橘先生の過保護な再履修



あのとき、どうして何も言わずにいなくなったんだろう。
あんなにたくさんのことを教えてくれたのに、
いちばん大事なことだけは、教えてくれなかった。

先生用に買ってもらった椅子も、
気が早い合格祈願のお守りも、もう使っていない。

それでも、机の引き出しには、今もあのノートがある。


それだけを残して、先生は俺の前から消えた――。