離れでの二人の夜は実に幸せだった。
これ以上の幸せを望むとバチが当たってしまう。
そう思ってしまうほど、伊織の人生において最高の時間だった。
甘く激しい時間を過ごして眠ってしまった愛しい悠真を腕の中に閉じ込めながら深い眠りについた。
その夜、夢に久しぶりにあの子が現れた。ここ数年あの子の姿を見ることはほとんどなかった。
久々に現れた彼は後ろ向きで、顔を見せてくれない。だが後ろ姿で察しがついた。
――君はもしかして……
いつもは黙って姿を見守るだけだったが、初めて夢の中であの子に問いかけた。
その瞬間、振り向いた彼はついさっき身体の奥深くまで繋がって愛を感じ合った人。
生まれた時から、ずっと伊織の心の中にいて成長と共に感情を乱してきたのはやはり悠真だったのだ。
悠真と初めて目があった時、似ていると思ったのは間違いではなかった。
伊織の心を揺さぶるのは、生まれてからこれまで悠真ただ一人だったということだ。
――やっと、会えた……
そう告げた瞬間、夢の中の悠真は嬉しそうに笑った。
腕の中にいた悠真が身動ぎ、伊織も一緒に目を覚ました。
あの夢は伊織しか見ていないだろう。だが、この上ない幸せな気持ちに包まれていた。
今、伊織たちは裸で抱き合っている。これを知った時の悠真の反応が知りたくてそのまま寝たフリを続ける。
「っ、えっ? なんで、裸??」
悠真の戸惑う声が聞こえた。そんな焦る声すら愛おしい。
「う、うーん」
わざと声を上げてみると、悠真はハッとして口を押さえた。きっと伊織を起こさないように気遣ったのだろう。
悠真の視線を感じるが、ここでバレるわけにはいかない。そのまま静かに寝たフリを続ける。
「はぁーーっ」
大きなため息が聞こえる。
もしかしてこうなったことを後悔しているのではないか?
そんな恐ろしい思いが一瞬よぎったが、昨夜の悠真の様子を思い出せばそんなことは絶対にないと言い切れる。
だとすればさっきのため息はなんだ?
緊張しながら悠真の視線を浴び続けていると、
「こんなに素敵な人が私の恋人だなんて……夢じゃないのかな」
と恍惚とした表情を向け、悠真の細くて長い指が伊織の頬を撫でる。
そんな可愛いことをされて我慢などできるわけがない。
「もう、悠真は朝からなんと可愛いことを言ってくれるんですか」
「い、伊織さん……起きてたんですか?」
「悠真が可愛くて起きてしまったんですよ」
「可愛いだなんて、そんな……」
「こらこら、私の愛しい恋人を貶すのは悠真でも許しませんよ」
「ひゃ――っん」
お仕置きとばかりに悠真の可愛らしい小さな剥き出しの尻を優しく撫でる。昨夜を彷彿とさせるような甘い声をあげる。
「悠真の肌は本当に吸い付くように滑らかで気持ちがいい」
「そんな……あ、あの……なんで私たち裸なんですか?」
「理由を聞きたいですか?」
意味深な笑みを見せると察しのいい彼はすぐに理解したようだ。
「えっ……あの、その……大丈夫です」
一気に白い肌を赤らめて恥ずかしそうに伊織の胸元に顔を隠す。
「悠真にもわかりましたか? 悠真の綺麗な肌にずっと触れていたかったんですよ」
「……あの、」
悠真がまだ顔を赤く染めたまま、伊織を見上げる。
キスをねだるようなその顔も可愛くて、キスを奪いたくなってしまう。
「悠真、どうしました?」
「あの、伊織さん……私の身体が……好きですか?」
「もちろんですよ。この吸い付いてくる肌もハリがあってしなやかな身体も何もかも好きです。ですが、一番好きなのは悠真自身です。もう悠真は私だけのものです。誰にも触れさせません」
その言葉に悠真の顔がふっと綻ぶ。
「伊織さん……私も、伊織さんが大好きです。ずっと独占してください」
