そうやって何となく落ち着かない日々を過ごしている内に、約束の木曜日になっていた。
母さんはキャリーケースを持っていつもより早めに家を出て出張に向かった。もちろん、くれぐれも川端の家では失礼がないように、と言い置いていくのももちろん忘れていない。
校内で過ごしている分にはいつも通りなのだけれど、なんとなく背後から視線を感じる。気になってちらりと振り返ると、川端がにこりと微笑んで小さく手を振っていたりして、どうリアクションしていいかがわからない。手を振り返すべきなのか、微笑めばいいのか。わからないから、ふいっと顔を逸らしてしまう。
(だって僕らは友達じゃない……はずだし……)
友達ではないとは言え、今日は家に招かれている。これはどう言えばいいのだろうか? ただのクラスメイトの域を超えてやしないか? とは思いつつも、上手く状態を言い表す言葉を僕は知らない。ただわかるのは、単純な友達の枠組みでは収まらないものであるということだ。
(じゃあ僕は川端の特別なんだよね? と誰かに聞かれて、そうだよ! って自信もって答えられる気はしないんだよなぁ……)
川端の特別である自信はない。ないけれど、そうであればいいのに、と願わずにはいられないのはどうしてなんだろう。特別の意味を考えたり、そうであればと思い描いたりするたびに、なんだかそわそわしてしまう。
「――ということで、今回からこの授業では『地域の伝統文化』についてグループワークを行ってもらう」
総合の授業の一環でグループワークを行うことがある。クラスメイト数人でグループを作り、一つのテーマについて色々話し合ったり調べ物をしたりするやつだ。
今年度になってから最初のグループワークで、まずはメンバーと顔合わせを兼ねて役割分担をするんだけれど……
「委員長がいるなら安泰って感じだな」
「わかるー。しかもコミュ強の川端くんも一緒だしね。ウチのグループ最強かも」
そう、何故か今回は川端とグループが一緒なのだ。席順が近いからなのかなんなのかは知らないけれど、なんだか最近やたらと行動が一緒になることが多い気がする。
(いや、べつに一緒のグループになったからどうってわけじゃないよな。授業と陽詩たちの件は全く別物なんだから、特に気にすることはない……よね?)
そんなことを考えつつ、川端の隣に席を合わせると、「よろしく、委員長」と、にこやかに声をかけてくる。ぬかりないなぁ、なんて思ってしまうのは、ちょっと穿った見方をしているだろうか?
グループごとに分かれて役割分担から、グループワーク作業の進め方の話し合いが始まる。さっきの言葉からもなんとなく察していたけれど、案の定僕がグループリーダーになった。
地域の伝統文化がテーマとは言え、ただ現状を調べるのか問題点を調べて解決策を探るのか。はたまた伝統文化の歴史について調べるのか、それを決めないことには話が進まないのでまずはその話し合いだ。
「そもそもこの地域の伝統文化って何があんの? 祭りとか?」
「あたし中学の時に転校してきたからよく知らないんだよねぇ。川端くん達は地元なの?」
僕も両親の離婚後に越してきたので、地元というわけではないため首を横に振る。お祭りはいくつか行われているのは知っているけれど、伝統文化とされているのがどういう物なのかは知らない。
もう一人の男子も転勤族だとかでここが地元ではないらしく、早々にこのグループは詰んでいる感じだ。
どうしたものか……やっぱり足を使って調べるしか? みたいな空気になりかけた時、僕の隣でタブレットをいじっていた川端がひょいと手許のそれを差し出す。そこに映っていたのは学校のすぐ近くの商店街と思われる場所のお祭りの光景だ。
「そこの商店街の祭りが、神社のお祭りと合わさってるんだよ。んで、このお祭りは神社の氏神様のやつで、少なくとも百年近く歴史があって……」
タブレットに映し出されているのは確かに神社のおみこしとか提灯の飾られた通りの写真で、神社では神楽の奉納も行われている、と川端は言う。
思いがけない人物からの思い掛けない情報提供に僕らがポカンとしていると、「川端くん、めっちゃ詳しいね」と誰かが呟く。それに対して川端は少し照れ臭そうに笑う。
