学校の王子に告られたんだけど‥?!

翌日、学校を終えて俺は、いつもより急いでいた。
『約束』を思い出した俺は、今もきっと待ち続けてくれる星奈の元に走り出した。

電車を降りてもう通らなくなった、道を駆け抜けていく。
俺の家から少し遠回りしたところにあるその公園まで走っていけば、その姿はすぐに見つけた。

ブランコに座り、錆びた音を響かせながら夕暮れの公園に一人揺れてるその姿が目に入って、ゆっくりと歩いて近づく。

「ようやく、来てくれた」

王子スマイルでも、いつも見ていた純粋な笑みでもなくて、泣きそうになりながらも笑みを浮かべてこちらを見ていた。
その瞬間、抱きしめてしまいたい衝動に駆られて思いっきり抱きしめる。
ぎゅっと力を込めて抱きしめると、星奈もそれに応えるかのように強く抱きしめてくれる。

「ごめん、遅くなった」

「うん、遅すぎ、待ちくたびれたよ」

何処かお互いに震える声で話す。
どうして忘れていられたのだろうか。こんなにも、大切な人のことを、約束を。
星奈は、ずっと覚えててくれて待っててくれたのに。

「言い訳になっちゃうけど、俺昔から人の名前とか顔とか覚えるの苦手でさ‥手紙が来るまでホッシーの存在すら覚えてなかった‥ごめん」

「知ってる。昔からハネくんは、『おい』とか『お前』とかって僕のこと呼んでたからね、ちゃんと名前教えたのに呼んでくれなかったの少し悲しかったんだよ?」

「うっ、ほんとごめん‥」

当時の呼び方について、星奈も覚えていたようで、今思い返しても酷いものだと思った。
改めて反省していると、肩越しに笑い声が聞こえて、肩口は濡れていた。

「それでも‥それでも、ハネくん。羽流くんが僕のヒーローで、初恋で、好きな人だったんだよ」

星奈は、当時のことを語る。
一人ぼっちで家から逃げ続けて、行く場所も居場所も無くなって、いじめられていた時に手を差し伸べてくれたヒーローだったと。

「そんなの当たり前だろ」

「当たり前でもそれが嬉しかったんだよ。あの頃は両親も周りも僕を見てるようで見てなくて‥でも、そんな時に真っ直ぐに僕を見て、僕に手を差し伸べてくれて、受け入れてくれた。羽流くんだけだったよ。そんなヒーローは」

抱きしめていた体をゆっくり離して、顔を見れば目を赤く腫らしながら、笑う星奈の顔だった。

「せっかくの王子の顔が台無しじゃん」

屈んで、袖の裾で涙を拭ってやると何処か不服そうに頬を膨らまして、こちらをジーッと見ている。

「僕は、ずっとたった一人だけの王子だからね?」

そう言葉にすると、拭っていた手を取られて顔を近づけられる。
目を腫らしていると言えど、やはり整った顔立ちに迫られるのは慣れなくて、視線を逸らす。

「ちょ、恥ずい‥」

「えぇー、だって羽流くんは、これから僕との約束果たしてくれるんだよね?」

その言葉にビクリと肩が跳ねる。
そうだ。俺はこれから、こいつのことを奪って全部全部俺のものにして、俺も全部全部、星奈のものになるんだ。
覚悟を決めなければならない。

掴まれていた手は離されていた。
片膝を地面につけて、星奈の片手をとって熱くなる顔を我慢して視線を合わせる。

「俺は、星奈の全部が欲しい。だから、星奈を奪いにきた。好きです、俺のそばにずっといてください」

そう言って、星奈の片手の甲に口付ける。

顔が熱い、心臓がありえないくらい早く脈を打っている。
まさか、初めての告白をこんな形でするとは思えなくて正直頭の中はパニックになってる。
それに、口付けてからの星奈の反応がない。

(もしかして、なんかマズイこと言ったのか俺!)

恐る恐る顔を上げれば、それは見惚れるほど綺麗な笑みを浮かべて、溢れる雫が夕日に反射して綺麗な宝石のように輝いていた。

「嬉しい‥嬉しいんだ‥!やっと、羽流くんが僕を一人ぼっちの世界から奪い去ってくれたことが‥」

ブランコから降りた星奈は、膝をつく俺を抱きしめて、強く強く抱きしめて、涙を流しているのに嬉しそうに笑っている声が聞こえる。
釣られて、俺も涙がポロポロと溢れて笑い声を上げた。

あの日悲しみで包まれた大泣きした日からの約束。
もう、悲しみで泣くことはない。

日が暮れるまで、隣同士ブランコに乗って二人で錆びついた音を響かせて、揺れていた。

「そういえば、約束もう一つあったよね?」

その星奈の言葉にもう一つの約束が思い出される。

「いや、そもそも何で俺がお嫁さんなんだよ!普通逆だろ!」

「それはね〜、僕の方がずっーと羽流くんのことが好きだし、深く愛しているからだよ?僕の初恋だからね」

星奈は、一見意地悪そうに笑っているだけだと思うが、その瞳の奥にはギラついた何かを感じて思わず、身体中にその愛が伝わって来る。

「お、お手柔らかにお願いします‥」

「あはは、それはどうかな〜」