言の葉の夜

2026-01-01
『あけおめ』

「マジで俺の友達の中で1番の仲で」
「親友でかけがえのない存在だから」
「これからも沢山仲良くしてくれよ」

0時、親友から連絡が届いた。

毎年、きっかり0時に連絡してくれて
きっと僕のことを大事に思ってくれて
冒頭に書かれている言葉だけではなく
画面が埋まるほどの文が送られてきた。

文末には「今年もよろしくお願いします」と
社会人らしい言葉も添えられていて格好良い。

会っているときは照れてしまうから
こういう機会に本音を言い合うのは
まるで付き合いたての恋人らみたく
なんだか、こちらまで照れてしまう。

どう返信しようか、迷う。

文頭に「あけおめ」と冗談めかしく書き
文末に「ことよろ」と締めっぽく書いた。

「お前が嬉しいことは僕も嬉しいし」
「お前が悲しいことは僕も悲しいよ」

「頼れ、お前には僕しかいない」
「僕にも、お前しかいないから」

「親友より深い関係だよ、僕らは」
「引き続き、仲良くしてくだされ」

文中には格好つけた文字を紡いでみた。

数分後、親友から「心の友よ」と返信。
「ジャイアンで草」と僕は返してみる。

「たしかし」という親友の言葉に僕は
リアクションを押して終わらせたけど
気軽に話せる人がいるって幸せだなと
親友を通じて新年早々学ばされていた。

去年、出会った人からも連絡が届いた。
「あけおめ~」というスタンプ1つが。

親友の長ったらしい文に比べれば
スタンプ1つがどうも残酷に思え
僕もスタンプ1つ送り返していた。

愛を感じない。

あともう1人、久しく話していなかった人が
0時半を過ぎた頃に新年を祝う連絡をくれた。

その文の最後に「結婚したよ」と書かれていて
ウエディングドレスを着た綺麗な女性の写真が
添付されていて、過去のことなのに悲しかった。

好きだった人、もう忘れていたのに。

高校生の頃、唯一僕に優しくしてくれ
たまに遊びに行ってくれた女性だった。

その頃も可愛くて綺麗で素敵だったけれど
写真に写る女性は今までで1番綺麗だった。

「あけおめ、結婚おめでと」とだけ返し
僕は寝ようかと思ってベッドに向かった。

その前にトイレへ行こうと思い
少し長い廊下を歩くのだけれど
直置きしていたルンバに躓いた。

新年、僕が初めに発した言葉が
「いてっ」だったことが未だに
納得できないが今年は始まった。

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