「じいちゃん達が生きてた時はこの祭りに酒出してたからね。いまはやってないけど」
「え、川端の家って酒屋さんなの?」
「昔はね。いまは隣町に移ってコンビニしてる」
「じゃあ、お祭りは参加したことある?」
あるよ、と言いながら川端はタブレットに表示されている祭りの写真を指しながら、祭りの話をしていく。祭りの話をきっかけにして、僕らのグループはその地域の祭りの歴史と課題を調べることになった。
グループワークはただグループごとに一つのテーマについて調べるだけじゃなく、最終的にはみんなの前で調べたことをまとめてレポートにして発表することになっている。期日は夏休み前の最後の授業の日で、ちょうどあとひと月ほどある。
「授業時間外でも自分たちで調べる時間を作ってまとめるんだぞ」
「先生ぇ、これって内申点高いっすか?」
「高いかどうかは出来次第ってとこだな」
そんな話を聞きながらこの日の授業は終わったのだけれど、より詳細で読み応えのあるレポートを作成するには、やっぱり自主的に調べないといけないかもしれない。図書館に行くとか、家でもタブレットとかで調べるとか。
でもそれだけじゃ他のグループと変わらないかな、と考えていると、川端が小さな声でこっそり、「委員長」と、手招きする。
「あのさ、今日ウチくるじゃん? その時さ、ちょっとだけ家でレポートの調べ物しない?」
「あ、ああ、いいけど……」
「じゃあ決まりね」そう言って嬉しそうにする川端の表情に、何故かドキリとして、気持ちがふわふわとして頬が熱くなってしまう。べつに、ただ一緒に調べ物をしようという誘いで、それも元々は陽詩たちの約束があっての話なのに。なんだかまるで僕だけの約束が出来て喜んでいるみたいじゃないか。特別かも、なんてひとりで期待して。
(それじゃなくても、なんか最近今日のことを考えたら、気持ちがそわそわしちゃって落ち着かないのに……)
本当のことを言うと、今日の夕食に呼ばれている約束に限らずこの所川端に関わることを考えたりしていると、妙に気持ちが軽いのだ。浮かれているわけではないけれど、前ほど彼をチャラいから、というだけで嫌悪していない自分がいる。「委員長」と呼ばれても、訂正していないのがいい例だろう。
多分きっと、僕らが知り合ったきっかけに、お互いの兄弟が関わっているから、しかも付き合うのなんだの言っているから、気にかかっているだけだろう。
そうに違いないと思っているし、そう理解しているはずなのに、陽詩たちのことを考慮したにしても、僕の気持ちは最近落ち着かない。やたらと川端の視線が気にかかり、目が合って笑いかけられるとドキリとしてしまう。いままで誰に対してもそんなこと感じたこともないのに。
なんか調子狂うな……と思いつつも、いやだと思ってもいないのも事実であることに、少し戸惑っているのもまた本当だ。
(こういうのが特別ってやつなのか?)
何かがいままでと違う気がする。でもそれがはっきりと何なのかわからないし、不愉快でもない。そんな不可思議な状況を改めて感じながら、とうとう約束の放課後を迎えた。
「べつに住所教えてくれたから、地図アプリ見ながら行くのに」
「でもさ、俺んちオートロックマンションで、いちいち鍵開けるのどうのって面倒だから、一緒の方がよくね?」
「それはまあそうか」
「それにさ、蒼たち嬉しそうだし」
約束の今日の放課後、川端の家であるマンションへ向かいながら、僕らより少し前を歩く陽詩と蒼くんの姿を見る。相変わらずのラブラブっぷりで、しっかり手を繋いでいる。楽しそうに歌を唄い、笑い合い、二人ともニコニコしている。
確かに陽詩たちが嬉しそうなのはこちらも幸せな気分にはなるけれど、そもそもの話、僕と川端って二人の交際を阻止する協定を結んでいたんではないだろうか?なんだか最近は阻止ではなくて二人のフォローに回っているような気がするのだけれど。
「あのさ、川端はもう蒼くんと陽詩のことは賛成になったの?」
「いや、全然」
「え、じゃあ何でさっき嬉しそうだからどうとかって言ったんだよ。今日だって僕らを家に呼んでくれたりとか……」
