言の葉の夜

2026-01-06
『残った冬』

見覚えのない動画がスマホに残っている。
再生すると、一瞬で当時に引き戻される。

昨夜、友達との電話を切った後
一緒に撮った写真を見返したく
カメラロールをバーッと見ると
見覚えのない動画が残されてて。

真っ暗な部屋で、その動画を僕は
躊躇うことなく再生してしまった。

「残念、動画だよ」と僕の声が聞こえ
女性に雪が降り注いでいる動画だった。

幾つか前の雪が降った年のこと
僕は付き合っている彼女がいて
絶対に楽しいと思ってお出かけ。

運転は少し怖かった記憶があって
でも彼女が助手席で歌ってくれて
なんやかんやで幸せだったあの頃。

雪が積もっている場所へと行き
マフラーと手袋を着けた彼女は
真っ先にその雪にダイブをした。

小柄だった彼女の跡がそこにできたけれど
僕がダイブすると、それは消えてしまった。

「やめてよ~」が、彼女の口癖だった。
思えば、僕もそれが口癖になっている。

未だ降り注ぐ雪に見惚れている彼女は
見上げて「わぁ、綺麗」と呟いていた。

僕がスマホを彼女に向けて
「撮るよ~」と言ったとき。

あまりの可愛らしさに写真では勿体なく
僕は動画に切り替えて彼女を映していた。

「私だって撮るんだから」と言い
彼女もスマホで僕を撮ってくれて
そのときの僕はきっと笑顔だった。

どうしてか分からないけれど
過去を振り返ると感情だけは
一瞬で思い出すことができる。

幸せだった、真っ白な雪に包まれてて
冬、女の子が可愛くなってしまう季節。

だだっ広い雪原に僕と彼女2人きり
「夢みたいだね~」と言ったことを
動画を見返しながら思い出していた。

その動画を何度も見返した後
画面をスクロールしてみると
ツーショットが残されていて。

もう取り戻せぬ幸せが目に入り
胸に刺さった棘が痛くて泣いた。

もう時刻は午前4時を回っていて
今から寝るには、少しばかり遅い。

目から溢れ出したものを拭い
ベッドから立ち上がったまま
いっとき、何もできなかった。

最寄りのコンビニへと歩を進め
カプリコだけ掴んでレジに行く。

「お願いします」とカプリコをレジに置き
ピッとされるそれを眺めながら会計をした。

「大丈夫ですか、泣いてます?!」と
店員さんに僕の涙を見抜かれてしまい
「泣いてます、あはは」とだけ言って
カプリコを手に取ってコンビニを出た。

あの頃みたいな雪ではなかったけれども
ポツポツと雪が僕の頭に降り注いでくる。

元気にしているなら、それでいいけれど
ふと、彼女が何をしているか気になった。

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