「ああ、もうっ。あなたという人はどこまで私を翻弄させるのですか」
「えっ? 私、そんな……」
「愛してますよ。悠真、一生私だけのものです。そして、私もあなただけのものですよ」
悠真に対する独占欲が一気に湧き上がって、腕の中にいる悠真を抱きしめる。
「伊織さんは私だけのものですね」
悠真はまだほんのりと赤い顔で嬉しそうに笑顔を見せてくれた。
「あの、私……お風呂に?」
「いえ、お風呂は悠真と一緒に入る楽しみに取っておこうと、シャワーだけで身体を清めておきました。お風呂に入りますか?」
「ここに泊まると朝、入るのが好きなんです」
「悠真はここに泊まったことが?」
「ええ。社長のところで昨夜のようにお酒を飲ませてもらった後は、家に帰るのは危ないからとここに泊めさせてくれるんです」
なるほど。確かに酔っ払った悠真を一人で帰らせるのは危ない。
ただでさえ狙われやすいというのに、酒が入ると無防備さに拍車がかかるからな。
倉橋さんに守ってもらっていたと思えば嬉しいことなのだが、離れとはいえ一緒に泊まっていたのかと思うと少し嫉妬してしまう自分がいる。我ながらここまで狭量になってしまうとは思っても見なかった。
「伊織さん、どうしました?」
「いえ、なんでもありません。お風呂に行きましょうか」
「はい。――った!」
伊織の腕の中から起きあがろうとした悠真が痛そうに眉を顰めた。その理由はわかっている、伊織が昨日激しくしすぎたせいだ。
「悠真。無理しないでください。私が昨日、理性を飛ばしてしまったもので……悠真の身体が辛いのは私のせいですから」
「そんな……私は、この痛みですら嬉しいですよ。伊織さんが私のことをここまで愛してくださった証ですから」
にっこりと聖母のような微笑みを見せる悠真に、興奮してしまいそうになる。だが、ここで悠真を押し倒しては鬼畜と罵られても仕方がない。必死に自分に言い聞かせながら、悠真を抱きかかえた。
「わっ――」
驚いて悠真が伊織の首にしがみつく。
「今日は私がしっかりとお世話しますから安心してください」
悠真は恥ずかしそうにしながらも頷いてくれた。そのまま風呂場に入って思い出した。
「そういえば、五右衛門風呂でしたね。湯を温めなければ……」
しかし、浴槽をみると、どう見ても暖かそうな湯が湧いている。これは一体どういうことだ?
「気づかれましたか? ここのお風呂、見た目は五右衛門風呂の体ですけど、自動でお風呂が沸いた状態を保ってくれるんです」
「それじゃあ、倉橋さんは……」
「最初から私たちをここに泊めるおつもりだったんでしょうね」
悠真のその笑顔が初めから気づいていたとすぐにわかる。
「伊織さんと泊まりたかったので倉橋の言葉に乗りましたが、今度は私の家に泊まってくださいね」
にっこりと微笑む悠真への愛おしさが募る。
「もちろんです!!」
そう言いながら、しっかりと抱きしめた。
「伊織さん、湯船に入ってみましょうか」
悠真を抱いたまま湯をさっとかけ、そのまま湯船に入った。
湯の中に完全に身体を浸かると、なにやらピリッとした痛みを感じた。
「伊織さん? どうかしましたか?」
伊織が一瞬眉を顰めたことに気付いたのだろう。悠真が心配そうに見つめてくる。隠さないほうがいいだろうと正直に伝えた。
「何かちょっと背中がピリッとしただけです。特に問題は……」
「でも……心配です。背中見せてください」
悠真は肩越しに顔を乗り出し、伊織の背に目を向けた。
「あっ……」
「何かありましたか?」
「あの、腫れてます。痛そうな線が何本も入って……うっすら血が滲んでいるところも……」
線? 何本も?
