2026-01-27
『涙が赤く見えた』
私は深夜の散歩が好きで
どこまでも行くのだけど
もうやめよう、と思った。
つい先日、いつものように散歩をし
ポッケに入れていたフリスクを食べ
イヤホンからは音楽が流れている中。
見ず知らずの場所へと踏み込んでしまった。
散歩の醍醐味だから変には思わず
ズカズカと歩を進めてみたのだが
そこが墓地だと知ったのはまだ先。
深夜ということもあって人がいなく
空気が澄んでいて星が綺麗に見えた。
写真を撮って好きな人に送って
スマホをポッケにしまったとき。
少し遠くのほう、目を凝らせば見える距離に
家族連れが何かをしている場面に出くわした。
父、息子、娘、という構成だろうか。
母がいないことがどこか引っかかる。
家族連れにバレないように遠回りをして
別の散歩道を探そうかと思ったのだけど
気付けば一本道しか目の前にはなかった。
引き返せばいいだけの話なのに
後ろを振り向くことがなんだか
少し怖くなっている自分がいる。
真っ直ぐ進めば、あの家族連れにバレる。
「こんばんは」とでも言って逃れようか。
歩を進める速度を緩めて
音楽の音量は少し上げた。
近付く。
父らしき人が右手に花束を持っていて
息子と娘は目から涙を溢れ出していた。
涙の色だなんて透明に決まっているのに
深夜、色を区別できない私は赤に感じる。
血か、と危うい想像が過ぎる。
私に気付いた幼い息子だけが
「こんばんは」と言うだけで
何もしてくることはなかった。
前から聞こえていた足音が
後ろへと遠ざかっていく中。
私の周りがお墓だらけなことに気付いた。
家族に気を取られて気付けなかっただけ。
家族連れとすれ違った私は少し気が緩み
イヤホンから流れる音楽の音量を下げた。
ザーザーと雑木林が擦れ合い
音を立てているのが聞こえる。
私は早くこの墓地を出ようと思って
ポッケに入れていたフリスクを食べ
早足になりながら街の光へと進んだ。
が、後ろのほうからタッタと
子供の走る音が聞こえてくる。
振り向くことはできなかったが
きっと家族連れの息子だろうか。
私の腰辺りに抱きついたその子は
「お姉ちゃん、花あげる」と言い
父が持っていた花束を持ってきた。
「え、私にくれるの」と言おうと思ったが
父が「誰に話しかけてるの」と息子に言う。
涙が赤く見えた理由に気付いた。
私の充血した目が全ての原因だ。
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『涙が赤く見えた』
私は深夜の散歩が好きで
どこまでも行くのだけど
もうやめよう、と思った。
つい先日、いつものように散歩をし
ポッケに入れていたフリスクを食べ
イヤホンからは音楽が流れている中。
見ず知らずの場所へと踏み込んでしまった。
散歩の醍醐味だから変には思わず
ズカズカと歩を進めてみたのだが
そこが墓地だと知ったのはまだ先。
深夜ということもあって人がいなく
空気が澄んでいて星が綺麗に見えた。
写真を撮って好きな人に送って
スマホをポッケにしまったとき。
少し遠くのほう、目を凝らせば見える距離に
家族連れが何かをしている場面に出くわした。
父、息子、娘、という構成だろうか。
母がいないことがどこか引っかかる。
家族連れにバレないように遠回りをして
別の散歩道を探そうかと思ったのだけど
気付けば一本道しか目の前にはなかった。
引き返せばいいだけの話なのに
後ろを振り向くことがなんだか
少し怖くなっている自分がいる。
真っ直ぐ進めば、あの家族連れにバレる。
「こんばんは」とでも言って逃れようか。
歩を進める速度を緩めて
音楽の音量は少し上げた。
近付く。
父らしき人が右手に花束を持っていて
息子と娘は目から涙を溢れ出していた。
涙の色だなんて透明に決まっているのに
深夜、色を区別できない私は赤に感じる。
血か、と危うい想像が過ぎる。
私に気付いた幼い息子だけが
「こんばんは」と言うだけで
何もしてくることはなかった。
前から聞こえていた足音が
後ろへと遠ざかっていく中。
私の周りがお墓だらけなことに気付いた。
家族に気を取られて気付けなかっただけ。
家族連れとすれ違った私は少し気が緩み
イヤホンから流れる音楽の音量を下げた。
ザーザーと雑木林が擦れ合い
音を立てているのが聞こえる。
私は早くこの墓地を出ようと思って
ポッケに入れていたフリスクを食べ
早足になりながら街の光へと進んだ。
が、後ろのほうからタッタと
子供の走る音が聞こえてくる。
振り向くことはできなかったが
きっと家族連れの息子だろうか。
私の腰辺りに抱きついたその子は
「お姉ちゃん、花あげる」と言い
父が持っていた花束を持ってきた。
「え、私にくれるの」と言おうと思ったが
父が「誰に話しかけてるの」と息子に言う。
涙が赤く見えた理由に気付いた。
私の充血した目が全ての原因だ。
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