2026-01-16
『アフレコ』
アフレコを好きな女の子と出会った。
音のない動画に想像で言葉を添える。
友達の葬儀。
幼い頃から仲良くしていた友達が
不慮の事故によってこの世を去り
久しぶりに集まった友達らはもう
昔の面影さえ残してはいなかった。
「久しぶりだな」という他愛もない話や
「あいつがこんな早く」という悲しみが
混ざり合っていて居心地が良くない空間。
僕はあまり人と話すのが得意ではなく
葬儀場の隅でひっそりと別れを感じた。
気付いたのだろうか、女の子は僕のもとへ来て
ただ音の流れていないスマホを渡してきてくれ。
「なんか悲しそう、見て」と言って
その動画にアフレコしてくれていた。
動画は亡くなった友達が映っていて
隣に座っている女の子も映っている。
途中から見知らぬ女性も映り込んできて
誰だろうかと思ったのだけれど懐かしく
もう会えない友達に対して思いが溢れた。
アフレコを聞きながらボーっと眺めていると
動画に映っていた女性が目の前に現れたから。
「あれ、動画の、」と戸惑う僕。
「こら、真紀。うるさいじゃないの」と女性は
隣に座っていた女の子を叱って僕のほうを見る。
「智の妻です。この子が娘です」と紹介され
亡くなった友達には家族がいたのだと知った。
「あ、智の友達です」と言ってから
「ご愁傷さまです」と続けて言った。
スマホでは未だ、動画が流れ続けている。
女性は僕の手にあるスマホを見て
「真紀が渡したんですか」と言い
「音、出してなかったですか」と
女の子に聞こえない声量で言った。
だから僕も「音、出してなかったですよ」と
女性にだけ聞こえる声量で答えていたのだが。
「私、この動画の音声を聞いたら泣く気がして」
「一緒に観るけど、音は出さないままなんです」
愛する人と繋がる術がこれしかないと思うと
なかなか、手が出せないものなのかと思った。
「この子、アフレコしてましたよ」
「智のとき『楓、愛してる』って」
僕がそう言うと、女性は泣いた。
隣に座っていた女の子は立ち上がって
泣いている女性を強く抱きしめていた。
まだ幼いから、手をグルっと回せるほど
長くないのに、抱きしめているのを見て。
泣きそうになったから
僕は友達の遺影を見る。
なんか「ありがとう」と言われている気がして
若かりし学生時代のノリで眉毛をグッと上げた。
グッと上げたせいだろうか。
目が開いて涙が1粒零れた。
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『アフレコ』
アフレコを好きな女の子と出会った。
音のない動画に想像で言葉を添える。
友達の葬儀。
幼い頃から仲良くしていた友達が
不慮の事故によってこの世を去り
久しぶりに集まった友達らはもう
昔の面影さえ残してはいなかった。
「久しぶりだな」という他愛もない話や
「あいつがこんな早く」という悲しみが
混ざり合っていて居心地が良くない空間。
僕はあまり人と話すのが得意ではなく
葬儀場の隅でひっそりと別れを感じた。
気付いたのだろうか、女の子は僕のもとへ来て
ただ音の流れていないスマホを渡してきてくれ。
「なんか悲しそう、見て」と言って
その動画にアフレコしてくれていた。
動画は亡くなった友達が映っていて
隣に座っている女の子も映っている。
途中から見知らぬ女性も映り込んできて
誰だろうかと思ったのだけれど懐かしく
もう会えない友達に対して思いが溢れた。
アフレコを聞きながらボーっと眺めていると
動画に映っていた女性が目の前に現れたから。
「あれ、動画の、」と戸惑う僕。
「こら、真紀。うるさいじゃないの」と女性は
隣に座っていた女の子を叱って僕のほうを見る。
「智の妻です。この子が娘です」と紹介され
亡くなった友達には家族がいたのだと知った。
「あ、智の友達です」と言ってから
「ご愁傷さまです」と続けて言った。
スマホでは未だ、動画が流れ続けている。
女性は僕の手にあるスマホを見て
「真紀が渡したんですか」と言い
「音、出してなかったですか」と
女の子に聞こえない声量で言った。
だから僕も「音、出してなかったですよ」と
女性にだけ聞こえる声量で答えていたのだが。
「私、この動画の音声を聞いたら泣く気がして」
「一緒に観るけど、音は出さないままなんです」
愛する人と繋がる術がこれしかないと思うと
なかなか、手が出せないものなのかと思った。
「この子、アフレコしてましたよ」
「智のとき『楓、愛してる』って」
僕がそう言うと、女性は泣いた。
隣に座っていた女の子は立ち上がって
泣いている女性を強く抱きしめていた。
まだ幼いから、手をグルっと回せるほど
長くないのに、抱きしめているのを見て。
泣きそうになったから
僕は友達の遺影を見る。
なんか「ありがとう」と言われている気がして
若かりし学生時代のノリで眉毛をグッと上げた。
グッと上げたせいだろうか。
目が開いて涙が1粒零れた。
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