「んー……単純に、蒼が嬉しいんならいいかなと思って。でも、付き合うどうこうは賛成じゃないよ」
「へ? どういうこと?」
「だってさ、ひなちゃんと蒼が付き合うとかってのは、ちょっと待てよ、ってなるけど、ひなちゃんと蒼が友達同士だって考えたら、仲良くしてていいなって思えね?」
川端の言葉に、僕は目からうろこだった。全く考えてもいない角度からの意見だったし、いかに自分が頭ごなしに陽詩と蒼くんのことを決め付けた見方をしていたかに気付かされたからだ。
「そっか、付き合ってるとかって考えるからダメだ! ってなっちゃうけど、友達ならって考えたら、まあ、余計に心配にはならないかも」
「だろ? 実際蒼たちが、どんくらい好きとかそういうのわかってるのかはわかんねえけど、頭ごなしに何でもダメ! っていうのは違うかなって思ってさ」
「なるほど……」
「だからまあ、今日のメシ食おうっていうのは、べつに堅苦しく考えないでよ。ただ友達の家でメシ食う感じに考えといて」
あと、グループワークの調べ物やるってことでさ、と笑いかけてくる川端の言葉と表情が、やけに僕の胸にきらきらと沁み込んでくる。考えもしていなかった角度からの意見が知れたことも大きいのだろうけれど、川端が、僕のことをただ陽詩の保護者としてだけじゃなく見てくれているのを嬉しいと思っているからだ。それは、「陽詩ちゃんのお兄ちゃん」ではなく、「川端のクラスメイトで友達の伊勢太陽」として川端が見てくれているんだと感じられたこともあるんだろう。
ただそれだけのこと。でも、それが何でこんなに嬉しいんだろう。無意識にまた頬が緩んでいく。
「兄ちゃん、インターホン押したい!」
「いいよ。母さんにひなちゃんたち来たよって伝えて」
やがて大きなマンションが見え始め、蒼くんがエントランスのインターホンを操作したいと言い出す。普段はさせてもらえないのか、川端の許可に嬉しそうに笑っている様子に僕まで微笑んでしまう。
そうして僕らは川端家に招かれ、夕食をご馳走になることになった。
母さんはキャリーケースを持っていつもより早めに家を出て出張に向かった。もちろん、くれぐれも川端の家では失礼がないように、と言い置いていくのももちろん忘れていない。
校内で過ごしている分にはいつも通りなのだけれど、なんとなく背後から視線を感じる。気になってちらりと振り返ると、川端がにこりと微笑んで小さく手を振っていたりして、どうリアクションしていいかがわからない。手を振り返すべきなのか、微笑めばいいのか。わからないから、ふいっと顔を逸らしてしまう。
(だって僕らは友達じゃない……はずだし……)
友達ではないとは言え、今日は家に招かれている。これはどう言えばいいのだろうか? ただのクラスメイトの域を超えてやしないか? とは思いつつも、上手く状態を言い表す言葉を僕は知らない。ただわかるのは、単純な友達の枠組みでは収まらないものであるということだ。
(じゃあ僕は川端の特別なんだよね? と誰かに聞かれて、そうだよ! って自信もって答えられる気はしないんだよなぁ……)
川端の特別である自信はない。ないけれど、そうであればいいのに、と願わずにはいられないのはどうしてなんだろう。特別の意味を考えたり、そうであればと思い描いたりするたびに、なんだかそわそわしてしまう。
「――ということで、今回からこの授業では『地域の伝統文化』についてグループワークを行ってもらう」
総合の授業の一環でグループワークを行うことがある。クラスメイト数人でグループを作り、一つのテーマについて色々話し合ったり調べ物をしたりするやつだ。
今年度になってから最初のグループワークで、まずはメンバーと顔合わせを兼ねて役割分担をするんだけれど……
「委員長がいるなら安泰って感じだな」
「わかるー。しかもコミュ強の川端くんも一緒だしね。ウチのグループ最強かも」
そう、何故か今回は川端とグループが一緒なのだ。席順が近いからなのかなんなのかは知らないけれど、なんだか最近やたらと行動が一緒になることが多い気がする。
(いや、べつに一緒のグループになったからどうってわけじゃないよな。授業と陽詩たちの件は全く別物なんだから、特に気にすることはない……よね?)