その瞬間、伊織の頭の中にある記憶が甦った。
――ああ、いお、りさん……っ、いお、りさん……す、きぃ……
悠真が可愛い声をあげた瞬間、背中にピリッと痛みが走ったことを。
「それなら、なんの問題もありません」
「えっ? でも……」
「それは悠真が感じてくれた証ですから。私の勲章のようなものですよ」
「感じた……証? 勲章?」
悠真は全くわかっていなかったようだが、少ししてその考えに行き着いたようで一気に表情を曇らせた。
「あの、私……私が、伊織さんに……傷を?」
悠真は半分泣きそうな顔になっている。
「悠真、顔をよく見せてください。私は、悠真が感じてくれて嬉しいんですよ。あなたのつけてくれた傷をみるたびにあの時のことを思い出せますから……」
「伊織さん……愛してます」
涙を潤ませ抱きついてくれた悠真を見て、一瞬にして伊織は理性を飛ばした。
その後、悠真の甘い声を風呂中に響かせることになったのは言うまでもない。
これ以上の幸せを望むとバチが当たってしまう。
そう思ってしまうほど、伊織の人生において最高の時間だった。
甘く激しい時間を過ごして眠ってしまった愛しい悠真を腕の中に閉じ込めながら深い眠りについた。
その夜、夢に久しぶりにあの子が現れた。ここ数年あの子の姿を見ることはほとんどなかった。
久々に現れた彼は後ろ向きで、顔を見せてくれない。だが後ろ姿で察しがついた。
――君はもしかして……
いつもは黙って姿を見守るだけだったが、初めて夢の中であの子に問いかけた。
その瞬間、振り向いた彼はついさっき身体の奥深くまで繋がって愛を感じ合った人。
生まれた時から、ずっと伊織の心の中にいて成長と共に感情を乱してきたのはやはり悠真だったのだ。
悠真と初めて目があった時、似ていると思ったのは間違いではなかった。
伊織の心を揺さぶるのは、生まれてからこれまで悠真ただ一人だったということだ。
――やっと、会えた……
そう告げた瞬間、夢の中の悠真は嬉しそうに笑った。
腕の中にいた悠真が身動ぎ、伊織も一緒に目を覚ました。
あの夢は伊織しか見ていないだろう。だが、この上ない幸せな気持ちに包まれていた。
今、伊織たちは裸で抱き合っている。これを知った時の悠真の反応が知りたくてそのまま寝たフリを続ける。
「っ、えっ? なんで、裸??」
悠真の戸惑う声が聞こえた。そんな焦る声すら愛おしい。
「う、うーん」
わざと声を上げてみると、悠真はハッとして口を押さえた。きっと伊織を起こさないように気遣ったのだろう。
悠真の視線を感じるが、ここでバレるわけにはいかない。そのまま静かに寝たフリを続ける。
「はぁーーっ」
大きなため息が聞こえる。
もしかしてこうなったことを後悔しているのではないか?
そんな恐ろしい思いが一瞬よぎったが、昨夜の悠真の様子を思い出せばそんなことは絶対にないと言い切れる。
だとすればさっきのため息はなんだ?
緊張しながら悠真の視線を浴び続けていると、
「こんなに素敵な人が私の恋人だなんて……夢じゃないのかな」
と恍惚とした表情を向け、悠真の細くて長い指が伊織の頬を撫でる。
そんな可愛いことをされて我慢などできるわけがない。
「もう、悠真は朝からなんと可愛いことを言ってくれるんですか」
「い、伊織さん……起きてたんですか?」
「悠真が可愛くて起きてしまったんですよ」
「可愛いだなんて、そんな……」
「こらこら、私の愛しい恋人を貶すのは悠真でも許しませんよ」
「ひゃ――っん」
お仕置きとばかりに悠真の可愛らしい小さな剥き出しの尻を優しく撫でる。昨夜を彷彿とさせるような甘い声をあげる。
「悠真の肌は本当に吸い付くように滑らかで気持ちがいい」
「そんな……あ、あの……なんで私たち裸なんですか?」
「理由を聞きたいですか?」
意味深な笑みを見せると察しのいい彼はすぐに理解したようだ。
「えっ……あの、その……大丈夫です」
一気に白い肌を赤らめて恥ずかしそうに伊織の胸元に顔を隠す。
「悠真にもわかりましたか? 悠真の綺麗な肌にずっと触れていたかったんですよ」
「……あの、」
悠真がまだ顔を赤く染めたまま、伊織を見上げる。
キスをねだるようなその顔も可愛くて、キスを奪いたくなってしまう。
「悠真、どうしました?」
「あの、伊織さん……私の身体が……好きですか?」
「もちろんですよ。この吸い付いてくる肌もハリがあってしなやかな身体も何もかも好きです。ですが、一番好きなのは悠真自身です。もう悠真は私だけのものです。誰にも触れさせません」
その言葉に悠真の顔がふっと綻ぶ。
「伊織さん……私も、伊織さんが大好きです。ずっと独占してください」
