橘先生の過保護な再履修



「……っ」

言われた瞬間、一気に顔が熱くなった。
自分でもわかるくらい、
耳まで赤くなってる気がする。

「……ご、ごめん……」

視線を逸らして、
思わずそう言ってしまう。

「普通に、いつもどおりにしようって思えば思うほど、
なんか……うまくできなくて……」

ぎゅっと、服の裾を握る。

「テスト終わったら、とか、
俺、なんか準備した方がいいのかな、とか、
前にしたキス、思い出したり……とか。
ずっとそんなことばっかり考えてて。
俺、おかしいのかな」

「おかしくない」

顔を上げると、
まっすぐ目が合う。

「俺も、同じだから」

さらっと、でも迷いなく。

「普通にしようとしてたけど、無理だった。
もう、心臓バクバクだよ」

その一言で、胸の奥が少しだけ軽くなる。

「……ほんと?」

「ほんと」

律くんは、小さく笑った。
それから、少しだけ距離を詰めて。

「天音、こっちおいで」

そう言って俺の手を取る。
指先が触れた瞬間、
また、心臓が跳ねた。
いままでで一番手のひらが熱い。

「ゆっくりでいいから」

先にロフトに上って、振り返る律くん。

伸ばされた手に、
少し迷ってから指を絡めた。
俺は、律くんに導かれるまま、
ロフトに上がる。
目の前に布団が見えた瞬間、
全身から熱が吹き出しそうになった。

ふたりして布団に倒れ込む。
一瞬、呼吸だけが近くなる。
それから、
律くんの影が、ゆっくりと俺を覆った。


「……天音。いい?」

俺は言葉にできず、コクっと頷いた。

律くんの指がTシャツに手をかける。
あつい手のひらが、俺の肌の隅々まで触れていく。

「天音、大丈夫?」

律くんはしつこいくらいに確認を怠らない。

そして、深く何度も何度もキスをする。
唇、額、頬、鎖骨、そして、うなじのほくろ……

「……天音、好き」

その言葉を最後に、
俺の思考は甘い痺れの中に沈んでいく。
逃げ場のない腕の中で、俺はもう、抗うことをやめる。
絡めた指先も、重ねた吐息も、
全部が律くんの形に溶けていく。
俺はただ、律くんにすべて身を任せた。