
そんなこと許しません。自分の身体大事にして!って言われたっけ……)

カテキョの時は黒髪だったし、
服もシンプルで落ち着いたものが多かった。
あの頃の面影は薄れて……なんていうか、今は、モデルみたいに見える。

「なに、天音。そんなじっと見て」

「いーや、なんにも。
おふたりとも、すごくモテそうだなって見てただけ」

ふたりは顔を見合わせてすぐ、
「そんなことないよ」と言う。

「俺らなんて全然。なぁ山田」

「そうそう。イケメンなんていっぱいいるしね、橘」

「それに加えて映研って地味だしね~」

「ほら、王道のテニサーとかインカレのがモテるよ?」

「…………」

俺は悟った。
これは嘘をついている。
ってゆーか、このふたり絶対悪巧みコンビだ。
なんで俺なんかに見え透いた嘘をつくのかわからないけど……

「ってかさ、天音も高校時代モテたんじゃない?
俺がカテキョしてる間に十五センチくらい伸びたじゃん。
毎回成長痛辛いって言ってたもんな。今百七十くらいあるか?」

「天音くん、可愛い顔してるもんね。
なんていうか、黒いポメラニアンみたい。
年上にモテそう。こう、守ってあげたくなる感じ」

「いや、黒のトイプードルだな。
天音の髪のふわふわ感はトイプードルだ。
でも、守ってあげたくなるには完全同意」

「それって……褒めてます?
ってか百八十

「褒めてるに決まってるだろ!
高校の時より大人っぽくなったけど、それでも天音は可愛い。天使。」

「え、えぇ~?」

「うわ、強火だな、橘……」