言の葉の夜

2026-01-12
『接吻』

深夜3時、早起きをしなければならなく
アラームを8時半に設定したというのに。

俺の横には、女性がいる。

クイーンベッド、大人が2人寝ようとも
ゆったりして眠れる広さではあるのだが
8対2の割合で俺のスペースは奪われた。

けれど、一緒にいることが幸せであり
心の中にある感情は10の割合で好意。

「おやすみ」と言って、目を瞑る女性に
俺はまだ眠れそうになく、少し冗談ぽく。

「修学旅行みたいなノリで」
「恋バナとかしちゃおうよ」

深夜3時10分、ベッドの上で男女
お互いの恋バナを恥ずかしげもなく
披露していく何とでもない時間だけ
過ぎ去っているような感覚なのだが。

あまりにも恋バナに花を咲かせ
盛り上がりすぎた俺はスマホを
確認して深夜4時だと気付いた。

まだ、カーテンから陽は差し込まない。

唇が乾燥してしまったのだろうか。
女性は暗闇からリップを探し出し
取って塗り始めてから、俺に一言。

「このリップ美味しんだよね」

クスクスと笑ってから俺も一言
「リップ食べる人は君が初めて」
そんな言葉を選んで言ってみた。

「凄く潤った、乾燥は良くないからね!」
女性は唇を尖らせて苺みたいにしている。

本当か確かめたく、女性の唇に触れてみると
指が引っ付いてしまうほどに潤い過ぎていた。

俺が女性の唇を触ってしまったから
女性も俺の唇に遠慮なく触れてくる。

「え、乾燥しすぎじゃない?」と
どこか俺を煽るように言ってくる。

「乾燥してるよ、もうカサカサ」
「まるで砂漠みたいでしょう?」

俺は女性を笑わせたくて
自分の唇を砂漠と例えた。

そして「どこかにオアシスないかな」と
どこかキスを連想させる表現をしてみる。

「あるよ、ここ」と女性は俺の指を掴み
唇に当てて、潤った唇に指は引っ付いた。

あれほどまでに広かったベッドだが
今はもう割合が9対1まで来ている。

目の前には女性の顔がある。
目を瞑っていて可愛らしい。

触れそうなほどの近さにある唇と唇のまま
ついさっきしていた恋バナに話を戻したが
腰が痛くなってちょっと動いただけなのに。

それとそれが触れた。

確かに美味しいそれは、蜂蜜の味だった。
リップの味なのだろうとは思うけれども
どこか女性自身の味みたいな感じもして。

「さっきはごめんね馬鹿にして」
「確かに、美味しいじゃんこれ」

また、それとそれが触れた。

甘ったるい時間だけそこには流れていて
カーテンの隙間から陽が差し込んでくる。

アラームが鳴った。

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