「ああ、もうっ。あなたという人はどこまで私を翻弄させるのですか」
「えっ? 私、そんな……」
「愛してますよ。悠真、一生私だけのものです。そして、私もあなただけのものですよ」
悠真に対する独占欲が一気に湧き上がって、腕の中にいる悠真を抱きしめる。
「伊織さんは私だけのものですね」
悠真はまだほんのりと赤い顔で嬉しそうに笑顔を見せてくれた。
「あの、私……お風呂に?」
「いえ、お風呂は悠真と一緒に入る楽しみに取っておこうと、シャワーだけで身体を清めておきました。お風呂に入りますか?」
「ここに泊まると朝、入るのが好きなんです」
「悠真はここに泊まったことが?」
「ええ。社長のところで昨夜のようにお酒を飲ませてもらった後は、家に帰るのは危ないからとここに泊めさせてくれるんです」
なるほど。確かに酔っ払った悠真を一人で帰らせるのは危ない。
ただでさえ狙われやすいというのに、酒が入ると無防備さに拍車がかかるからな。
倉橋さんに守ってもらっていたと思えば嬉しいことなのだが、離れとはいえ一緒に泊まっていたのかと思うと少し嫉妬してしまう自分がいる。我ながらここまで狭量になってしまうとは思っても見なかった。
「伊織さん、どうしました?」
「いえ、なんでもありません。お風呂に行きましょうか」
「はい。――った!」
伊織の腕の中から起きあがろうとした悠真が痛そうに眉を顰めた。その理由はわかっている、伊織が昨日激しくしすぎたせいだ。
「悠真。無理しないでください。私が昨日、理性を飛ばしてしまったもので……悠真の身体が辛いのは私のせいですから」
「そんな……私は、この痛みですら嬉しいですよ。伊織さんが私のことをここまで愛してくださった証ですから」
にっこりと聖母のような微笑みを見せる悠真に、興奮してしまいそうになる。だが、ここで悠真を押し倒しては鬼畜と罵られても仕方がない。必死に自分に言い聞かせながら、悠真を抱きかかえた。
「わっ――」
驚いて悠真が伊織の首にしがみつく。
「今日は私がしっかりとお世話しますから安心してください」
悠真は恥ずかしそうにしながらも頷いてくれた。そのまま風呂場に入って思い出した。
「そういえば、五右衛門風呂でしたね。湯を温めなければ……」
しかし、浴槽をみると、どう見ても暖かそうな湯が湧いている。これは一体どういうことだ?
「気づかれましたか? ここのお風呂、見た目は五右衛門風呂の体ですけど、自動でお風呂が沸いた状態を保ってくれるんです」
「それじゃあ、倉橋さんは……」
「最初から私たちをここに泊めるおつもりだったんでしょうね」
悠真のその笑顔が初めから気づいていたとすぐにわかる。
「伊織さんと泊まりたかったので倉橋の言葉に乗りましたが、今度は私の家に泊まってくださいね」
にっこりと微笑む悠真への愛おしさが募る。
「もちろんです!!」
そう言いながら、しっかりと抱きしめた。
「伊織さん、湯船に入ってみましょうか」
悠真を抱いたまま湯をさっとかけ、そのまま湯船に入った。
湯の中に完全に身体を浸かると、なにやらピリッとした痛みを感じた。
「伊織さん? どうかしましたか?」
伊織が一瞬眉を顰めたことに気付いたのだろう。悠真が心配そうに見つめてくる。隠さないほうがいいだろうと正直に伝えた。
「何かちょっと背中がピリッとしただけです。特に問題は……」
「でも……心配です。背中見せてください」
悠真は肩越しに顔を乗り出し、伊織の背に目を向けた。
「あっ……」
「何かありましたか?」
「あの、腫れてます。痛そうな線が何本も入って……うっすら血が滲んでいるところも……」
線? 何本も?
その瞬間、伊織の頭の中にある記憶が甦った。
――ああ、いお、りさん……っ、いお、りさん……す、きぃ……
悠真が可愛い声をあげた瞬間、背中にピリッと痛みが走ったことを。
「それなら、なんの問題もありません」
「えっ? でも……」
「それは悠真が感じてくれた証ですから。私の勲章のようなものですよ」
「感じた……証? 勲章?」
悠真は全くわかっていなかったようだが、少ししてその考えに行き着いたようで一気に表情を曇らせた。
「あの、私……私が、伊織さんに……傷を?」
悠真は半分泣きそうな顔になっている。
「悠真、顔をよく見せてください。私は、悠真が感じてくれて嬉しいんですよ。あなたのつけてくれた傷をみるたびにあの時のことを思い出せますから……」
「伊織さん……愛してます」
涙を潤ませ抱きついてくれた悠真を見て、一瞬にして伊織は理性を飛ばした。
その後、悠真の甘い声を風呂中に響かせることになったのは言うまでもない。

