中学1年の春。
クラス替えの紙を見た日ことは、
正直あんまり覚えてない。
誰と同じだったとか、だれが可愛いとか、そういうの。
でも1つだけ、はっきり覚えてることがある。
それは、理人と同じクラスになったこと。
「よろしくな」
その日はサッカーの卒団式以来の再会だった。
あれからまだ1カ月もたっていないのに、
学ランを着ているこいつは、
なんだか変に大人びて見えた。
同じ中1のくせに、生意気だなと思ったのを覚えてる。
特に小学校から仲良かったやつもいなかったから、
俺は自然と理人とつるむようになった。
見た目は明らかに陽キャなのに、
理人は意外にも静かだった。
サッカー以外にも運動はできるし、
勉強もそこそこだ。っていうか、油断すると
抜かれそうで俺は必死に勉強した。
俺は自分がどこまで行ける人間なのかを、
早くから悟っていた。
サッカーはうまい方だった。
小学生からトレセンに選ばれていたし、
チームでもエースだった。
でも……上には上がいる――。
俺は所詮、地区トレセン止まりだ。
ほんとに才能のあるやつ、
もっと努力をしている奴は県トレセンに選ばれる。
俺は、そこまでではない。
悔しい気持ちもあるけど、
サッカーだけに全力を注げるほど
サッカーに情熱もない。
勉強だってそうだ。
そこそこ賢い自覚はある。
でも、いつもそこそこで終わる。
クラスの中ではお山の大将になれても、
模試を受ければ俺より賢い奴なんてごまんといる。
けれど、この顔に勝てる奴はそうそういない。
だから、愛嬌振りまいて、人気者になって――。
努力でも足りないところはそうやって補ってきた。
なのに……
中学に入って2ヶ月経った頃だった。
部活で初めて練習試合に行った日。
「お前、ほんとはめっちゃ性格悪いだろ?」
試合の合間に、急に理人が言い放った言葉がこれだ。
「なんか外面よくニコニコしってけど、
お前基本、プレーも自己中だもんな。
さっきも、先輩の事『使えねえな』って
思ってただろ?
声と態度に出さなくても雰囲気でバレてんだよ」
図星だった。
「俺はサッカーやり始めてからずっとボランチだからな。
いろんなFW見てきたけど、
お前ほどねちっこいやついねーよ。それで悟ったね。
お前は王子の皮をかぶったヒールだって」
「うっせえ。ダセー例え方してんじゃねーよ。
勝手に分析すんな気持ちわりー」
知られてしまったものは仕方ない。
俺はこいつの前でだけ猫被るのをやめた。
「おーおー、本性表した。こわっ」
「お前は媚び売る価値もねーからな」
「それはどうかな?次の試合、俺もボランチで出る。
お前、絶対点決めれんぜ?
この試合でレギュラーかかってんだろ。俺もお前も。
2年蹴散らして、レギュラーもぎ取ってやろうぜ」
(……こいつ、まじいい性格してるわ)


