言の葉の夜

2026-01-30
『彼女の話を少し』

「彼女ができました」

そんな連絡が深夜に届いた。
数カ月前に失恋をした親友。

当時は失恋の傷が深そうで
会いに行ってまで癒したが
また新たに彼女ができたと。

「おめでとう」

僕は取り繕った文字を送り
スマホを枕元に置いてから
「アレクサ、曲かけて」と
話しかけて部屋に曲を流し。

真っ暗になった部屋の天井を
ただじっと見つめているだけ。

親友の喜びは僕の喜びでもあって
僕の喜びは親友の喜びでもあるが
何処か月の満ち欠けみたいな感覚。

上手に喜べない瞬間があるならば
上手に喜べる瞬間もあるみたいな。

ピコンと枕元に置いていた
スマホが音を鳴らしている。

「また暇なときにでも遊ぼ」

親友からの何気ない誘いで
「暇なときな」と返信した。

間髪入れずに「お前、暇だろ笑」と
冗談っぽく送られてきたそれに対し
何も返信をすることはなく、置いた。

齟齬が生じているのは分かっていたが
それを説明するには少し面倒くさくて。

僕は彼女ができた親友の時間を奪いたくなく
「暇なときな」とだけ文字を紡いで送ったが。

親友は「僕が暇なときな」と解釈をして
冗談っぽく送ってきてくれたのだろうと。

全て、僕が悪い。
そう、全て僕が。

いつも伝えきれないままで
僕の本音は隠れ切っている。

10年ほどの仲だというのに
まだ、尽きない悩みがあって
果たしてそれを誰に言えれば
僕の心は軽くなるのだろうか。

彼女。

親友にできた彼女と同じく
僕にも彼女がいれば違うか。

真っ暗な天井を見つめているだけだが
様々な感情が胸の中で混ざって苦しい。

ピコンと枕元に置いていた
スマホがまた音を鳴らした。

彼女の後ろ姿を撮ったもので
「彼女」と文字が添えられて
そこに対し、僕は愛を感じる。

既読だけ付けて、置いた。

けれど、着信音が部屋に響いて
すぐに取って通話をすることに。

「既読無視は寂しいよ~」と
何も言わない僕に言ってくる。

「ふっ」とお得意の失笑をかまし
「羨ましいな」とだけ僕は言った。

それからの会話の殆どが
彼女のことばかりで多分
嬉しかったんだと察する。

「うんうん」と話を聞いていると
「それでさ」と尽きない話が出て
終始「羨ましい」と言いまくった。

通話の終わりは呆気なく
「また遊ぼうな」と一言。

通話の途切れる音が部屋に響き
幸福ではない僕に引き戻された。

スマホの電源を切る。

未だ、アレクサから流した曲は
ループ再生で流れ続けているが。

僕は眠りについた。

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