2026-01-17
『人が呼びたがるもの』
人を愛することが物凄く怖い。
相手は私のことを愛してくれていて
あとは私が愛してあげれば付き合い
様々な思い出が出来てゆくのだけど。
数年前のこと。
私は心底愛する人を、亡くした。
涙も枯れてしまうほどに泣いた。
今でも夢には出てきてくれるし
幻想みたいに駅のホームの隅で
佇んでいるのを見たこともある。
話しかけようと思って駅のホームを回り
いざ愛する人がいた場所へと行くのだが
もういなくて、ただ心に悲しさが残った。
愛する人と共に暮らしていた頃は
「表情豊かで素敵だね」と言われ
「えへへ」と笑っていたのだけど。
愛する人が先に旅立ってしまってからは
「表情に出しなよ、もっと」と友人から
言われてしまうほどに感情を失っていた。
久しぶりに私のことを愛してくれる人と
出会えたというのにもう、愛することは。
怖くてできそうにない。
1つ年下で可愛らしい子は
私に犬みたいな表情を見せ
愛を素直に伝えてきてくれ。
「気持ちの整理がついたらでいいです」
「僕はそのときまで待っていられます」
きっと待っていられるほどの長さではなく
飽き飽きするほどの長さだと思うけれども。
「ありがとう、そう言ってくれて嬉しい」と
答えを濁したまま、その子との愛も終わった。
始まることのない愛の終わりは
音もないほどに呆気ないのだと
この子を通じて知ることができ。
余計に、亡くなった愛する人への思いが
成仏することなく大きくなってゆくまま。
一緒に行った観光名所で撮った写真を
1人、夜、ベッドの上で眺めてみたり。
愛する人が渡してくれた花束の写真を
1人、夜、パソコンで見返してみたり。
まだ、初々しい頃の会話が残る履歴を
1人、夜、懐かし気に指でなぞったり。
愛する人が隣にいないまま迎える朝が
これほどまでに質素で面白みに欠けて
起きる気力すら湧かないのは果たして
どう説明をつければいいのだろうかと。
人はそれを、愛、と呼びたがる。
その結論に至る頃には私たちの元へ
朝という光が訪れてくるはずだから。
懐かし気になぞったスマホを枕元に置き
愛する人と一緒に寝たベッドで目を瞑る。
カーテンの隙間からは朝陽が差し込んでいて
けれどカーテンを開けることなく私は眠った。
愛する人と唯一会える場所へ
時間なんて関係なく行くため。
どこか「おかえり」と声が聞こえる気がした。
その声は愛する人のものに似ていて私はただ
「ただいま」とあの頃のように微笑んでいた。
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『人が呼びたがるもの』
人を愛することが物凄く怖い。
相手は私のことを愛してくれていて
あとは私が愛してあげれば付き合い
様々な思い出が出来てゆくのだけど。
数年前のこと。
私は心底愛する人を、亡くした。
涙も枯れてしまうほどに泣いた。
今でも夢には出てきてくれるし
幻想みたいに駅のホームの隅で
佇んでいるのを見たこともある。
話しかけようと思って駅のホームを回り
いざ愛する人がいた場所へと行くのだが
もういなくて、ただ心に悲しさが残った。
愛する人と共に暮らしていた頃は
「表情豊かで素敵だね」と言われ
「えへへ」と笑っていたのだけど。
愛する人が先に旅立ってしまってからは
「表情に出しなよ、もっと」と友人から
言われてしまうほどに感情を失っていた。
久しぶりに私のことを愛してくれる人と
出会えたというのにもう、愛することは。
怖くてできそうにない。
1つ年下で可愛らしい子は
私に犬みたいな表情を見せ
愛を素直に伝えてきてくれ。
「気持ちの整理がついたらでいいです」
「僕はそのときまで待っていられます」
きっと待っていられるほどの長さではなく
飽き飽きするほどの長さだと思うけれども。
「ありがとう、そう言ってくれて嬉しい」と
答えを濁したまま、その子との愛も終わった。
始まることのない愛の終わりは
音もないほどに呆気ないのだと
この子を通じて知ることができ。
余計に、亡くなった愛する人への思いが
成仏することなく大きくなってゆくまま。
一緒に行った観光名所で撮った写真を
1人、夜、ベッドの上で眺めてみたり。
愛する人が渡してくれた花束の写真を
1人、夜、パソコンで見返してみたり。
まだ、初々しい頃の会話が残る履歴を
1人、夜、懐かし気に指でなぞったり。
愛する人が隣にいないまま迎える朝が
これほどまでに質素で面白みに欠けて
起きる気力すら湧かないのは果たして
どう説明をつければいいのだろうかと。
人はそれを、愛、と呼びたがる。
その結論に至る頃には私たちの元へ
朝という光が訪れてくるはずだから。
懐かし気になぞったスマホを枕元に置き
愛する人と一緒に寝たベッドで目を瞑る。
カーテンの隙間からは朝陽が差し込んでいて
けれどカーテンを開けることなく私は眠った。
愛する人と唯一会える場所へ
時間なんて関係なく行くため。
どこか「おかえり」と声が聞こえる気がした。
その声は愛する人のものに似ていて私はただ
「ただいま」とあの頃のように微笑んでいた。
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