【完結】僕の恋のスイッチを入れたのは、妹の彼氏の兄でした

「陽詩、こっちのマフラーの方がかわいいよ」
「んー……でも、蒼くんがこの前こっちがかわいいって言ってたから、今日はこっちにする」

 この所、陽詩は僕が選んだ服やらバッグやらよりも、「蒼くんがかわいいって言ってくれた方」を選ぶようになった。今日だって八割がた蒼くんの好みに染まっている。

「ねえ、今日のひな、かわいい?」

 それでも最終チェックには僕の意見も聞いてくれるので、まあ、まだいいかと思うようにしている。いつまでもこうして聞いてくれるわけじゃないんだろうな、と最近感じるようになってきたからだ。
 頭のてっぺんから爪先まで、という勢いで蒼くん好みのコーディネイトした陽詩と向かうのは駅前のバスターミナル。そこでデートの待ち合わせをしているからだ。

「太陽!」

 僕らも早めに家を出たのに、川端たちの方がもっと早く待ち合わせ場所に来ていた。そして僕らを見つけると、嬉しそうに駆け寄ってくる。

「待った?」
「ううん、全然。太陽、今日もかわいいね」
「え、あ、う……」

 一緒に出掛けることも、名前で呼ばれることも慣れてきたけれど、こうしてごく当たり前のように僕をかわいいという川端の言葉にはまだ慣れない。恥ずかしいというか照れ臭くて、どう返事をしたらいいかわからなくなってしまう。

「もーう、お兄ちゃんってばぁ。そういう時は、『ありがと』って言うんだよ」

 恋人としての関係は陽詩達の方が半年先輩だからか、早速指導が入ってしまう。実は今日の僕の服を選んでくれたのは陽詩なのだ。
 もちろんそれに蒼くんも川端も気付いているらしく、「流石ひなちゃん、センスいいねぇ」なんてぬかりなく褒めてくる。

「そうよ。お兄ちゃんはひながカッコ良く、かわいく仕上げてあげなきゃなんだから」

 得意げにしている陽詩と、そんな陽詩をさらに褒めている蒼くんの様子を見ながら、僕と川端は顔を見合わせて苦笑する。なんだか僕らの方が見守られているようになりつつあって、おかしくなってくる。

「さて、そろそろ行こうか」

 そんな風に笑い合いながら、僕は川端の手を、陽詩は蒼くんの手を取り、四人でダブルデートの目的地であるあの遊園地へ向かうバスに乗る。
 色づいた街路樹の通りを走るバスの中、僕らは互いの大切で特別な相手と並んで座り、笑い合っていた。
(終)