橘先生の過保護な再履修






「ちょ、律くん……んっ」

熱い唇が、うなじの髪に隠れたところに押し当てられる。
自分では見えない、ほくろがあるというその場所に、
きゅっと吸い上げるような感触と、微かな痛みに背中が跳ねた。

「できた」

そういって、律くんはうなじを優しく指先で撫でる。
どこか満足そうでニコニコしている律くんを見ると、
なんだかまんざらでもなくなってくる。

「じゃ、今度は天音がつけて」

「どうやるの……?」

「……うーん。説明難しいな。
やったほうが早いよ。
ほら、ここ。天音とお揃いのところ」

律くんはサイドの髪を耳にかけ、指さした。
もう、俺はどうにでもなれって勢いで
律くんのうなじに飛びついた。
自分がされたことを思い出して、
なんとなくでやってみる。

「で、できた?」

「おぉ――!じゃあ、あとで、鏡みよ」

ほんのりわかる薄ピンクの丸い印。
キスマークひとつで律くんがなんで喜ぶのか、
俺には理解できなかった。
でも――。

(これは、やばい……)

なんていうか、ただのピンクの印。
それだけなのに、俺の中からふつふつと湧いていた
独占欲が満たされていく。
髪をかきあげないと、決して見えることはない。
けれど、律くんと俺のふたりだけが知っている秘密の印。

きれいな感情だけじゃない。
あったかいのも、少し醜いのも、
全部ひっくるめて、好きだ。
名前をつけようとすると逃げていく感情ばかりで、
それでも確かに、胸の奥に居座っている。

たった2週間。
それだけの時間で、
俺はこんなにも多くの「好き」を覚えてしまった。
もう、戻れない気がして――

それが少し、怖くて。
でも、楽しみでもあった。