ぱしりケメン

 


「どこ行ってたんだよ!」
「心配したんだぞ!」

 朝食会場に行った俺は、背の高い三森と可愛い小野に、しかられた。

『いやだってクラスメイトに襲われそうになったら逃げるだろ!』

 大声で反論したかったが

『フツメンが何言ってるの?』
『夢でも見た?』
『自意識過剰~』

 鼻で笑われたら、泣いちゃう!

 ので、もごもご口を動かして黙った。

「俺は、謝らないから」

 ふんぞり返る樹一に『謝れ!』叫びかえそうとして、でも自分も玲に、ちゅうしそうになっちゃったしとか、わたわたして、結局

「謝れ」

 しずかに勧告した。

 俺は未遂。しそうになって止まった! = ちょぴっと、わるい。
 樹一は完遂しそうだった = だいぶ、よくない。

 間違わないなんて、誰にもできない。
 だからこそ、間違ったことをしたら、謝れ!

 俺は、無理矢理ちゅうとか凌辱される前にボッコボッコにする。
 親分だから。

 でも、ここでちゃんと反省してくれないと、こんなこと俺にだけじゃなくて、他の男の子にしたら大変じゃないか! 可愛い小野とか!
 だから、しっかり、いけないことだと自覚してください。

 思いきりにらみつけたら、ようやく樹一はうなだれた。


「……だって、俺は、まもるが……」

「俺のことを想ってくれたことは、ありがたいと思うよ」

 樹一の目に希望が燈るのを吹き消すようにつづける。

「だからって無理矢理なんて絶対だめだろう。寝てる間に色々したり、ストーカーみたいな隠し撮りとか強制わいせつとか『すきだったから』で正当化できると思うな」

 ぽこりたい拳を抑えるように握りしめる。

「きらきらした、やさしい気もちが真っ暗な欲望にまみれたら、それはもう真っ暗なんだよ。全然、まったく尊くない」

 俺はしずかに息を吸う。

「ヘドロみたいな感情を向けられても、俺は全然うれしくない。
 俺は、自分のことを無理やり犯そうとする人を、すきになんて、絶対ならない」

 まっすぐに樹一の目を見る。

「俺だけじゃない、他の人にも、絶対するな。俺にも、他の人にも今度しそうになったら容赦なく、ぽこるから」

 硬く硬く握った拳を、突きだした。
 ぎゅっと樹一は唇を噛む。

「……ごめん」

「うん」

 謝ってくれたら、ちょっとすっきりした。
 二度としないように!

「……なにかあった?」

 心配そうに聞いてくれる小野に、ちいさく笑う。

「ちょっとだけ。わるいけど、俺、今日はひとりで回ってもいいかな」
「え、でも……」

 顔を見あわせる小野と三森に、ごめんと手をあげる。

「ちょっと、ひとりになりたくて」

「そうか、わかった。あまり皆から、はぐれないように」

 貫禄のある三森が言ってくれたら、小野も樹一もうなずいてくれた。


 

 修学旅行は班で行動! という決まりがあったから、班にねじ込んでもらったけれど、俺はひとりがすきだ。
 周りにたくさん人がいて表面的には仲よくしてるけど陰で悪口とか本気で無理だし、皆に話を合わせるとか、空気を読むとか、さわぐとか、あんまりすきじゃない。
 ひとりが全く苦にならないどころか、とてもすき。……なのだけれど。
 孤独を愛する親分、泉まもるなのだけれど!

 玲が隣にいてくれないのは、めちゃくちゃさみしい。

 友だちは、ひとりもいなくても構わないけれど。
 玲がいてくれないと、いや。


 はずかしすぎて、ひとりになりたい!