そんなことを考えつつ、川端の隣に席を合わせると、「よろしく、委員長」と、にこやかに声をかけてくる。ぬかりないなぁ、なんて思ってしまうのは、ちょっと穿った見方をしているだろうか?
グループごとに分かれて役割分担から、グループワーク作業の進め方の話し合いが始まる。さっきの言葉からもなんとなく察していたけれど、案の定僕がグループリーダーになった。
地域の伝統文化がテーマとは言え、ただ現状を調べるのか問題点を調べて解決策を探るのか。はたまた伝統文化の歴史について調べるのか、それを決めないことには話が進まないのでまずはその話し合いだ。
「そもそもこの地域の伝統文化って何があんの? 祭りとか?」
「あたし中学の時に転校してきたからよく知らないんだよねぇ。川端くん達は地元なの?」
僕も両親の離婚後に越してきたので、地元というわけではないため首を横に振る。お祭りはいくつか行われているのは知っているけれど、伝統文化とされているのがどういう物なのかは知らない。
もう一人の男子も転勤族だとかでここが地元ではないらしく、早々にこのグループは詰んでいる感じだ。
どうしたものか……やっぱり足を使って調べるしか? みたいな空気になりかけた時、僕の隣でタブレットをいじっていた川端がひょいと手許のそれを差し出す。そこに映っていたのは学校のすぐ近くの商店街と思われる場所のお祭りの光景だ。
「そこの商店街の祭りが、神社のお祭りと合わさってるんだよ。んで、このお祭りは神社の氏神様のやつで、少なくとも百年近く歴史があって……」
タブレットに映し出されているのは確かに神社のおみこしとか提灯の飾られた通りの写真で、神社では神楽の奉納も行われている、と川端は言う。
思いがけない人物からの思い掛けない情報提供に僕らがポカンとしていると、「川端くん、めっちゃ詳しいね」と誰かが呟く。それに対して川端は少し照れ臭そうに笑う。
「じいちゃん達が生きてた時はこの祭りに酒出してたからね。いまはやってないけど」
「え、川端の家って酒屋さんなの?」
「昔はね。いまは隣町に移ってコンビニしてる」
「じゃあ、お祭りは参加したことある?」
あるよ、と言いながら川端はタブレットに表示されている祭りの写真を指しながら、祭りの話をしていく。祭りの話をきっかけにして、僕らのグループはその地域の祭りの歴史と課題を調べることになった。
グループワークはただグループごとに一つのテーマについて調べるだけじゃなく、最終的にはみんなの前で調べたことをまとめてレポートにして発表することになっている。期日は夏休み前の最後の授業の日で、ちょうどあとひと月ほどある。
「授業時間外でも自分たちで調べる時間を作ってまとめるんだぞ」
「先生ぇ、これって内申点高いっすか?」
「高いかどうかは出来次第ってとこだな」
そんな話を聞きながらこの日の授業は終わったのだけれど、より詳細で読み応えのあるレポートを作成するには、やっぱり自主的に調べないといけないかもしれない。図書館に行くとか、家でもタブレットとかで調べるとか。
でもそれだけじゃ他のグループと変わらないかな、と考えていると、川端が小さな声でこっそり、「委員長」と、手招きする。
「あのさ、今日ウチくるじゃん? その時さ、ちょっとだけ家でレポートの調べ物しない?」
「あ、ああ、いいけど……」
「じゃあ決まりね」そう言って嬉しそうにする川端の表情に、何故かドキリとして、気持ちがふわふわとして頬が熱くなってしまう。べつに、ただ一緒に調べ物をしようという誘いで、それも元々は陽詩たちの約束があっての話なのに。なんだかまるで僕だけの約束が出来て喜んでいるみたいじゃないか。特別かも、なんてひとりで期待して。
(それじゃなくても、なんか最近今日のことを考えたら、気持ちがそわそわしちゃって落ち着かないのに……)
本当のことを言うと、今日の夕食に呼ばれている約束に限らずこの所川端に関わることを考えたりしていると、妙に気持ちが軽いのだ。浮かれているわけではないけれど、前ほど彼をチャラいから、というだけで嫌悪していない自分がいる。「委員長」と呼ばれても、訂正していないのがいい例だろう。
多分きっと、僕らが知り合ったきっかけに、お互いの兄弟が関わっているから、しかも付き合うのなんだの言っているから、気にかかっているだけだろう。
そうに違いないと思っているし、そう理解しているはずなのに、陽詩たちのことを考慮したにしても、僕の気持ちは最近落ち着かない。やたらと川端の視線が気にかかり、目が合って笑いかけられるとドキリとしてしまう。いままで誰に対してもそんなこと感じたこともないのに。
なんか調子狂うな……と思いつつも、いやだと思ってもいないのも事実であることに、少し戸惑っているのもまた本当だ。
(こういうのが特別ってやつなのか?)
