ビートボックス!

正門を出て繁華街の方へ行くと、坂本も一緒にやってきた。

「坂本の家もこっち?」
「うん」
「俺も!郵便局の裏に住んでる」
「近い。市営住宅わかるか」駅の近くに古い平屋の一戸建てが集まっている一角があった。
「わかるよ」
「一番奥の通りから二軒目が俺の家。親父と二人暮らし」
「うちもママと……じゃなかった、母親と二人暮らし。俺も帰宅部」
中学では部活が盛んで、帰宅部はあまりいない。

「上戸って合唱部じゃねえの?去年の合唱コンで一人で歌ってたよな?」
「あれは、先生がソロパートは全員参加オーディションだって言って、やる羽目になっただけ」去年の課題曲はアメージング・グレースだ。頭にこびりつくくらい歌わされた。
アメージング・グレースをハミングで歌いながらリズムを刻む。
「歌いながらも出来んの?」
「ハミングビート。鼻歌でメロディをやって、同時に口ではビートボックスをやる」
坂本はすぐに真似してやってみて、それなりに成功した。一緒にやり、ハモり、フィストバンプする。
「坂本できるじゃん!俺とビートボックスやろう!スマホが返ってくるまででいいから」
「一週間ビートボックスに付き合えば、俺のせいでスマホ取り上げになったこと、ナシにしてくれる?」坂本の垂れ目が僕を見下ろして、目が合い、思わず笑った。
「いいよ。無かった事にする。俺のことは響って呼んで」