橘先生の過保護な再履修



俺は、律くんのシャツをぎゅっと掴んだまま、
何度も息を吸って、やっと声を出した。

「……ずっと……好きだった……」

涙が落ちて、言葉が途切れる。

「先生の時も……いなくなってからも……
今も……ずっと……」

顔を上げて、ちゃんと見る。

「俺も、律くんの彼氏になりたい」

俺の言葉を聞いた瞬間、
律くんは、もう一度ぎゅっと俺を抱きしめた。

今度はさっきよりも少しだけ強くて、
ふたりの関係を確かめるみたいな抱き方だった。

やがて、ゆっくりと体が離れる。
律くんは俺の頬を、
両手でそっと包み込んだ。
触れ方がひどく丁寧で、
嫌でも恋人の距離感を実感する。

「……天音」

名前を呼ぶ声が、さっきまでとは違う。
柔らかくて、静かで、少し色っぽくて……

次の瞬間、
唇に、ほんの一瞬だけ触れた。
重ねるというより、
確かめるみたいな、軽いキス。

離れたあと、
律くんは、少しだけ照れたように笑った。
それは今まで一度も見たことのない、
穏やかで優しい笑顔だった。

「これからよろしくね、天音。
今度は恋愛のお勉強しようね」

その一言で、止まっていた俺の時間が動き出した。
教え子でも、先生でもない。
新しいふたりが今、真っ白なページをめくるように始まった。