何かがいままでと違う気がする。でもそれがはっきりと何なのかわからないし、不愉快でもない。そんな不可思議な状況を改めて感じながら、とうとう約束の放課後を迎えた。
「べつに住所教えてくれたから、地図アプリ見ながら行くのに」
「でもさ、俺んちオートロックマンションで、いちいち鍵開けるのどうのって面倒だから、一緒の方がよくね?」
「それはまあそうか」
「それにさ、蒼たち嬉しそうだし」
約束の今日の放課後、川端の家であるマンションへ向かいながら、僕らより少し前を歩く陽詩と蒼くんの姿を見る。相変わらずのラブラブっぷりで、しっかり手を繋いでいる。楽しそうに歌を唄い、笑い合い、二人ともニコニコしている。
確かに陽詩たちが嬉しそうなのはこちらも幸せな気分にはなるけれど、そもそもの話、僕と川端って二人の交際を阻止する協定を結んでいたんではないだろうか?なんだか最近は阻止ではなくて二人のフォローに回っているような気がするのだけれど。
「あのさ、川端はもう蒼くんと陽詩のことは賛成になったの?」
「いや、全然」
「え、じゃあ何でさっき嬉しそうだからどうとかって言ったんだよ。今日だって僕らを家に呼んでくれたりとか……」
「んー……単純に、蒼が嬉しいんならいいかなと思って。でも、付き合うどうこうは賛成じゃないよ」
「へ? どういうこと?」
「だってさ、ひなちゃんと蒼が付き合うとかってのは、ちょっと待てよ、ってなるけど、ひなちゃんと蒼が友達同士だって考えたら、仲良くしてていいなって思えね?」
川端の言葉に、僕は目からうろこだった。全く考えてもいない角度からの意見だったし、いかに自分が頭ごなしに陽詩と蒼くんのことを決め付けた見方をしていたかに気付かされたからだ。
「そっか、付き合ってるとかって考えるからダメだ! ってなっちゃうけど、友達ならって考えたら、まあ、余計に心配にはならないかも」
「だろ? 実際蒼たちが、どんくらい好きとかそういうのわかってるのかはわかんねえけど、頭ごなしに何でもダメ! っていうのは違うかなって思ってさ」
「なるほど……」
「だからまあ、今日のメシ食おうっていうのは、べつに堅苦しく考えないでよ。ただ友達の家でメシ食う感じに考えといて」
あと、グループワークの調べ物やるってことでさ、と笑いかけてくる川端の言葉と表情が、やけに僕の胸にきらきらと沁み込んでくる。考えもしていなかった角度からの意見が知れたことも大きいのだろうけれど、川端が、僕のことをただ陽詩の保護者としてだけじゃなく見てくれているのを嬉しいと思っているからだ。それは、「陽詩ちゃんのお兄ちゃん」ではなく、「川端のクラスメイトで友達の伊勢太陽」として川端が見てくれているんだと感じられたこともあるんだろう。
ただそれだけのこと。でも、それが何でこんなに嬉しいんだろう。無意識にまた頬が緩んでいく。
「兄ちゃん、インターホン押したい!」
「いいよ。母さんにひなちゃんたち来たよって伝えて」
やがて大きなマンションが見え始め、蒼くんがエントランスのインターホンを操作したいと言い出す。普段はさせてもらえないのか、川端の許可に嬉しそうに笑っている様子に僕まで微笑んでしまう。
そうして僕らは川端家に招かれ、夕食をご馳走になることになった。



