「いいよ、一緒に遊ぼう……」
僕がそう答えると背後から幼い笑い声が聞こえて、後に嬉しそうな声で返してきた。
「それじゃ、僕が鬼になるからお兄さんは隠れる側ね?ここで十数えるから、僕が数え切る前に隠れてね」
「わ、わかった……じゃあ、隠れるね?」
僕はそのまま横に移動して、この家の隠れる場所を探して動こうとした途端、隠れん坊は声を掛けてきた。
その声に怖がって、僕はまた固まる。
「そのまま振り返らないで、僕を見っちゃダメだから」
クスクスと笑う幼い声が恐ろしくって、僕はその場から駆け出すように離れた。
なんてことだ……まさか隠れん坊とかくれんぼする羽目になるだなんて!
そもそも隠れん坊は僕が小説のために作った架空の妖怪だぞ!?
歴史上には存在しないのに、どうしているんだ!
頭が混乱する中、何処に隠れるか必死になって探す。
何処を探しても、僕が隠れられる場所は1つしかなかった。
子供の様に小さくない身体の大きな僕が隠れられる場所は押入れの中でしかなかった。
迷っている暇はなかった。
遠くで隠れん坊がもうすぐ十を切ろうとしていた為、僕は押入れの中へ流れ込む様に入った。
古びた家特有のかび臭さと木の匂いが鼻につく。
そんなに物持ちが少なかったから、この押入れには荷物という物はない。
何とか隠れられたから良かったけど……この後はどうしたらいい?
もし隠れん坊に見つかったら、自分はどうなってしまうのだろうか。
小説の内容では断った子供達が異界に連れてかれて、隠れん坊とかくれんぼを強制的にするのだが……みんな見つかってしまって最終的に子供達は隠れん坊の仲間になってしまうというもの。
小説の流れではそうだ。
でも内容は隠れん坊の遊びを断ったからであって、僕の場合は断っていない。
だったなら、この後はどうなる?もし見つかってしまったら、僕はどうなってしまうのだろうか。
その先にある見えない未来へ恐怖する。
自分は仲間入りするのか、それとも隠れん坊に消される……?
考える事の全てが嫌な想像ばかり浮かんでしまう。
助かる見込みが何処にもない……僕はここで死ぬのか?
そう思うと自然と声が零れ出ていた。
「やだ……死にたくない」
ぽつりと出た自分の本音を聞いて、目元から何かが零れでた。
嫌だ、死にたくない、こんな所で消えたくない!
……そうだ、この家から早く出よう。
まだ間に合うはず、生きてここから――。
「お兄さんここに居るの?」
襖前から隠れん坊の声が聞こえた。
隠れん坊は……もう目の前に居る。
ああ、終わった……もう――。
――逃げられない。
ゆっくりと襖が開けられ、夕日の光が入り込んでくる。
そこには浴衣を着た子供が嬉しそうにニヤリと笑うのが見えた。
僕は怖さのあまり目を瞑り、その後に備えて身を構えた。
そして、幼い声がゲームの最終宣言を告げる。
「お兄さん、みーつけ――」
「おい小僧、いい加減にせんか」
「いってえ!」
幼い声に被さるように老いた落ち着いたような声が聞こえると、軽快な音が聞こた。
一体何が起きたのかと疑問に思っていると、途中で開かれていた襖が一気に開かれ、眩しい夕日の光が押入れの中へ入り込み自分を包み込んだ。
眩しくて目を瞑ってしまったが、よく目を凝らして見てみると……そこには眼鏡を掛けた眠たそうな目をした浴衣の老人が僕を見下ろしていた。
僕がそう答えると背後から幼い笑い声が聞こえて、後に嬉しそうな声で返してきた。
「それじゃ、僕が鬼になるからお兄さんは隠れる側ね?ここで十数えるから、僕が数え切る前に隠れてね」
「わ、わかった……じゃあ、隠れるね?」
僕はそのまま横に移動して、この家の隠れる場所を探して動こうとした途端、隠れん坊は声を掛けてきた。
その声に怖がって、僕はまた固まる。
「そのまま振り返らないで、僕を見っちゃダメだから」
クスクスと笑う幼い声が恐ろしくって、僕はその場から駆け出すように離れた。
なんてことだ……まさか隠れん坊とかくれんぼする羽目になるだなんて!
そもそも隠れん坊は僕が小説のために作った架空の妖怪だぞ!?
歴史上には存在しないのに、どうしているんだ!
頭が混乱する中、何処に隠れるか必死になって探す。
何処を探しても、僕が隠れられる場所は1つしかなかった。
子供の様に小さくない身体の大きな僕が隠れられる場所は押入れの中でしかなかった。
迷っている暇はなかった。
遠くで隠れん坊がもうすぐ十を切ろうとしていた為、僕は押入れの中へ流れ込む様に入った。
古びた家特有のかび臭さと木の匂いが鼻につく。
そんなに物持ちが少なかったから、この押入れには荷物という物はない。
何とか隠れられたから良かったけど……この後はどうしたらいい?
もし隠れん坊に見つかったら、自分はどうなってしまうのだろうか。
小説の内容では断った子供達が異界に連れてかれて、隠れん坊とかくれんぼを強制的にするのだが……みんな見つかってしまって最終的に子供達は隠れん坊の仲間になってしまうというもの。
小説の流れではそうだ。
でも内容は隠れん坊の遊びを断ったからであって、僕の場合は断っていない。
だったなら、この後はどうなる?もし見つかってしまったら、僕はどうなってしまうのだろうか。
その先にある見えない未来へ恐怖する。
自分は仲間入りするのか、それとも隠れん坊に消される……?
考える事の全てが嫌な想像ばかり浮かんでしまう。
助かる見込みが何処にもない……僕はここで死ぬのか?
そう思うと自然と声が零れ出ていた。
「やだ……死にたくない」
ぽつりと出た自分の本音を聞いて、目元から何かが零れでた。
嫌だ、死にたくない、こんな所で消えたくない!
……そうだ、この家から早く出よう。
まだ間に合うはず、生きてここから――。
「お兄さんここに居るの?」
襖前から隠れん坊の声が聞こえた。
隠れん坊は……もう目の前に居る。
ああ、終わった……もう――。
――逃げられない。
ゆっくりと襖が開けられ、夕日の光が入り込んでくる。
そこには浴衣を着た子供が嬉しそうにニヤリと笑うのが見えた。
僕は怖さのあまり目を瞑り、その後に備えて身を構えた。
そして、幼い声がゲームの最終宣言を告げる。
「お兄さん、みーつけ――」
「おい小僧、いい加減にせんか」
「いってえ!」
幼い声に被さるように老いた落ち着いたような声が聞こえると、軽快な音が聞こた。
一体何が起きたのかと疑問に思っていると、途中で開かれていた襖が一気に開かれ、眩しい夕日の光が押入れの中へ入り込み自分を包み込んだ。
眩しくて目を瞑ってしまったが、よく目を凝らして見てみると……そこには眼鏡を掛けた眠たそうな目をした浴衣の老人が僕を見下ろしていた。
