学校の王子に告られたんだけど‥?!

「は?なんで‥?」

思い出さなくていいとは、どういうことだろうか。
それに、この笑みを久しぶりに見て何処か星奈から、距離を取られているようにも感じる。

「だって、昔のことだしさ‥思い出せなくても仕方ないじゃん?僕が我儘言いすぎたね‥」

物分かりのいいような言い方をして、王子スマイルで語って全てを終わりにしようとしている事がわかる。
そして、その笑顔の裏の星奈の悲しみがまだ拭えてないと俺は感じ取った。
頭を撫でていた手を掴んで、こちらに引き寄せると星奈は、俺の予想外の行動に笑顔が崩れて、目を見開いてこちらを見て居た。

「そんなこと言うなよ‥!諦めたみたいに、終わりにすんなよ!」

気づけば、自分でも出したことのない低い声が出ていた。
星奈もただただ驚いているようだった。
その体を引き寄せて久しぶりに、星奈の体温と匂いを感じながらぎゅっと抱きしめる。

「思い出すから、思い出して、ちゃんと俺が出した答えもお前に、星奈に言う‥だから、もう少し時間を頂戴」

懇願するように最後の言葉は、震えていた。
もしこれで、星奈が本当に諦めると言ったら俺はなんて返せばいいのだろうか。
やっと、会えて、こうして話せて、それが嬉しかった。
必死に必死に言葉を紡いで、不器用な言葉で繋ぎ止めるしかできない俺を星奈は、許してくれるだろうか。

すると、星奈の手が俺の背中に回されて弱い力でぎゅっと抱きしめ返される。
肩口に顔を埋められ、ため息を吐かれる。

「羽流くんは、ずるいなぁ‥そんなふうに言われたら僕が待つしかないじゃないか」

星奈も声が震えていて、それでも何処か嬉しそうな声に安心する。
悲しんで泣いてない。それだけで、俺は安心することができた。
体を離して、星奈の顔を見れば王子スマイルではなく、前のように純粋な笑みを浮かべていた。

「仕方ないから待っててあげるよ‥、ただ、僕は待つのが苦手だからなるべく早くね!あと、もう無理して僕を探さなくても良いから」

「でも、そうしたら、また、星奈と会えなくなる‥」

ここ最近ずっと、無理に朝早くに起きようが、居眠りで教師に注意されようが、反省文を書くことになろうが、構わず星奈を探し続けた。
だって、前まで星奈の一方通行だったとは言え毎日のように、会って話していたのだから、それがなくなった今は心に何かが欠けた気分だった。

「僕のことだけ考えてくれるのは嬉しいな、でも、羽流くんは思い出を探して、答えをくれるんでしょ?」

その言葉だけで、全部が伝わってきた。
もし、俺が思い出、約束を思い出せずにいたらもう今後俺たちが関わることがないと言うことだ。
極端すぎるその、強引さはやはり星奈だなと感じる。
もし、思い出せなかったらなんて今考えても仕方なのない事だ。
星奈は、俺の覚悟を見定めてるんだ。

「‥わかった。じゃあ、次に会えるのは俺がちゃんと思い出した時」

「うん‥僕は待ってることにするよ」

そう言って、星奈は俺の横を通り過ぎて行った。
もし、星奈の去っていく姿を見てしまったら覚悟が揺らいでしまう気がして、その場で耐えた。

それからの日々は、言いつけ通りに朝早くに学校に行くことはやめて、いつも通りの日常に戻りつつあった。
おかげで、教師たちからの痛い視線も向けられることもなくなり、反省文を書くことも無くなった。
授業も起きて受けながら、思い出探しを続けていた。

今日はバイトの日で、両親が帰ってくることを店長から聞かされていた。

「え?なんで、店長の方に連絡が先に行くんですか‥」

「えぇ〜だって、私との仲だからね〜!お土産何が良いとか、今度集まろうとか諸々の予定立てないと!」

いや、だからと言って家族の俺より先になんで店長に連絡するんだ、両親よ。
両親は昔から自由奔放という文字がぴったりな二人だった。
仕事も旅行も思い立ったら、その現地まで行って納得がいくまで帰ってこない。
俺たちは昔、祖母や祖父の世話になったり色々でなんとか生活してきたわけだが、流石自由奔放。
帰ってくるのも急すぎる。

(今に始まったことじゃないけど‥)

カップを拭いて、閉店作業の掃除に移ろうとして思い出す。

(そういえば、昔のアルバム!?)

そうだ、前に探していた時に断念した小さい頃のアルバムについてだ。
生まれてから小さい頃のアルバムは、両親が我が子のかわいさを忘れないようにと、両親の手の内にある。

確か、思い違いでなければホッシー、星奈との写真も撮っていた筈だ。
もしかしたら、そこにヒントがあるかもしれない。
バイト中だが、携帯を取り出し母親の方にいつ帰ってくるのか、昔のアルバムの有無をメッセージに記し送信する。

きっと思い出してみせる。
星奈のためだけじゃなくて俺のためにも絶対と心の中で誓い、母親からの連絡を待つのだった。