言の葉の夜

2026-01-07
『揺れた心電図』

いずれ心電図が水平線になるのだから
それまでは愛し合って生きてこう、と
約束していた人との遠距離恋愛の小話。

私は東京都に住んでいて
彼は熊本県に住んでいて
なかなか会えない遠距離。

久しぶりに彼の仕事が落ち着いたらしく
京都に旅行へ行こうということになった。

大阪国際空港を待ち合わせ場所とし
それから一緒にバスで京都へ向かう。

もう想像するだけで楽しくって
「早く会いたいね」と送信した。

彼はもう機内モードにしていて
きっとこの連絡は届かないけど
同じことを思っている気がする。

私も機内モードにして
ダウンロードした曲を
再生して眠りについた。

夢の中でも彼は出てきてくれ
一足先に京都旅行を楽しんだ。

夢の中だからどこへ行くにも一瞬で
清水寺や伏見稲荷大社や金閣寺など
これから巡るところを巡っていった。

幸福に満ちた夢は、飛行機が着陸するときの
ドン、という衝撃によって一瞬で覚めていき。

現実に引き戻されたのだが
現実も幸福に満ちているし
どちらにせよ、幸福のまま。

飛行機が離陸する前に彼へ送った
「早く会いたいね」という連絡は
未だ既読すら付いていなくて不安。

再生していた曲は流れ続けていて
彼がお勧めしてくれた曲が流れる。

ちゃんと到着できるのだろうか、と
飛行機の時刻が表示されたパネルを
見ながら彼の乗った飛行機を探した。

数時間の遅延と書かれていた。

最悪の事態ではないと分かり
どこか不安だった思いは晴れ
到着ロビーのところに向かう。

まだかな、まだかなと待ちつつ
前に会ったときの写真を見返し
流石に立つのは疲れてしまった。

近くの椅子に腰を下ろして
「ここいる」と写真を撮り
まだ届かない彼に送信した。

少し飛行機の移動に疲れてしまい
休むつもりで俯いて、目を閉じる。

未だ、鳴りやまない曲が
居心地の良さを私に与え。

「おーい」という声と共に
体を揺さぶられて目覚めた。

目の前には会いたかった彼がいて
私の心電図は、異常なほど揺れた。

「遅くなってごめんね」と
彼は悪くないのに謝るから
「なら、抱きしめてよ」と
私は意地悪っぽく言ったが。

すぐに抱きしめられた。

「会いたかった」という言葉も添えられ
「会いたかったよ」と私も素直に言った。

彼の心電図もきっと、大きく揺れている。
そんな恋を幾つも集めていきたい、彼と。

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