学校の王子に告られたんだけど‥?!

その日から早く学校に行って、星奈の姿を時間がある限り探した。
また、俺の席で眠っているなんて甘い予想は見事に外れてしまった。
朝早くに学校中を走り回って、授業に参加する時にはもう力尽きている俺がいた。

朝が早いせいか、居眠りも多くなり、教師にも注意される回数が増えに増えて、仕舞いには反省文を書くことになってしまった。

「書けたら職員室までに出すように」

そう言って、生活指導の教師が出て行くと、早々に机に伏して項垂れた。
人生初めての反省文に、何を反省すべきかわからないところ、俺は不良になってしまったのかと、馬鹿なことを考え出す始末。

(いや、反省文ってなんだよ!俺は至って真面目だ!)

目の前の真っ白な紙に訴えても、真っ白な紙は、真っ白な紙のままだ。

(とりあえず、書くしか無いのか‥)

渋々ペンを持って、書き出すも何から書き出せば良いのやら。
ペンをトントンと紙の上で打って、考える。
真っ白な髪を目の前にすると、何を書けば良いのかわからなくなる。
たださえ、言葉で話すのも難しいのに、文章で書くなんて難易度が高すぎるんだ。

「‥手紙もこんな感じなのか‥?」

星奈は、手紙を書く時も、真っ白な紙に何を考えて書いているのだろうか。
昔の思い出に楽しい思いを馳せながら書いているのか。
それとも、未だに全てを思い出せない俺に対して、怒りを込めて書いているのか。

「それとも、悲しんでるのか‥」

星奈の怒ってる姿なんて想像できないななんて思いながら、思いを馳せる。
今、星奈はどうしているのか。
手紙は、来るけど肝心の星奈には会えないし、話せないしで、想像することしかできない。

ただ思うのが、泣いてないと良いなと願うばかりだ。

「とりあえず、反省文か‥」

全くもって進んでいない反省文にため息を吐きながら、ペンをなんとか動かすのに集中した。
あの後試行錯誤しつつ、教師にダメ出しをされを繰り返した。
短文すぎるだとか、反省の気持ちが通じてこないとかダメ出しのオンパレードをくらった。

それを泣く泣く修正して、何回目か忘れる頃にようやくギリギリの承諾をもらい、外が暗くなる頃に帰れるようになった。

「はぁ‥お、終わった‥」

ため息しか出ないこの状況に、俺自身が情けなくて仕方ない。
星奈を探す筈が、まさか人生初の反省文に苦戦してこんな遅くに帰ることになるとは。
おかげで今日は、放課後星奈を探すこともできず何も手掛かりを掴めず仕舞いだった。

電車も心なしか、いつもより混んでいて、退勤ラッシュというやつだろうか。
空いていたら席に座りたかったのにと、吊り革に手をぶら下げて家の最寄り駅まで着くのをジッと待つ。

(気持ち悪くなってきた‥)

流石の普段味わない人混みに酔ってきた。
幸い次の駅で、目的の駅だ。少しずつ動いて早く出れるように扉の前に立つ。
電車が止まり、扉が開いて勢いよく押し出されて近くのベンチに腰掛ける。
吐きそうまでとはいかないが、気持ち悪くて当分は動けそうにないことに、ため息が出る。

「‥ついてなさすぎだろ‥」

そうして、ただ落ち着くのを待って地面を眺めていると、隣に誰かが座った。
正直、今は一人になりたくて別のところに行こうと立ちあがろうとすれば、手を取られる。

「え?何‥?」

振り返れば、気分の悪さなんて何処かにいってしまうくらいに驚いて時間が止まった。
手を取ってそこに居たのは、毎日探しても会えもしなかった星奈だった。

「‥まだ、ここに居て‥」

「は、はい‥」

何処か、視線が落ち着かない様子の星奈に不思議に思いながらも、元の定位置に座る。
お互い、沈黙の中電車のホームのアナウンス、電車の走る音がやけに大きく聞こえる。

「あのさ‥星奈がホッシーなんだろ?」

「なんで、そう思うの?」

何処か意地悪そうな声を久しぶりに聞いて隣を見れば、何処か嬉しそうに笑みを浮かべているのを見た。
それだなのに、それだけのことなのに、何故かとても嬉しかった。
気づけば、瞳から涙が溢れ出して止まらなくて何度も拭っていると、隣から綺麗な指で涙を拭ってくれたことに再び驚く。

「お前がわからない‥」

「懐かしい、よく昔はそう呼んでたよね。僕は名前で呼んでって言ってたのにさ」

星奈は、懐かしむように語った。
昔あったことをただただ、語っていた。

「やっぱ!星奈がホッシー‥!」

言葉を続けようとすると、人差し指を口元に当てられる。
まただ、また、星奈が悲しい顔をしている。さっきまで、楽しそう話していたのに、なんでそんな顔をするんだ。

「まだ、それは教えてあげない。まだ、全部思い出してくれないからね」

「まだって‥?」

「とは言っても、ほぼ思い出してくれてるみたいだけど」

そう言うと、星奈は立ち上がり悲しそうな笑みを浮かべて背を向けた。
慌てて追いかけようとするも、丁度到着した電車から溢れ出る人の波に、星奈を見失ってしまう。

「星奈!」

大きな声で呼びかけてもその姿は、再び見ることはできなかった。