ちゃんと言おう。
決意した俺は、朝早くに樹一との部屋に戻った。
「おはよう」
「二連続外泊かよ」
ぶすくれた樹一が迎えてくれた。
「……あの、俺のこと、もうどうでもいいかもしれないけど、いちおう。
俺は玲がすきだから、つきあえない。ごめん」
真摯に告げた。
樹一の顔が、歪む。
「ふつりあいでも?」
「ふつりあいでも」
「未来を潰してるとか、思わないの?」
刺さった棘を、引っこ抜く。
「俺のために大学以降のランクは落とさせない。
離れても、だいじょうぶだって、信じてる」
言い切った。
……ほんとうは、怖いけど。
ふたりで一緒にこわくなって、ふたりで一緒に乗り越えてゆくから、いいんだ。
「それに俺、がんばるよ。玲にふさわしい人になるために」
そう、中身は磨いてゆける。
『俺は玲の足元にも及ばない』最初から決めつけてあきらめるんじゃなくて、必死で頑張ってみたい。
玲の隣に並べるように。
俺を選んでくれた玲が、はずかしい思いをしないように。
結果はひとつも出なくて、ちっとも届かなかったとしても。それでも必死でがんばることだけは、できるから。
力を尽くす前からあきらめるなんて、玲に最もふさわしくない人に、なりたくない。
「俺、がんばるよ。受験までの一年半、必死で。……ああ、ちがうな」
そう、俺は
「一生、がんばる。玲の隣に並ぶために」
朝のひかりが降りてくる。
まぶしそうに目をほそめた樹一は、うなずいた。
「がんばれ」
ほんのかすかに笑ってくれた。
「……むりやり、ごめん」
ちいさな、ちいさな樹一の声に、うなずく。
「反省したら、他の人にもしないなら、ゆるしてあげよう!」
胸を張って、笑った。
飛行機が、空を翔る。
あんなに重そうな金属の塊が雲を突っ切って天翔るなんて、意味不明で、すごい。仕組みとか聞いても聞いても嘘だろうしか思わない。そんな不思議なものに乗って飛んでる俺、すごい!
「おぉおお!」
離陸すると拍手する白峰高校生が、ちょっとはずかしい。
自分も『おぉお!』拍手しちゃうのに!
「まもちゃん」
シートベルト着用のサインが消えたら、俺の帽子をかぶった玲が、俺の席まで来て肩を叩いてくれた。
今度は空席があったみたいで、同じ飛行機で帰れる。
めちゃくちゃ、うれしい。
「どした?」
首をかしげる俺に、玲はお手洗いを指した。
一緒にトイレ?
幼稚園のときみたいで、ちょっと楽しい。
「よし、親分がついてってあげよう!」
席を立つ俺に、樹一も小野も三森も笑って手をふった。
体育教師のゴンちゃんは、見ないふりで、ぐうぐういびきをかいて寝ていてくれる。やさしい。
「あぶないから」
玲が俺の手を引いてくれる。
ほんとに空を飛んでるのか謎な感じにしっかりしていると思った廊下が、突然揺れた。
「わあ!」
「まもる」
腕をひいて抱きよせてくれる玲が、かっこよすぎる。
「きゃ──!」
「かっこいー♡」
「リアル王子がいる……!」
王子になってる。
飛行機の化粧室は個室になっているので、俺は見守り係だ。
「いってらっしゃい。ここにいるから」
にこにこ手を振ったら、手を引っぱられた。
ふたりで一緒に!?
そ、それは、つきあいはじめた恋人同士には、かなり高度な、あれじゃないかな……!
あわあわする俺に、玲が肩を揺らして笑ってる。
「そっちじゃなくて。ふたりきりになりたかったの」
ぎゅう
抱っこしてくれる。
玲の香りに、玲のぬくもりにくるまれた俺は、熱い頬を、玲の胸にすりつける。
「……俺も」
玲の指に、指をからめる。
見あげる玲のはしばみの瞳が、やさしくて、とろけそうにあまくて、もっと俺を見てほしくて、抱きよせた。
「……れい……」
ささやきが、くちびるに、かさなる。
ちゅ
あまい音をたてて、唇がかさなるたび、からめた指をにぎるたび、ふりつもるきみへの愛が、あふれてく。
「俺、玲にふさわしくなれるように、がんばるから。
必死で、がんばるから。
捨てないで」
おつきあい初日で、すがってしまいました……!
目をまるくした玲が、ぎゅうぎゅう抱きしめてくれる。
「まもちゃんが追いかけてくれるような人になれるように、俺もがんばる」
「玲は、ちょっと手を抜いて!」
切実なお願いに、ふるふる玲は首をふった。
「やだ。まもちゃんに『玲、かっこいー♡ きゅんきゅんしちゃう♡』って思ってほしいもん」
「毎日毎秒思ってるよ!」
「ほんと!?」
ふたりで、笑う。
最愛のきみが、笑ってくれる。
それ以上しあわせなことなんて、なんにもない気がするんだ。
手を繋いで
抱きしめて
キスをして
ふたりで愛を、重ねてゆこうね。
幼なじみ改め、恋人として、よろしくね。
幼なじみは、きっと一生変わらない。
一生恋人でいられるように、がんばるから、覚悟して。
だって世界の誰より俺は玲を
「あいしてる」
