白と黒の王女

 
 ヴィリアーゼ王国。
 豊かな自然に恵まれ、経済、産業と共に安定している栄えた王国であった。

 そんな王国の現国王であるリゼルと第一王妃アリエーナとの間に生まれた2人の娘。

 一人は父親と母親と同じ雪のような白い髪を持ち合わせた赤子。
 もう一人は父親と母親のどちらとも似つかない赤子。

 国王であるリゼルと王妃である妃は、愛しい娘を大切に育てていくが、二人は決して交わることのない運命かのように、正反対に成長を遂げた。


◇◆◇

 朝の王都はいつもと同じく賑やかさに満ち溢れている。

「ねぇ、聞いたかい? エリティア王女が、次期国王に指名されたって話」

「そうなのか? それは初耳だ」


 次期国王に最近、指名されたばかりのヴィリアーゼ王国の第一王女エリティア。
 彼女は民達からの評価も高く、ここ数年でエリティアを支持する者は着々と増えてきていた。

「それにしても、妹のヴェリアーナ王女は表にあまり顔を出さないけど、病で伏せておられるとか」

「ヴェリアーナ王女は、お身体が弱いから、あと数年も生きられないと聞いたぞ」

 エリティアの妹である第二王女ヴェリアーナは、大きくなるにつれて、表に顔を出すことはなくなった。
 その為、民達からの印象はあまり良くはなく、影のような王女として認知されていた。

 しかし、噂通りの病で伏せている、ここ数年も生きられないといったことはなく。
 当の本人が表に顔を出すことを望んでいないからであるということを姉でもあり、次期国王として周りから期待されているエリティアは知っていた。

◇◆◇

「ヴェリアーナ王女、私達は姉妹じゃない。なんで、私と顔を合わせてくれないの……?」

 いつからか、ヴェリアーナはエリティアのことを避けるようになり、今では朝食や夕食、廊下でさえも顔を合わせることも、姿を見掛けることもなくなってしまった。

 エリティアは自分のことを嫌いであるから、避けられているのかと思っていたが、嫌われる原因が何であるのか、全く心当たりがなかった為、当の本人に直接、聞いてみることにしたのだ。

 けれど、エリティアが部屋のドア越しに声を掛けても、ヴィリアーナからの返答はない。
 エリティアは諦めてその場を去ろうとするが、部屋の中からヴェリアーナの声が聞こえた為、足を止めてドアを見つめる。

「エリティア王女、私は貴方の事が嫌いだから避けている訳ではないのです。ただ、私は周りを不幸にするから、だから、もう私のことは気にしないで下さい」

 冷たい声色がエリティアの耳に届く。
 何故、そんな突き放すような事を言うのか、この時のエリティアには理解が出来なかった。

「わかりました……」

 エリティアは静かに返事をし、そっとその場を離れた。
 ヴィリアーナはエリティアが立ち去った事を確認する為、そっと部屋のドアを開けて廊下を見る。

 エリティアが付けていたであろう香水の甘い香りが鼻につき、ヴィリアーナは少し悲しげな顔を浮かべた。

「私は、貴方とは違う生き方しか出来ないの。だって私は呪われているから」