「ティーナと出会ってから、10年も経ったんだなぁ……」
あの日、豪華客船《アルディニック号》に乗った俺は画家になるという夢を叶えるべく、当時、かなり名の知れていた画家の弟子になる為に、家を出た訳である。
そんな中、1人で船に乗った俺は本当に家を出てきてしまって良かったのかという迷いと共に自分の視界に入った物を紙に残すかのようにひたすらに船の中でデッサンを繰り返していた。
船が出航してから、数時間が経った頃、中央甲板で同い年くらいの女の人と出会う。偶然にもティーナの足元に風で飛ばされた俺のデッサンした紙が落ちたのである。ティーナはそれを拾ってくれた。
今、思えば自分の描いた絵を始めて見て褒めてくれたのが、ティーナではなかったら、ティーナと俺。そして、船の中で出会った俺と同い年であったカイルと出会いを果たすこともなかったかもしれない。
「セレクっ……! ねえ、聞いているの?」
出会った当初と何一つ変わらない声色でセレクの名を呼ぶ白髪の少女。
「ティーナ!? すまない。少しぼっーとしてた」
「もう、大丈夫? 最近、仕事がかなり立て込んでいるんでしょう?」
どうやらティーナは今日が【結婚記念日】だということを忘れているのか、朝から全くその事について触れてこない。
そのせいか時間が経つにつれて、徐々に不安になり良くない考えになってきてしまっている気がしたセレクは右隣に座るティーナに思いきって聞いてみることにする。
「なあ、ティーナ。今日、何の日かわかるか?」
セレクの唐突な質問にティーナは思わずえ?としか返事を返すことが出来ず首を傾げる。
「今日は俺とティーナにとって、大切な日だったりするんだけどなぁ……」
セレクはそう言い少し悲しげな顔をする。ティーナはそんなセレクを見て「んっー……」と唸り始めた。どうやら一生懸命、思い出そうとしてくれているらしい。
「あっ……!! わかったわ」
「本当か?」
セレクはほっと胸を撫で下ろし、苦笑する。
「ええ、今日は結婚記念日ね。何でこんなに大事な事を忘れていたのかしら? ごめんね。セレク」
「大丈夫。ちゃんと思い出してくれたからね」
そう言ったセレクはティーナは顔を合わせ笑い合う。あの日、船の中で出会い話したあの夜の事はティーナとセレク胸の中に消えることなく残り続けている。
そう、きっとこの先もずっと忘れることのない大切な記憶である。
セレクとティーナは開いていたリビングの窓から見える夏の空を見上げて互いに同じことを思う。
いつか、カイルに私達が歩んで来た人生を土産話しとしてカイルに聞かせてあげたいと。
あの日、豪華客船《アルディニック号》に乗った俺は画家になるという夢を叶えるべく、当時、かなり名の知れていた画家の弟子になる為に、家を出た訳である。
そんな中、1人で船に乗った俺は本当に家を出てきてしまって良かったのかという迷いと共に自分の視界に入った物を紙に残すかのようにひたすらに船の中でデッサンを繰り返していた。
船が出航してから、数時間が経った頃、中央甲板で同い年くらいの女の人と出会う。偶然にもティーナの足元に風で飛ばされた俺のデッサンした紙が落ちたのである。ティーナはそれを拾ってくれた。
今、思えば自分の描いた絵を始めて見て褒めてくれたのが、ティーナではなかったら、ティーナと俺。そして、船の中で出会った俺と同い年であったカイルと出会いを果たすこともなかったかもしれない。
「セレクっ……! ねえ、聞いているの?」
出会った当初と何一つ変わらない声色でセレクの名を呼ぶ白髪の少女。
「ティーナ!? すまない。少しぼっーとしてた」
「もう、大丈夫? 最近、仕事がかなり立て込んでいるんでしょう?」
どうやらティーナは今日が【結婚記念日】だということを忘れているのか、朝から全くその事について触れてこない。
そのせいか時間が経つにつれて、徐々に不安になり良くない考えになってきてしまっている気がしたセレクは右隣に座るティーナに思いきって聞いてみることにする。
「なあ、ティーナ。今日、何の日かわかるか?」
セレクの唐突な質問にティーナは思わずえ?としか返事を返すことが出来ず首を傾げる。
「今日は俺とティーナにとって、大切な日だったりするんだけどなぁ……」
セレクはそう言い少し悲しげな顔をする。ティーナはそんなセレクを見て「んっー……」と唸り始めた。どうやら一生懸命、思い出そうとしてくれているらしい。
「あっ……!! わかったわ」
「本当か?」
セレクはほっと胸を撫で下ろし、苦笑する。
「ええ、今日は結婚記念日ね。何でこんなに大事な事を忘れていたのかしら? ごめんね。セレク」
「大丈夫。ちゃんと思い出してくれたからね」
そう言ったセレクはティーナは顔を合わせ笑い合う。あの日、船の中で出会い話したあの夜の事はティーナとセレク胸の中に消えることなく残り続けている。
そう、きっとこの先もずっと忘れることのない大切な記憶である。
セレクとティーナは開いていたリビングの窓から見える夏の空を見上げて互いに同じことを思う。
いつか、カイルに私達が歩んで来た人生を土産話しとしてカイルに聞かせてあげたいと。


