学園祭を境にして、俺の中で何かが変わった。
「俺は、城西高校に入学したいんだ。父さん、許してくれるか」
頭を下げて頼み込むなんて、生まれて初めてのことだ。
親父は、名門校への進学を拒んだことも、フルートを始めたことも、どちらも気に入らなかったらしい。ワイングラスを静かに置いて立ち上がると、低く威圧的な声で言った。
「何を言っているんだ。お前は一流の高校に進学するべきだ。しっかりと自分の将来を見据えなさい」
願いは聞き入れられなかった。でも、俺も退くつもりはなかった。この決心は、火山岩の岩壁よりも硬い。
「父さん。どこの高校に入ろうとも、俺は必ず医学部に進学する。だから心配しないでくれ。ただ、それまでは、やりたいことをやらせてほしい。たった三年間だよ。一生のうちの、ほんの三年だけ。俺にくれないか」
「学問の世界は厳しい。その油断が命取りになると思え!」
その時、俺の味方になってくれたのは有紗だった。あいつは、俺が音楽に惹かれていることに気づいていた。
「お父さん、お兄ちゃんはね、やりたいことが見つかったんだって。やらなきゃいけないことと、やりたいことは違うみたいだよ」
有紗が俺の顔を見上げる。俺は黙ってうなずいた。そして、母も味方に加わってくれた。
「あなた、涼太を信じてあげましょうよ。せっかくの青春時代なんですから、好きなことをさせてあげたいわ」
ふたりの言葉が、親父の心を動かしたのかもしれない。しばらく沈黙のあと、親父は首を縦に振った。ただし、条件付きだった。
「成績は常にトップクラスを維持すること。すべてのテストで学年一桁の順位であること。それができなければ、すぐさま音楽を諦めるんだな」
俺は大きくうなずいた。その条件を死守すると誓った。
千賀貴音さん。俺は、あなたのいる高校に入学して、必ずあなたとフルートを奏でます。だから、俺のことを待っていてください――。
「俺は、城西高校に入学したいんだ。父さん、許してくれるか」
頭を下げて頼み込むなんて、生まれて初めてのことだ。
親父は、名門校への進学を拒んだことも、フルートを始めたことも、どちらも気に入らなかったらしい。ワイングラスを静かに置いて立ち上がると、低く威圧的な声で言った。
「何を言っているんだ。お前は一流の高校に進学するべきだ。しっかりと自分の将来を見据えなさい」
願いは聞き入れられなかった。でも、俺も退くつもりはなかった。この決心は、火山岩の岩壁よりも硬い。
「父さん。どこの高校に入ろうとも、俺は必ず医学部に進学する。だから心配しないでくれ。ただ、それまでは、やりたいことをやらせてほしい。たった三年間だよ。一生のうちの、ほんの三年だけ。俺にくれないか」
「学問の世界は厳しい。その油断が命取りになると思え!」
その時、俺の味方になってくれたのは有紗だった。あいつは、俺が音楽に惹かれていることに気づいていた。
「お父さん、お兄ちゃんはね、やりたいことが見つかったんだって。やらなきゃいけないことと、やりたいことは違うみたいだよ」
有紗が俺の顔を見上げる。俺は黙ってうなずいた。そして、母も味方に加わってくれた。
「あなた、涼太を信じてあげましょうよ。せっかくの青春時代なんですから、好きなことをさせてあげたいわ」
ふたりの言葉が、親父の心を動かしたのかもしれない。しばらく沈黙のあと、親父は首を縦に振った。ただし、条件付きだった。
「成績は常にトップクラスを維持すること。すべてのテストで学年一桁の順位であること。それができなければ、すぐさま音楽を諦めるんだな」
俺は大きくうなずいた。その条件を死守すると誓った。
千賀貴音さん。俺は、あなたのいる高校に入学して、必ずあなたとフルートを奏でます。だから、俺のことを待っていてください――。



